【中小企業診断士に聞いた】中小企業が銀行からお金を借りる!銀行の審査に通るために必要なこと

執筆:金森 亨 氏

中小企業が銀行からお金を借りる!銀行の審査に通るために必要なこと

中小企業か大企業かに関わらず、お金を借りるとき、銀行の審査に通るために必要なことは、借り入れた資金が事業に活かせる点を納得してもらうことです。

事業に活かせるとはどいうことでしょうか。

それは、その資金を事業の特定の箇所に投入することによって、思惑通り進まなかった事業が軌道に乗ったり、破綻すると予想されていた事業が再生したりすることです。

平たく言うと、資金を活かして事業を成功に導くことです。

本稿では、この辺りを具体的に説明します。

1.資金を活かして事業を成功させたい思いは皆同じ

事業の成功は関係者みんなが望むことででしょう。資金の貸し手である銀行と借り手である中小企業とでは一見利害が対立しているように見えますが、両者ともその事業が成功するようにと祈る気持ちは同じはず。

何故なら、銀行の立場からは、事業が成功しなければ貸した資金が返ってこないし、中小企業の立場からは事業の成功そのものが目的だからです。

同じ気持ちなら、敢えて銀行を敵対する相手と看做して対峙するより、その気持ちを共有すればいいのではないでしょうか。

しかし、残念ながら現実には思いを共有するのは簡単ではありません。

何故なら、銀行にはにがい経験と苦しい事情があり、共有したくても共有できない葛藤があるからです。そこで見えてくる、「中小企業が銀行からお金を借りる」ための第一の条件は、事業の成功を祈る思いを共有できる銀行を選ぶことでしょう。

選び方の参考にするため、まず銀行のにがい経験と苦しい事情を見ていきましょう。

2. 銀行のにがい経験

事業の成功を願う為には、借り手となる中小企業の事業内容をよく理解しなければいけません。高度成長期からバブル形成期までは、借り手の話をよく聞いて事業内容を評価する余裕がありました。

融資先を開拓する営業をしなくてもよかったから、その余力を評価や審査に回すことができたのです。

ところが、1980年代、セキュリタイゼーションにより社債などの資金調達手段が普及してくると、銀行は証券会社と争って融資先を奪い合うようになります。

その結果、土地神話でもなんでも、とにかくお金を貸す先があれば、事業内容の評価や審査もそこそこに、融資案件に安易に手を出すようになりました。本来、事業内容の評価や審査で信用リスクを見極めるべきところ、ろくに審査をしませんから、見極められないリスクをヘッジするためには担保や保証が必要です。そのため、銀行は過度に担保や保証に依存するようになったのです。

バブル崩壊とともに、信用リスクが顕現化し、頼りにしていた担保も土地神話の崩壊から機能せず、不良債権が大量に発生してしまいました。銀行は大いに反省し、本来の事業内容評価と緻密な審査に立ち返ろうとしました。しかし、その時はすでにその力量を失っていました。

もちろん真摯に取り組んでその力を取り戻している銀行員や銀行もあります。私が言っているのは業界の平均値です。中小企業が銀行を選ぶなら、少なくとも事業内容をしっかり評価し、事業の成功を想う姿勢を持っている、平均値から飛び出した銀行であるべきです。

3. 銀行の苦しい事情

上のにがい経験を経て、事業内容評価の姿勢を取り戻そうとしても簡単にできない、力量以外の事情があります。それは経費です。銀行には自己資本比率規制があり、一定の自己資本を維持しなければなりません。

規制は複雑で、事務リスクなども含みますが、中小企業融資に関わる箇所だけごく大雑把にいうと以下のようになります。

▼融資などの資産(借り手から見ると借入金は負債だが、銀行から見ると、融資は資産になる)にリスク・ウェイトを掛けた値の8%(国内取引に専念する銀行の場合は4%)を掛けた自己資本を維持する。

▼リスク・ウェイトは格付けのある企業では20%とするケースもあるが、中小企業は75%である。

仮に、100円をリスク・ウェイト20%の格付け企業に融資すると自己資本は100円×20%×8%=1.6円でいいが、融資先が中小企業となると100円×75%×8%=6円もの自己資本が必要ということになります。

これだけではありません。
大企業の資金需要は大きいのに対して中小企業の資金需要は小さいにもかかわらず、事業内容評価と審査にかかる時間と費用は固定的で、あまり変わりません。

融資1件当りの審査費用は必ずしも融資額規模を反映したものにならないのです。この場合、費用対効果を考慮すると、どうしても大規模資金需要には真剣に向き合うが、少額にはさほど時間と費用をかけられないということになってしまいます。

自己資本は利益の積み重ねで維持することができますが、費用効率が悪い場合、この積み重ねに支障をきたし、自己資本の維持が難しくなります。

このため、大手への融資案件が多い大手銀行では、中小企業向け融資の審査は時間をかけず、コンピューターやAIではじき出した評点を基準に判定する傾向にあるようです。

借り手からみると、時間がかからないのはいいことのようにみえますが、とんでもありません。「即決」とは借り手企業の事業内容評価を念入りに行わないこととの裏返しでもあるのです。

でもコンピュータやAIが緻密な計算をしてくれるだろうと言わないでください、計算はするがそのデータは過去取引実績や業績推移などです。これでは、新しい事業や創業、事業再生計画は審査の入り口にも入れません。

4.銀行の選び方

以上の銀行のにがい経験と苦しい事情を考慮すると、地域に密着して地元企業の事業を念入りに評価してくれる銀行、即決してくれなくても事業の中身をしっかり評価してくれる銀行を選ぶべきだとの結論に達します。

この点、地元経済の中で営んでいる地域金融機関の中には、事業の成功を祈る気持ちを借り手企業と共有しようと取り組んでいるところも徐々に増えてきたように思います。

5. 審査に通る為の2つの要素

上の方法で事業の成功を想う気持ちを共有できる銀行を選んだとして、共有する思いの先にあるのは、冒頭に掲げた「その資金を事業の特定の箇所に投入することによって、思惑通り進まなかった事業が軌道に乗ったり、破綻すると予想されていた事業が再生したりすること」です。

これは、①資金を活かす特定の箇所(資金使途)と②事業を成功に導く可能性(事業性評価)の2つに分解できます。以下にそれぞれを見ていきましょう。

6. 資金を活かす特定の箇所とは~資金使途

資金を活かす特定の箇所とは、資金を投下する箇所、つまり資金の使い道のことです。銀行ではこれを「資金使途」といい、最も重視しています。一番気になるからです。

何故気になるのかは、皆さんが子供から小遣いをせがまれた時のことを想像してみるとわかります。子供に「お父さん、お小遣いちょうだい」と言われたら、必ず「何に使うの?」ときくでしょう。考えられる回答がいくつかあります。

A)お金が足りないから
B)夏休みの自由研究の教材を買いたいから
C)ゲームアプリを買いたいから

皆さんはどの回答が返ってきたら小遣いを与えようという気になりますか。B)の回答なら子供の成長の為になると思い、喜んで与えるのではないでしょうか「そうかわかった。頑張れよ」という気になります。C)では、最近頑張っているからたまにはいいか・・と、金額の条件を付けて与えるかもしれません。A)は最悪です。

銀行の融資も同じです。
ただ、事業の場合はもう少し具体化しましょう。

我社の事業では高い不良品発生率が弱点である。これを是正するために資金を使って新たな生産設備を導入する必要がある。これさえ改善できれば必ず事業を成功に導くことができるはずだ。と、いう具合です。

銀行の融資においても、上の回答のA)は最悪です。資金不足は資金使途になりません。しかし、だからと言って、箸にも棒にもかからないかというと、そうでもありません。

生産設備導入の例でも、設備購入資金が手元にないなら、「資金不足」という状態になるのは同じです。ではどう言えばいいのでしょう。なぜ「お金が足りないのか」をもう少しかみ砕いて事業に関連付ければいいのです。「なぜ」を繰り返していくとそれができます。

ちょっとやってみましょう。

「金が足りない」
→それは何故か、製品が売れる前に仕入代金を支払うからだ
→それは何故か、販売は掛け売りなのに仕入は現金だからだ
→それは何故か、販売先から注文を貰う為に後払いを容認しているからだ

ここで、後払いを容認すれば必ず注文がとれて売上高が確保でき、利益も得られるという仕掛けに信頼が置けるなら、問題は仕入支払と販売回収の時間的ズレだけです。「仕入と販売の決済ズレを埋める為」という立派な資金使途が成り立つではありませんか。

ただ、そこに資金を投じて本当に事業を成功に導くことができるかは別の問題です。事業の仕掛けに関わる問題です。そこで、分解した2つ目に進みます。

7. 事業を成功に導く可能性とは

事業を成功に導くためには、その事業の仕掛けが確かなものでなければなりません。銀行ではこれを「事業性」と呼んでいます。「事業性」という言葉自体は最近になって使われ始めたものですが、以前から「事業の内容」や「事業の仕組み」を評価することは行われてきました。

その力量が不幸な経験と事情によって損なわれた背景は上に述べた通りです。いまこそ銀行はこれを取り戻し、それに真摯に取り組まなければいけません。

幸い、金融庁もこれを推し、様々な形で地域金融機関などを支援しています。借り手としてもこれに応えていく必要があるでしょう。

借り手として、評価される事業性を確保する為にはどうすればいいのでしょう。通商産業省が公表した「ローカルベンチマーク」が参考になります。

ローカルベンチマーク(通称「ロカベン」)は、地域の産業・金融の支援策を目的として2016年に経済産業省が公表した、企業の健康診断を行うツールで、6つの財務指標と4つの非財務視点から構成されています。このうち、財務指標は従来から使われてきた基本的な指標です。

力を入れているのは後者の非財務指標です。

4つの非財務視点とは、

①経営者の経営理念や経営意欲など経営資質
②事業に関わる強み弱み
③企業を取り巻く環境や関係者
④内部管理体制としての組織体制、事業計画など

です。

なぜ力を入れるかというと、財務は事業の成績を数字で表すものであって、その数字は非財務要素が創り出すものだからです。

事業を成功に導くのは非財務要素であり、決して財務ではありません。なので、事業の成功を想うなら、この➀~④の要素を充実させる努力が必要です。

ところで、ロカベンは診断ツールですから審査の目です。経営の立場では、これらの要素を強化したうえで事業の仕掛けとして組み立てなければなりません。

何処から材料を仕入れてどのように製品にするか、それを誰にどうやって売るかという仕掛けです。この流れ図を自分の手で描き、その図のどこに強みを発揮した差別化を見せるかを検討するといいでしょう。

8. まとめ

以上をまとめると、「中小企業が銀行からお金を借りるために必要なこと」は、以下の3つです。

①事業性を念入りに評価し、事業の成功を思う気持ちを共有しできる、地域に密着した銀行を選ぶこと。
②事業の仕掛けの弱い部分を強化するなど、資金を活かす箇所を明確にすること。
③そこを強化すれば必ず事業を成功に導くことができるという可能性を確保するため、非財務要素を基に事業の流れをしっかり組み立てること。

ここから先は事業によって異なりますので、個別の話になります。事業の形は事業の数だけあります。文字通り、千差万別、十人十色。皆さんの事業に当てはめて具体的に説明材料を揃えてみてください。

<執筆者>「金森 亨 氏」

中小企業診断士 証券アナリスト
かな経営研究所代表

1954年北海道生まれ、慶応大学を卒業して大手銀行に勤務。いくつかの国内支店の支店長や海外地法人社長などを歴任して2004年に退職。その後は中堅商社にて経営戦略や海外業務などを担当しながら経営の一端を担った。2019年、「かな経営研究所」を開業し、事業化や事業性評価、採算管理、事業資金調達、為替リスク管理などの分野で中小企業経営のお手伝いをしている。著書に、「事業再生の現場プロセス」(共著)(中央経済社)、「為替リスク管理の教科書」(中央経済社)、「事業資金調達の教科書」(中央経済社)がある。

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