やちむんの里【沖縄・読谷村】伝統工芸体験してきました
“やちむん”とは、沖縄の方言で“焼き物”をさす言葉。
ひとつひとつ手でつくられる素朴で温かみのある陶器は、鮮やかな色使いや絵付けなど味わいたっぷり。
一口に「やちむん」と言っても、実は様々な形や文様だけでなく、その地域や窯元、作家さんによる特色があり、バラエティ豊かなのが特徴。
伝統的なものからモダンで可愛い品まで、工房がそれぞれの個性を打ち出した「やちむん」を見て楽しめる、読谷村(よみたんそん)の“やちむんの里”をご紹介します。
やちむんの里ショップやギャラリー紹介はもちろん、やちむんの里の地図、アクセス方法や、やちむんの絵付け体験にもチャレンジしてきたのでその時の様子なども公開しますので是非参考にしてくださいね。
やちむんの里とは
やちむんの里の歴史
かつて、琉球王国では沖縄各地にあったやちむんの窯を那覇の首里城下に集めていました。ここで誕生したのが“壺屋(つぼや)焼き”です。現在でも、那覇市壺屋は焼き物の町として有名です。(国際通りの近くに“壺屋やちむん通り”があります)
しかし、戦後の復興時に住宅が多く立ち並ぶようになった那覇市内では、街中で窯を炊くことが難しくなりました。
ちょうどその当時、読谷村(よみたんそん)では、伝統的な文化遺産であるやちむんの継承・発展を目指す構想がすすめられていました。もともと、読谷村は喜名(きな)焼と呼ばれる古窯があり、焼き物に必要な種類の土に恵まれている地域だったからです。
1972年に、金城次郎氏(日本を代表する陶芸家で、1985年には沖縄県初の人間国宝に認定されています)が読谷に招かれて工房を移したのに引き続き、1980年には、4つの窯元による共同の登り窯が建設されました。
これが、“やちむんの里”のやや奥まった場所に位置する、“読谷山窯(よみたんざがま)”です。今では”やちむんの里”と言えばこちらの登り窯の写真が出てくるくらいの観光スポットになっています。
こうして、“やちむんの里”をはじめとして、読谷村内に多くの陶工たちが集まるようになりました。この読谷山窯のほか、やちむんの里には4つの窯、19の工房がありますが、現在ではやちむんの里だけでなく、読谷村各地に50以上の窯元が集う「やちむんの村」としても知られるようになっています。
やちむんの里の地図
やちむんの里は、大きく分けると3つのエリアに別れます。
(1)読谷壺屋焼―金城次郎窯で焼かれる壺屋焼きのやちむんを取り扱うエリア。やちむんの里一番手前にあり、人間国宝・金城次郎さんの系統を受け継ぐ工房が立ち並びます。
(2)読谷山焼―読谷山共同窯の周りに工房とギャラリー、また工房の作品を一堂に集めた“読谷山焼共同売店”があります。
(3)読谷山北窯―北窯を使う4名の親方の作品を集めた“北窯売店”があります。普段は工房は立ち入り禁止です。
そのほか、個人で窯を持つ工房もあります。
同じ窯を使用していても、それぞれの作家さんによって個性豊かな器があり、できれば全部見て回りたいところです。“読谷山焼共同売店”と“北窯売店”はそれぞれの窯を使う作家さんの作品が集められているので、まずはチェックしておきたいところ。
駐車場は大きく3箇所。
ほか、ギャラリー前にも駐車スペースがある場合があります。
一番手前の広い駐車場に停めても歩いて一番奥まで行けます。往復して30分ほどでしょうか。写真は一番手前の駐車場にあるトイレ。なんとこちらも赤瓦で屋根の上にはシーサーがお出迎えです。
もし、あらかじめお目当ての工房やショップが決まっていれば、その付近に停める方が良いかもしれません。車で奥まで行く場合、道は広くはないので歩行者の方に気を付けてくださいね。
やちむんの里へのアクセス
読谷村の奥まった場所にある“やちむんの里”。
世界遺産の一つである“座喜味城跡”(ざきみじょうあと)方面を目指していくと、そこから5分程度です。
■自動車でのアクセス
那覇空港から国道58号線を北上して約1時間
※那覇方面から向かう場合は、東側を通る高速道路(沖縄自動車道)を使うより、そのまま58号線を北上した方が早く到着できます。
■路線バスでのアクセス
那覇バスターミナル(ゆいレール旭橋駅から徒歩3分)から沖縄バス/琉球バスによる共同運航で2路線があります。
バスにて約1時間10分。「親志入口」で下車し、徒歩10分ほどで“やちむんの里”につきます。
やちむんの里ショップ・ギャラリー紹介
やちむんの里には、現在19の工房があります。
工房は基本的には立ち入り禁止ですが、ショップやギャラリーでそれぞれの工房の作品を見たり、購入したりすることができます。
ここでは、やちむんの里のショップ、ギャラリーをいくつかピックアップしてご紹介します。
ショップ・ギャラリーを巡っていると、素敵な器を写真に撮りたくなってしまいますが、場所によっては写真撮影禁止の場所があったりしますので、撮影前に確認してみてくださいね。
ギャラリーうつわ家
読谷壺屋焼窯元、島袋常秀さんのギャラリーです。「うつわ家」の名前の通り、普段使いで
きる器などの品ぞろえが充実。
伝統的な沖縄の文様を、現代風にアレンジした、オリジナルの可愛らしい作品が多く見られます。
個人的なおすすめはこちらの四角いプレート。この水玉のような意匠が可愛らしいです。
年間を通して人気のブルー系のほか、こちらの茶色は秋冬限定の色だそう。
髪留めや、箸置き、ストラップやボタンといったようなちょっとした小物も充実。
読谷村焼窯共同売店
1979年に開窯した読谷山焼(ゆんたんざやき)。やちむんの里といえば、読谷山焼の登り窯の写真がおなじみですが、こちらは読谷山焼きの登り窯。その手前にある読谷村焼窯共同売店では、山田真萬氏・大嶺實清氏・玉元輝政氏・金城明光氏の作品を購入することができます。
ずらっと並ぶやちむんたち。
個人的なおすすめはこちら。ペルシアンブルーのグラデーションが美しい器です。
つやのある色味が素敵なプレート。インテリアとして壁に飾ったりしても映えそうです。
どれもひとつずつ色の出方が異なるので、「自分だけの器」を探す楽しみも。
読谷村座喜味2653-1番地
営業時間 9:30~17:30
定休日 火曜日
北窯売店
やちむんの里の奥、北窯の手前にある共同売店。
北窯の松田米司氏・松田共司氏・宮城正享氏・與那原政守氏の4名のそれぞれの工房で作られた品々を購入することができます。
個人的なおすすめは、こちらの形と色合い、文様が異国情緒を醸し出しているプレートや、
素朴な風合いにペルシアンブルーの差し色が効いたうつわ。
また、レジ横の飾りつけは、日常にやちむんを取り入れるヒントがたくさん。ぜひ見習いたいアレンジです。
読谷村座喜味2653-1
営業時間 9:30~17:30
不定休
ギャラリー囍屋(きや)
奥の細い道をたどった先にあるギャラリー囍屋(きや)
読谷山焼の大嶺工房のギャラリーです。ひっそりと奥まっているでの看板が頼りです。
火鉢のある大きな空間がなんとも風情があります。
小物から大皿、芸術性を感じさせるオブジェまで、いろいろな種類のやちむんを見ることができます。
購入された方には、コーヒーと茶菓子のサービスも。もちろん素敵なやちむんの器です。
読谷村座喜味2653-1
不定休
宙吹ガラス工房
やちむん(焼き物)の里なのにガラス工房?と思われるかもしれませんが、読谷村ではガラス工芸も盛んです。こちらの宙吹ガラス工房では、稲嶺盛吉氏の多彩な色のガラスの品々を見ることができます。
もともと手近にあった廃品ガラスの活用から生まれた琉球ガラスは、独特の温かみと飴細工のような風合いが特徴です。
また、奥にある“ほむらガラス工藝館”はちょっとした美術館のよう。
一番手前の駐車場からすぐで気軽に見られるのでぜひ。
読谷村座喜味2748
9:00~18:00
定休日:日曜日 ギャラリーは無休
陶器市に行こう!
やちむんの里の陶器が数多く、しかもお得に手に入るのが「陶器市」。各工房も陶器市に向けて作品を作るので、この時期が一番品数が多いのです。(逆に陶器市前後は人が少ないのでゆっくり見ることができますが、品数も少ない)
読谷村で行われる大きな陶器市は3つあります。
(1)「読谷山焼陶器市」
毎年12 月の第3 金曜日から日曜日に“やちムンの里”で開催されます。
読谷山窯と北窯の共催で、普段は入れない工房内や、外に張られたテントの下に各窯元のやちむんがずら~っと並びます。
かなり混雑して、駐車場に車を止めるのも一苦労するので、朝早く(8:00ごろ)に到着して備えたいですね。
(2)「読谷やちむん市」
毎年2月の最終土曜日、日曜日に行わる県内最大級の陶器市。
場所はJAファーマーズゆんた市場。読谷村内に点在する多くの窯元が参加。独立したての若い窯元のやちむんが並ぶので掘り出し物も多いかも?
(3)「読谷やちむんと工芸市」
毎年10 月の第3 土曜日と日曜日に” Gala 青い海”で開催されるイベント。読谷村で作られたやちむんのほか、ガラス工芸などの工芸品も多く並びます。
やちむんの陶芸体験にチャレンジしました!“やちむん&カフェ群青”(ぐんじょう)
やちむんの里から車で5~10分。やちむん&カフェ群青”では、隣接する壺屋焼窯元 陶眞窯(つぼややきかまもと とうしんがま)にてやちむん体験をすることができます。
やちむんの絵付け体験にチャレンジ!
やちむん体験の内容は以下の通り。絵付け以外にも4つのコースがあります。1名と2名以上で価格が異なりますので、できれば連れ立って行った方がお得です。
(1)シーサー作り体験(約90分):1名5,000円 2名以上で1名あたり3,000円
沖縄ならではのシーサー。口が空いているのが男の子、閉まっているのが女の子。どちらか一体を作ることができます。
(2)うつわ作り体験(約60分):1名5,000円 2名以上で1名あたり3,000円
お皿・カップ・ボウルのどれか1つが作れます。色も黒・茶・白の3食から選べます。
(3)土作り体験(30~60分):2~4名まで1名あたり1,000円
やちむんのもととなる土作りを学べます。
(4)ロクロ体験(約15分):1名5,000円 2名以上で1名あたり3,000円
お皿・カップ・ボウルなどサイズにより1~2個作れます。ロクロで成形した後の行程は工房が引き継いでくれるので安心。色はうつわ作り体験と同じく色も黒・茶・白の3食から選べます。
(5)絵付け体験(10~15分):1名3,000円 2名以上で1名あたり2,000円
伝統的な釉薬(ゆうやく)で大小2枚のお皿に絵付けすることができます。
http://tousingama.com/gunjyocafe/tougeitaiken
さらに、体験した方には、以下のお得なオプションも!
◆お好きな箸置きをお1人1個プレゼント!
◆陶眞窯のやちむんが20%OFF!(1000円以上ご購入の方)
◆陶芸体験限定のピザセット!
3種類から選べるピザ+本日のデザート+お好きなドリンクが1000円で!
ということで、「(5)絵付け体験」にチャレンジしてきました!
こちらが絵付けをするお皿。大小2種類あります。大は15cm、小は9cmほど。
釉薬は4種類。大雑把に言うと、紺・青・茶・緑です。しかし……釉薬は焼くと色が変わるため、絵付け時点で完成の図を想像できないという状況!
たとえば上段と下段の釉薬は2つとも同じに見えますが、【左上は青、左下は紺、右上はグレー、右下は茶】なのです。
青と緑、紺と茶の区別が描いているとわからなくなってきます……
これは難しい……塗っている最中で、色が似ている釉薬だとどの色を載せたかがわからず混乱してしまいます。(混乱してとりあえずランダムに点を打ってみた)
さらに、釉薬をうまく筆につけないと、薄かったり厚くぼってりとついてしまったりで調整がわかりづらいです!
最後にはなにがなにやらわからぬまま終了。
出来上がりには1ヶ月ほどかかりますので、直接取りに来るか、配送か選びましょう。
ちなみに出来上がりはコチラ……あ、味がありますね……
体験した人間からのアドバイスとしては、
・事前に出来上がりの下書きをしておく
最初にやちむんの里やギャラリーを見て、「どんなデザインにしたいか」をイメージングしていくというのが非常に大事だと思いました。ぶっつけ本番では難しかったです。(この体験は取材のスケジュールの都合で最初に行きました)
・釉薬の適量を確認しつつ色付けする
釉薬は載せすぎると流れてしまうので、適度な量をインストラクターの方に確認しつつ取るようにしましょう
という2点でしょうか。
ともあれ、(出来上がりはともかく)絵付け体験はとても楽しかったので、他の体験もあわせてぜひやってほしいですね~
シーサーの窯で焼いたピザは絶品!
それでは、カフェでピザをいただきましょう。
こちらのカフェ“群青”は、厨房の奥にある、シーサーの薪窯で焼くピザが美味しいと評判のお店。
全部で10種類のピザ(フード9、デザート1)。
どれも美味しそうなのですが、今回は⑦窯焼き!島野菜ピザと⑩バターチキンカレー&ガーリックチーズピザにすることに。ピザのサイズは20cmであらかじめカットされて出てくるので食べやすいですよ。
島野菜ピザはゴーヤーにんじんパプリカなど色とりどりの野菜がパリパリの生地の上にトッピング。トマトソースとチーズとの相性がばっちり!
そして特筆すべきはバターチキンカレー。ナンの代わりにピザ(上にチーズとガーリックが)をつけて食べるのですが、このバターチキンカレー自体がとっても美味しい!まろやかで辛みもそんなになく食べやすいです。
また、ピザもチーズガーリックピザとしてそのまま食べられます。
しかし、最終的にはバターチキンカレーを他のピザの端っこにつけて食べていました(笑)
この「ピザ生地をナンの代わりにして食べる」のはかなり斬新かも。
やちむん体験をするなら、ランチはここで決まりです!
併設のやちむんのギャラリーには可愛い器がたくさん!
そして、ピザができるまでギャラリーで素敵な器を見ているとあっという間です。
やちむん体験をしていれば1000円以上購入で20%OFFという割引がありますので、ここで気に入ったものが見つかれば買わない手はありませんよ!
もちろん絵付け体験の前にここを見ておけばよかったと後悔したのは言うまでもありません……
やちむんの里からはちょっと離れていますが、ぜひおすすめしたいカフェです。
読谷村座喜味2898
098-927-9167
10:00~20:30(ピザは11:00~)
定休日:水曜日
http://tousingama.com/gunjyocafe/
沖縄には様々な伝統工芸がありますが、その中でも親しみやすい“やちむん”を今回は取り上げてみました。やちむんの工房は読谷村以外にも沖縄全島にあり、それぞれ個性があって、見ていくととても楽しめます。
全てがハンドメイドの“やちむん”は、二つとして同じものがありません。気にかかるものが見つかったら、それは一期一会。ぜひ連れて帰ってあげてくださいね!