相続放棄の費用は?どんな書類を用意する?手続き方法・手順を教えて?

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執筆:FP 大泉 稔 氏


相続放棄の費用は?どんな書類を用意する?手続き方法・手順を教えて?
大泉稔1級FP技能士事務所のファイナンシャルプランナー「大泉稔」氏に、相続放棄にかかる費用や、揃えなくてはならない書類や、相続放棄の手続き方法、手順を聞いてみました。

そもそも相続放棄とは?

そもそも相続放棄とは、「遺産を一切、受け取らない」という意味です。

以前、「親の遺産の内の一部は放棄するけど、他の遺産は相続する」という方がいらっしゃいましたが、それは相続放棄とは言いません。

相続放棄とは遺産を「一切」受け取らないことなのです。

ところで、相続の財産の中には、土地やビルなどの不動産、現預金などが含まれますが、故人が返しきることが出来なかった借金なども、立派な相続財産です。

また、故人が、もし、どなたかの連帯保証人になっていたとしたら、連帯保証人の立場も相続財産になってしまいます。

故人が残した借金や、故人に連帯保証人の立場があったなら…これのことを「負の遺産」とも言います。「負の遺産」を相続してしまうと、相続した人が故人に代わって借金を返済しなくてはなりません。

また、相続した人が故人に代わって連帯保証人としての責任を背負うことにもなります。

「負の遺産」を相続したくなければ、相続放棄を検討することになりそうですね。

相続放棄に必要な書類と費用

相続放棄にかかる費用を以下に、簡単にまとめてみました。

☆戸籍謄本…1通当たり450円
☆改製戸籍謄本…1通当たり750円
相続放棄申述書
☆収入印紙800円
☆郵便切手(裁判所によって異なります)
※書類ではありませんが、印鑑も準備しましょう。

なお、各種の謄本等の取得に当たり、交通費や郵送費などが必要となる場合もございます。
特に、郵送費は返信用の切手と封筒を準備する必要もあるでしょうし、速達料金も必要になるかもしれません。

必要な書類を以下の表にまとめてみました。

放棄の申述者 用意する書類
配偶者 故人の住民票除票又は戸籍附票、放棄する人の戸籍謄本、故人の死亡の記載のある除籍謄本・改製原戸籍謄本
故人の子 故人の住民票除票又は戸籍附票、放棄する人の戸籍謄本、故人の死亡の記載のある除籍謄本・改製原戸籍謄本
故人の子の代襲者 故人の住民票除票又は戸籍附票、放棄する人の戸籍謄本、故人の死亡の記載のある除籍謄本・改製原戸籍謄本、
被代襲者の死亡の記載のある除籍謄本・改製原戸籍謄本
父母・祖父母 故人の住民票除票又は戸籍附票、放棄する人の戸籍謄本、故人の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍謄本・改製原戸籍謄本)
故人の子(及びその代襲者)が亡くなっている場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍謄本・改製原戸籍謄本)
故人の父母・祖父母の代襲者 故人の住民票除票又は戸籍附票、放棄する人の戸籍謄本、故人の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍謄本・改製原戸籍謄本)
故人の子(及びその代襲者)が亡くなっている場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍謄本・改製原戸籍謄本),直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
兄弟姉妹 故人の住民票除票又は戸籍附票、放棄する人の戸籍謄本、故人の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍謄本・改製原戸籍謄本)、
故人の子(及びその代襲者)が亡くなっている場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍謄本・改製原戸籍謄本)、故人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍謄本・改製原戸籍謄本)
おい・めい 故人の住民票除票又は戸籍附票、放棄する人の戸籍謄本、故人の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍謄本・改製原戸籍謄本)、
故人の子(及びその代襲者)が亡くなっている場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍謄本・改製原戸籍謄本)、故人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍謄本・改製原戸籍謄本)、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍謄本・改製原戸籍謄本)

 

相続放棄の手順

1.本当に相続放棄をするのか否かを決める

ひとたび、相続放棄の手続きを行ってしまうと、もはや取り消すことは出来ません。

なので、本当に相続放棄をしても後悔することが無いように、故人の遺産をキチンと見定めことから始めましょう。

2.必要な書類の手配をする

相続放棄をする旨の決心が付いたら、相続放棄の手続きに必要な書類の手配を行います。
市・区役所や町村役場の窓口は平日の限られた時間だけしか開いておりません。(最近、コンビニの端末で取得できるのは住民票くらいではないでしょうか?)。

また、郵送で取り寄せる場合も、連休や年末年始などを挟んでしまうと、相当の時間が掛かると思われます。郵送の時は、場合によっては、速達での対応を検討した方が良いかもしれません。

3.手続きは家庭裁判所で

相続放棄の手続きは、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で受け付けています。裁判所の管轄はこちらから検索することができると思います。

相続放棄申述書はこちらになりますので、予め、印刷して書き込んでから家庭裁判所に出掛ければ、時間の短縮化に繋がりますね。

なお、印刷して持参しなくても、家庭裁判所に行けば、もちろん相続放棄申述書がありますので、その場で書いて提出することもできます。

家庭裁判所に出掛ける時は、用意した書類と共に、印鑑もお忘れなく。

なお、相続放棄申述書の提出そのものを郵送で出来る場合もありますが、家庭裁判所によって対応が異なりますので、予め確認しましょう。

4.家庭裁判所から送られてくる照会書に記入して返信

家庭裁判所に相続放棄申述書を提出すると、家庭裁判所から「照会書」というものが届くことがあります。

裁判所から「照会書」というと、耳に心地良い響きではありませんが、平たくいうと、質問に対して答えるアンケートのようなイメージです。

「照会書」に書かる質問の例を挙げてみましょう。

☆故人の死亡を、いつ知りましたか?
☆放棄はアナタの意思によるものですか?
☆故人の借金を、どのように知りましたか?

という具合です。

5.家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届く!→相続放棄の手続きが完了

家庭裁判所に「照会書」を送ってから、10日前後で、やはり家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届くようです。

これで相続放棄の手続きが完了です。

相続放棄には期限が

最後に、相続放棄には期限があります。

具体的には、「相続の開始を知ってから3か月以内」に家庭裁判所に相続放棄の旨を申述しなくてはなりません。

ちなみに、「相続の開始を知った」というのは、「亡くなって」からと言うことではありません。

被相続人(亡くなった方)が亡くなってから3ヶ月過ぎてしまうと相続放棄ができないと思われている方がいらっしゃいますが、厳密に言うとそうではなく、相続が発生した出来事を知ってから3ヶ月なのです。

疎遠な親戚などで、亡くなったことを数年経過して知った場合などは、亡くなったことを知ってから3カ月以内、ということになります。

なお、海外などに住んでいて、「3か月以内」に間に合わない時には、どうしたら良いでしょうか?

「相続放棄のための申述期間伸長の申請」を家庭裁判所へ行うことになりますが、この手続きも、やはり、「相続の開始があったことを知ってから3か月以内」に行わなくてはなりません。

相続放棄の手続き「まとめ」

相続放棄の手順などを書いてみましたが、いかがでしたでしょうか?

それほど難しい手続きでは無く、費用も高額なものではありませんが、期限は気に留めておいた方が良いでしょう。

2019年の4月末から5月に掛けて、10連休があったのは、記憶にあたらしいところではないでしょうか?

家庭裁判所はもちろん、市・区役所、町村役場も、全てお休みです。
しかし、「3か月」という期限は変わること無く、刻刻と迫ります。

故人の遺産や保証人の立場などを見定めるためには、時間があるようで、時間は無さそうです。

<オマケ>
相続放棄をしても、受け取ることができる財産も実はあります。例を挙げてみましょう。

☆生命保険金
(ただし、相続放棄をした上で、生命保険金を受け取ると相続税の非課税枠がありません)。
(故人が受取人になっている医療保険・がん保険・傷害保険などの各種給付金)
☆健康保険や国民健康保険からの埋葬料・埋葬費
☆遺族基礎年金・遺族厚生年金・寡婦年金・死亡一時金・未支給年金
☆死亡退職金(規定に「受取人は相続人」の旨、記載されていること)。
☆住宅ローンの団体信用生命保険による債務弁済。

<執筆者>大泉 稔 氏

大泉稔1級FP技能士事務所 代表
〒160-0023
新宿区西新宿3-1-5

NPO法人日本ファイナンシャルプランナーズ協会 CFP(R)認定者
NPO法人確定拠出型年金教育・普及協会 DCアドバイザー
NPO法人金融知力普及協会 金融知力インストラクター
1級FP技能士
1種証券外務員
生命保険大学課程
貸金業取扱主任者
第1種衛生管理者

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