私たちが選択すべき老後の道は? ~シンクタンク岡事務所長 岡久氏インタビュー

シンクタンク岡事務所長 岡久氏法律経営会計グループ・シンクタンク岡事務所長 岡久氏

法律経営会計グループ・シンクタンク岡事務所長の岡久氏(代表取締役)の近著『2000万円もってないオレたちはどう生きるか~60歳からのリアル』(自由国民社)が話題になっている。

いくら年金をもらえるかが一番の関心事であるシニア世代としては思わず手に取りたくなる書名で、年金の繰上げと繰下げ、持ち家と賃貸についても分かりやすく説明している良書との評価が高い。

老後においては、「入ってくる収入の範囲内で生活し、そしてなるべくなら借金をしないこと」の2点が重要だというのが岡氏の主張だ。

「ボチボチゆるく生きていくことが幸せにつながる」という老後の“ライフシフト”について岡久所長にお話を伺った。

士業事務所のネットワークで経営・融資・助成金などの悩みを解決

――お金のことで相談したいと思っても、どの専門家に相談すればよいか悩みます。理事を務めている士業事務所ネットワークはワンストップで対応してもらえると聞きました。

2003年に立ち上げた士業事務所ネットワークは、特定非営利活動法人税法労務協会を母体としており、起業後のご相談はもちろん、業種業界の垣根を超えた経営の身近な相談相手として日々活動しています。

最近では、ビジネスマッチングやM&A、販路開拓などのサポートもしています。

税法労務協会は、税理士、社会保険労務士、弁護士、司法書士、行政書士、弁理士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、中小企業診断士の法律経営会計の専門家で構成されています。

高齢者のご相談の多くは複合的で、往々にして士業の垣根が問題になります。

たとえば遺言については弁護士、不動産への対応は司法書士、不動産の評価については不動産鑑定士が対応することになってしまうことになるわけです。

しかし、我々ではチームをつくっていますので、複合的な悩みにワンストップで対処できます。今、50名の士業が参加しています。

――具体的には、どんな相談がありますか。

会社の再生などもありますが、経営者自身の高齢化のために事業承継を行いたいという意向や、M&Aで会社を譲渡したいという意向の相談もあります。後継者が不在だったり、不採算部門を切り離して採算部門だけを残したいという相談も多いです。

そういった場合には、企業価値の査定や法律について調査する「デューデリジェンス」を行うこともあります。

専門家に相談することによって経営がV字回復したり、会社の売却に成功してハッピーリタイアメントできたりという成果が出ています。

最近は、日本政策金融公庫と連携して創業融資などの相談にも乗っています。フリーランスの方が法人成りをしたいという起業相談も増えています。

フリーランスや個人事業主のネットワークによる法人なども多いのですが、その場合の雇用形態(業務委託か雇用契約か)についての相談も多く寄せられます。

シンクタンク岡事務所では融資・助成金などの相談も受け付けており、起業・創業に返済不要の助成金があることをアドバイスしています。受給できる助成金をすぐに診断できます。

定年後のシニアが選択すべき道は?

――今、60歳定年後のシニアには、再雇用、転職、起業など様々な選択肢があります。どの道がお勧めですか。

一概には言うことはできません。たとえば、金銭面を重視するなら、なるべくなら再雇用を選択するのが基本になります。

しかし、金銭面や生活よりも、やりがいを高めていきたいという考えなら、起業すべきかもしれません。やりたいことがあり、高い熱量を持続できるのなら、起業という選択肢は捨てるべきではないでしょう。

――再雇用は65歳まで延長されましたが、さらに延長されることもありますね。

最近は人材不足もあり、会社から「残ってくれ」と頼まれて雇用が延長されるケースも増えてきました。そのように企業から求められたシニアは、凝り固まった考え方を改め、より柔軟性をもつことが必要です。

私は、次のような「定年シニアの7つの心得」を提示しています。

1.頼まれごとはどんなことでも気持ちよく引き受ける
2.勤務中でもプライベートでもうわさ話や無駄話をしない
3.過去の話(特に自慢話)は聞かれない限りはしない
4.アドバイスを求められたら快く簡潔に話す
5.身なりは清潔感を保つ
6.進取の気持ちを忘れない
7.自分の仕事は自分で作り出す(仕事は与えられるものではない)

また、再就職でも再雇用でも、企業側が定年シニアに求めていることは“3Y”です。

給与などの必要経費が安い(1Y)、なるべく休まない(2Y)、そして辞めないこと(3Y)。この3Yを押さえておくことで、自身の役割を認識できるようになるでしょう。

――企業にとっては、高齢者を雇用すれば有能な方を安く使えるメリットがあり、国からも給付金が出ます。

60歳の定年後も働き続ける65歳未満の賃金が、それまでの75%未満に低下した場合、高年齢雇用継続基本給付金が支給されます。

このことは企業側もよく理解していますから、給料は下げるのが一般的になっています。ある事業所では、会社と本人にとってベストな働き方として、週30時間の勤務時間にしています。

また、会社が個人に業務委託する個人事業主のような関わり方に契約を切替え、会社が個人の起業を支援する形をとっている会社もあります。このような働き方を希望するなら年金も満額出ますので、働く人にとっても悪くありません。

ボチボチゆるく生きる人生にシフトすること

――老後の生活に漠然とした不安をもっている人が多いと思いますが。

結論から言うと、いくらあれば生活できるのかという考え方に立って、生活自体をダウンサイジングするべきです。

お金がないからといって貯金を使っていくと不安ばかりが増します。

まず、年金ネットで検索するか、年金事務所に行って将来いくらの年金をいくらもらえるかを問い合わせることから始めましょう。

その上で、年金支給の繰り上げや繰り下げを検討し、何歳が損益分岐点になるかということも把握した上で、いつからもらうかを考えるのがベストです。

次に、現状の求人市場を把握し、老後の仕事を確保することです。

このように、老後の基本は、生活に必要な支出額と、社会保障や仕事などによる収入額を把握することです。

支出の方が多いために預貯金を取り崩していく生活を続けていたら不安が増します。収入の範囲内で生活することを徹底し、借金をしないことで不安が取り除かれます。

最期はピンピンコロリ(PPK)で、誰にも迷惑をかけずに逝くのがベストでしょうが、それは予測不可能です。日々の生活の中でおびえず、クヨクヨせず、今日を一生懸命生きていけば、幸せ度は高まります。

タレントの明石家さんまさんの座右の銘は、「生きているだけで丸儲け」だそうですが、これは鎌倉の建長寺の初代住職となった蘭渓道隆の言葉で、禅の精神と言えます。

――2,000万円という老後資金を用意できる人は少数だと言われますが。

実際、毎月5万円不足するという総務省の家計調査(2017年)は確かなことだと思います。そこで避けるべきことは、悲観的になることです。5万円の赤字をカバーできるような、緩めの仕事を探すことが大事でしょう。

生活費が赤字になるのはストレスにつながりますから、老後もパートを続けることをお勧めします。それまでの仕事中心の人生からチェンジして、ボチボチゆるく生きるライフにシフトしていくことになります。

――お金だけの問題ではなく、生き方そのものに通じることですね。

『2000万円もってないオレたちはどう生きるか 60歳からのリアル』という書名を見て、厳しい内容だと思われるかもしれませんが、私の真意は、ボチボチ緩く生きていくことを勧めることにあります。

緩く生きることは、幸せにつながります。お金がないことには厳しい側面もありますが、老後は適度に稼ぎ、緩く生きるライフシフトを選択するのも悪くない生き方です。日本ライフシフト研究会ではスローライフの人生を楽しむことも推奨しています。

ライフシフトには、働くことと学ぶことが混在しています。自分のやりたいことをやっていくということが、組織と個人のかかわり方になっていくでしょう。

社会保険労務士として、いろいろな契約形態が入り込む中でコンサルを実施してきた私としても、今後の日本にやってくるライフシフトの波を実感しています。

事務所名 シンクタンク岡事務所/ナインヒルパートナーズ㈱
所在地 東京都文京区関口1-13-6-2F
代表者 代表取締役 岡 久
電話 シンクタンク岡事務所:03-5227-2777
ナイン・ヒル・パートナーズ㈱:03-5227-2888
ホームページ http://www.9hills.jp/

取材日:2019年9月3日

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