住宅ローンを組みたい!無理ない返済額の決め方・計算方法を教えて?

執筆:未来が見えるね研究所 小山英斗

住宅ローンを組みたい!無理ない返済額の決め方・計算方法を教えて?

住宅購入においては多くの人は住宅ローンを組み、長期に渡り返済していくことになります。

また住宅を所有するということは賃貸と違い、その取得や維持にかかる費用、税金なども発生します。

そして、所有している間には家族構成や仕事、生活環境に様々な変化が起きることも考えられます。

そこで、住宅ローンを組む際に、無理のない返済額をどのように決めればよいか考えてみたいと思います。

いくらの家を買う?

まずは家を購入するときの適正な予算をどう求めるか見てみましょう。無理なく取得できる家の価格は、適正な住宅ローンの借入額(借入適正額=無理なく返せる金額)と貯蓄から購入に充てられる分の自己資金及び両親からの援助資金等の合計額から取得にかかる諸費用分を引いた金額になります。

適正な物件予算(購入できる物件の上限)
=借入適正額(A)+貯蓄から購入に充てられる自己資金(B)+両親などからの援助(C)
- 諸費用(D)

借入適正額とは金融機関からの借入限度額と無理なく返せる借入額のうち、小さい方の金額となります。

また諸費用(登記費用や不動産取得税、住宅ローンの事務手数料や保証料、引越し費用や家具・家電購入費など)は以下が目安となります。

新築物件の場合 (A) + (B) + (C)の合計額 × 5%~7%
中古物件の場合 (A) + (B) + (C)の合計額 × 7%~10%
※中古物件の場合、一般に仲介手数料がかかるため、新築よりも多くなるのが通常

そして物件取得に充てられる手持ち現金は以下より求められます。
(B) + (C) - (D)
この手持ち現金の把握は大切です。

物件取得の頭金はこの手持ち現金から充てられますが、頭金に充てられる金額が少ない場合には、例えば、追加発注工事が多くなりがちな注文住宅を建てるのは難しくなったりするなど、物件によっては試算された物件予算内のものであっても取得できない場合があります。

また住宅ローン選びにも選択肢が狭まるなどの影響がでてくる場合があります。

いくら借りられるのか(借入限度額)

では次に適正な住宅ローンの借入額(借入適正額=無理なく返せる金額)をどう求めるか見ていきましょう。最初に認識しておきたいのは、金融機関からの借入限度額が借入適正額ではない、ということです。

借入限度額 ≠ 借入適正額

借入限度額は金融機関ごとに設定されている借入条件(借入審査)によって計算されます。

そして借りる人の状況(職業や年収、家族構成など)や借り方(返済期間や返済方法など)、担保となる物件によって変わってきます。

例えば、ある銀行では借入額は物件価格の80%を上限に設定しています。この場合、物件価格が3000万円だとすると、借入額の上限は2400万円ということになります。

また年収に応じた以下のような返済負担率の設定例もあります。

年収 返済負担率
300万円以下 25%以下
400万円以下 30%以下
600万円以下 35%以下
600万円超 40%以下

 
例えば年収350万円の場合、返済負担率は30%なので、毎月返済額は以下の額より小さくなる必要があります。

350万円 × 30% = 105万円(年間返済額)
105万円 ÷ 12 = 87500円(毎月返済額)

これに対して金利や返済期間にもよりますが、例えば、金利2%、返済期間25年、元利均等返済の場合で毎月の返済額が87500円以下となる借入限度額は約1845万円です。

物件価格からみた借入限度額と年収からみた借入限度額では、年収からみた借入限度額の方が小さいので、上記2つのみの条件例では1845万円が借りられる額ということになります。

ただ、実際には金融機関ごとに様々な多くの条件があるため借入審査を通してみないと借入限度額はわかりません。

それでも最近は各金融機関のホームページで借入限度額の目安がシミュレーションできるサービスが提供されています。そちらでおおよその借入限度額や月々の返済額の目安を知ることができます。

借入限度額は金融機関が条件に従って貸し出すことができる限度額であって、金融機関が借りる人にとって無理なく返せる額であると保証してくれているわけではありません。

いくらなら無理なく返せるか(借入適正額)

それではいくらなら無理なく返していけるでしょうか?無理なく返せる額というのは、個々のライフスタイルや他にどんな消費支出があるかによって異なりますし、将来に増加が見込まれる支出(子供の養育費など)や将来に備えるための貯蓄(老後資金など)も加味して考える必要があります。

先に答えを言ってしまえば、実は無理なく返せる額を算出するための簡単な計算式はないのです。

真の無理なく返せる額を知るためには、しっかりとしたライフプランをつくる必要があります。

ライフプランとは数十年の間に起こる、もしくは起こす様々なライフイベント(住宅購入やリフォーム、車の購入、子供の進学、旅行などの趣味、老後の生活など)を洗い出し、収入と支出、貯蓄の計画を立てることです。

このライフプラン作りは、個人の想いだけでなく家族全員の価値観なども反映させたものとなります。

ライフプラン作りを通じて、なにを人生のなかで大切にしていきたいか見えてきます。これにより、なににお金をかけたいかも見えてくるわけです。

例えば、ある人は収入からみたら3000万円の家を買うことは無理ではないかもしれません。

でも、その人にとって1000万円かけてでもやりたい趣味があるとしたら、住宅購入に使える無理のないお金は2000万円までかもしれません。

あるいは子供の進学を公立にするか私立にするかでもかかる費用も変わってきます。それにより月々の返済に充てられる額も変わってくるかもしれません。

このように、単に収入からだけでは購入できる物件価格や返済額は決められるものではありません。自分や家族の価値観によって、住宅を含め、なにに支出を振り分けたい(お金をかけたい)のかが変わってくるのです。

ライフプラン作成には、ライフイベント表やキャッシュフロー表などを利用していきます。

日本FP協会のホームページにはそれらの表が掲載されていて誰でもダウンロードして利用することができます。

書き方も簡単ではありますが説明されています。キャッシュフロー表の「住宅関連費」には住宅ローンや維持費、固定資産税等の合計額を記入します。

キャッシュフロー表を作成することで、他の支出額や貯蓄の推移を見ながら住宅にどのくらいまでお金をかけても大丈夫か見えてくると思います。

(出典)日本FP協会ホームページ

ファイナンシャルプランナーはライフプラン作成のサポートをしてくれる存在です。自身でプランの作成が難しいと感じたら、ファイナンシャルプランナーに相談するものよいでしょう。

現在の家賃と住宅取得用積立費から無理なく返せる額を試算する

先ほど述べたように、本来なら住宅購入は金額も大きく人生に与える影響も大きいことからしっかりとしたライフプランを作成したうえで購入額や月々の返済額を決めるべきかと思います。

しかし一方で、現在賃貸住宅に住んでいる場合、現在の家賃をベースに毎月無理なく返せる額を求める、という考え方もあります。この前提は、現在の家賃が将来にわたり住まいのコストとして自分たちにとって適当である、という考えがすでにある場合です。

これは現在の毎月の住宅関連費から住宅取得後の維持費を引いて計算します。

(A)毎月の住宅関連費
現在の家賃・駐車場代 + 現在の住宅取得用積立費(月額)

(B)毎月の住宅取得後の維持費等
固定資産税・都市計画税(月額換算)
管理費・修繕積立金(マンションの場合)
修繕費(一戸建ての場合、自分で修繕費用を積立)
駐車場・駐輪場代
火災保険料・地震保険特約料
光熱費等の増加分※
(※賃貸のときより床面積が広くなったり、床暖房などの設備が加わるなど、光熱費も1~2割ほど増加することを見込む必要がある)

(A) – (B) = 毎月無理なく返済できる額

住宅販売業者が「住宅ローンの月々の返済は今の家賃と変わらないので買った方がお得ですよ」のような宣伝文句で購入を促すケースがあるようです。

そのような宣伝文句を信じて購入した後に、思っていた以上に支出が増えてしまったというのは、賃貸のときには無かった住宅取得後の維持費等が考慮されていなかった場合が多いようです。

毎月無理なく返済できる額がわかったら、次に無理なく返し続けられる年数を考えます。

定年または働く予定年齢 - 現在の年齢 = 無理なく返し続けられる年数

毎月無理なく返済できる額と無理なく返済し続けられる年数がわかったら、無理なく返せる借入額を試算できます。

月々の返済額から借入額を試算するシミュレーションサービスも金融機関のホームページで提供されたりしていますので利用するとよいでしょう。

例えば、フラット35を提供している住宅金融支援機構のホームページでは「毎月の返済額から借入可能金額を計算」「年収から借入可能額を計算」「借入希望金額から返済額を計算」といったローンシミュレーションのページがありそれらの試算を行えます。

頭金はいくらにする?

頭金のことを考えるのも重要です。建設費・購入費に対して頭金を多く用意できれば、住宅ローンの借入額も減らせることができ将来の返済負担も軽くなります。

金融機関によっては借入限度額を物件価格の100%としていないところもあり、この場合頭金は必須になります。

一般的には頭金は建設費・物件価格の20%以上を準備した方がいいとされています。

これは、将来返済途中で売却が必要になった場合でも、売却価格でローンの残債を返済しきれない可能性を低くするためです。

しかし、いくら頭金が多い方がいいと言っても、貯蓄を全額頭金に充てることはできません。

貯蓄には住宅資金以外にも、不測の事態に備える予備資金の役割や、将来のライフイベントに備えるための役割もあるからです。

そのため、頭金をいくらにするかを考えるにもやはりライフプラン作成は重要になってきます。

また筆者も頭金を用意できるまでは住宅購入すべきではないと考えます。頭金を準備するためには、それなりに計画的に貯蓄していくことが必要になります。言い換えれば、頭金づくりができないようであれば、住宅ローンを計画的に返済していくことも難しいと思うからです。

その他の留意事項

今回の話の中でボーナスによる返済は考慮していません。ボーナスは変動要素が多く、長い返済計画に組み込むのはリスクがあります。

住宅ローンは月々の返済のみで計画するようにしましょう。またボーナスにより余裕資金が生まれたら、繰り上げ返済の資金として検討してみてください。

<執筆者>小山英斗(こやま ひでと)


CFP・1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー・住宅建築コーデネーター
未来が見えるね研究所 代表
https://miraiken.amebaownd.com/
私たちの使命は、私たちとご縁のあった人たちの心・体・経済・環境の健康に貢献することです。


※以下の関連記事は、「お金のプロへのインタビュー」編集部の記事になります。

住宅ローン ボーナス払いするメリット・デメリット

住宅ローンの返済プランによって、総返済額や毎月の家計の負担が変わってきます。

今の状況だけではなくて、将来予測までふまえた合理的な判断をしないことには、住宅ローンを払えなくなってしまうリスクも出てきます。

住宅ローンの返済プランを考えるにあたって重要なポイントの1つである「ボーナス払い」に焦点をあてて、メリットとデメリットを紹介しましょう。


住宅ローンのボーナス払いとは

そもそも「ボーナス払い」とはどのような仕組みなのか、あらためて整理をしておきます。

住宅ローンのボーナス払いとは、ボーナスが出たタイミングで一定額を支払うことにより、毎月の返済を安くする方法です。

ボーナス払いは、毎月の住宅ローンの返済にプラスする形で支払います。ボーナス月は、通常の返済とボーナス払いを足した金額の負担です。

住宅ローン ボーナス払いの具体例

たとえば、毎月10万円・12ヶ月で120万円を返済する予定だったとします。7月・12月のボーナス時に10万円ずつ返すとして、残りの100万円を12ヶ月で均等割するイメージです。

100万円÷12で約8.3万円ずつの支払いで済み、毎月の負担は軽くなります。毎月の支払いとボーナス時の支払いを併用することから「ボーナス併用払い」と呼ぶ金融機関もあるようです。

上限は金融機関ごとに異なる

住宅ローンのボーナス払いをどのくらい行うことができるかは、金融機関ごとに異なります。

一般的には、借入総額の40%以内と制限されることが多いようです。この上限を超えない範囲なら任意の割合で申し込むことができて、家計に合わせた調整ができます。

なお、年収から考えてあまりにも多すぎる金額を設定すれば、審査結果に影響します。ボーナス払い分も含めて返済比率が計算されて、審査結果を左右すると考えてください。

住宅ローンのボーナス払いをするメリット

ボーナス払いを行うことで毎月の負担を軽減できるのは、先に見た通りです。その他には、どんなメリットがあるのでしょうか。ボーナス払いを行うことで期待される2つのメリットを見ていきます。

借入期間を短縮できる

最初に見た例は、毎月の返済額を減らすために住宅ローンのボーナス払いを行う方法でした。

毎月の支払い額を当初の計画通りに維持したまま、ボーナス払いを行えば、借入期間を短縮できます。

たとえば、借入金額3,000万円・年1.34%・ボーナス払いなしの住宅ローンを組んだとしましょう。

この場合、毎月の支払いは11.8万円・返済期間は25年と計算できます。

毎月の支払い11.8万円を維持したまま、ボーナス月に15万円・年間30万円の上乗せ返済を行った場合はどうでしょうか。返済期間の目安は約20年になり、5年分を短縮できます。

住宅ローンを組む時には「何歳までに返すか」も重要なチェックポイントです。

「役職定年を迎える50代までに完済したい」「孫が産まれるくらいまでには、払いきる」など、各家庭の考え方をふまえたスケジュールを組むことになります。

毎月の返済だけでは期間が長引きそうな時、住宅ローン返済を検討するのも一案です。申込前にいろいろなケースをシミュレーション、理想的な返済計画を建てましょう。

賞与が高い給与体系にマッチする

実力主義の社風など何らかの理由があって、賞与の比率が高く月給は一定額に抑えられている会社もあります。

この場合、年収から算出した毎月の返済額を適用すると、家計への負担が大きくなりがちです。

ボーナス払いの比率を多めにとり、毎月の負担を軽減すると、キャッシュフローは安定します。入ってくるお金と出ていくお金のタイミングを合わせることで、返済遅延リスクを軽減できるということです。

ただ、会社の評価によって賞与金額の変動が大きい組織にいる人は、ボーナス払いも苦しくなるリスクはないのか考えておく必要があります。

調子が良いタイミングでの賞与額に合わせてしまうと、成績が振るわなかった時に支払いが辛くなるためです。

予定よりたくさんボーナスをもらえたタイミングで、苦しい時に備えた貯金をするのも一案でしょう。

リスクヘッジの方法は家庭ごとの判断となりますが「何とかなるか」という考えは危険です。もしもの時まで考えて、現実的な住宅ローンの計画を立ててください。

住宅ローンのボーナス払いをするデメリット

住宅ローンの基礎知識をまとめた書籍や雑誌の特集では、ボーナス払いのデメリットが強調されることが多々あります。

住宅ローンについて少しでも勉強したことがある人だと「ボーナス払いは御法度」というイメージを持ちがちです。住宅ローンボーナス返済のデメリットとしてよく言われる注意点をあらためておさらいしましょう。

総返済額が高くなるリスクがある

1年あたりの返済金額を変えずにボーナス払いを行うと、毎月の負担が減る代わりに総返済額が高くなるリスクがあります。

借入金額3,000万円・返済期間25年・適用金利1.34%・元利均等返済でシミュレーションした場合、こんな結果となりました。

ボーナス返済なし:毎月11.8万円・総返済額3,533万円
ボーナス割合10%:毎月10.6万円・ボーナス月7.1万円・総返済額3,533万円
ボーナス割合20%:毎月9.5万円・ボーナス月14.2万円・総返済額3,534万円
ボーナス割合30%:毎月8.3万円・ボーナス月21.3万円・総返済額3,535万円

ごくわずかな差とはいえ、ボーナス割合を高めるに連れて、総返済額が高くなります。

支払うタイミングが違うだけで全期間通じた金額に差がつくのは、損した気持ちになりませんか。

仕組みを理解したうえで住宅ローンを契約するならまだしも、後から気付くと後悔する結果になりかねません。上で見た例より影響が顕著に出るケースもあり、よく考えてボーナス払いを行わないとリスクです。

ボーナスをあてにするのは危険

ボーナス額は基本給以上に変動が大きく、会社の業績や市況、個人の成績次第という組織も多いものです。ボーナスの最低支給額を目安に金額を設定しないと、支払いが苦しくなってしまいます。

好調なマクロ市況を追い風として、ここ何年かはボーナスが増えている人も多いはずです。

今の水準がこの先5年、10年と続くかは分かりません。業績が良い時期のボーナス支給を当てにして年間返済額を決めるのは、ややハイリスクと判断できます。

ボーナス払いができなくなったらどうなるの?

住宅ローンのメリット・デメリットをひと通り見て「結局、使って良いのか分からなくなった」という人もいることでしょう。

一定のデメリットがあっても返済期間を短くできるメリットは大きく、計画的に返していけば利用価値が高い仕組みといえます。

最終的な判断は家庭ごとに異なりますが、ボーナス払いする予定で住宅ローンを組んだとして、100%その通りに返さなくてはいけないものでもありません。

リストラ、転職など思わぬトラブルが起こってしまい、どうにもならなくなった時には、返済計画の変更も相談できます。

金融機関によって変更できる条件や手数料が変わってくる可能性はありますが「ボーナス払いができないからすぐ自宅をとられてしまう」というわけではありません。

ボーナス払いの金額を少なくしてもらったり、毎月の返済だけに調整してもらったり、支払いができなくなった時点で金融機関へと話しを通し、誠実な対応をしていけば大丈夫です。

返済条件の変更が認められなかった場合でも、借り換えによって対処できるケースはあります。

返済条件や契約先金融機関が変われば当初の総返済額や期間とはどうしても乖離が出ますが、できる限り有利な方法を考えることはできます。

住宅ローンのボーナス払いにプレッシャーを感じている人は「どうしてもダメだったら、こうしよう」と逃げ道を知っておくことでも、随分気持ちは楽になるはず。

なかなか住宅ローンの契約に踏み切れず悩んでしまった場合には、安心材料を知っておくことも大切です。

ボーナス払い代わりに住宅ローンの繰上げ返済も活用しよう

「それでも、やっぱりボーナス払いが不安」という人は、住宅ローンの繰上げ返済を検討するのもおすすめです。

繰上げ返済とは、ボーナス払いと同じように毎月の支払いに上乗せして返済することを言います。2つの返済方法の違いと、どちらの返済方法が良いのか?考える時の視点を見ておきましょう。

ボーナス払い・繰上げ返済の違い

ボーナス払い・繰上げ返済の大きな違いは、契約時に上乗せ分を決めておくか・できるタイミングで行えばいいのかです。

ボーナス払いは「毎年○月と○月に○万円を支払います」と決めておく必要があります。

原則的には「子供の入学資金に使うから1回パス」「今年から3年間はお休みして、4年後からまた始める」といった要求は通りません。

一方、住宅ローンの繰上げ返済は、自分の好きなタイミングで好きな金額を返済するだけです。

もちろん、ボーナスが入ったタイミングに合わせて繰上げ返済することもできます。ボーナス払いより状況に合わせた自由が利くところはメリットでしょう。

「ボーナスをたくさんもらった時はたくさん返して、思うようにもらえなかった時には1回休む」というように、無理なく住宅ローンを返済していきたい人に適しています。

繰上げ返済の方が利息削減効果も高い

上で見ている借入金額3,000万円・返済期間25年・適用金利1.34%・元利均等返済・ボーナス返済なしの住宅ローンに対して、2年目に40万円の繰上げ返済をしたとします。

期間短縮型と返済額軽減型では、それぞれ以下のような効果が期待されます。

【期間短縮型】
次回からの返済額:毎月11.8万円(変わらず)
残りの返済期間:22年 8ヶ月(4ヶ月の短縮)
減少する利息額:約14.3万円

【返済額軽減型】
次回からの返済額:毎月11.6万円(▲0.2万円)
残りの返済期間:23年(変わらず)
減少する利息額:約6.5万円

期間短縮型とは、毎回の返済金額は維持したまま、返済期間を短くするために繰上げ返済したお金を使う方法です。

返済額軽減型とは、毎月の返済金額を少なくするために繰上げ返済分を割当てます。

いずれにしてもまとまった金額の利息削減効果が期待されることが分かり、ボーナス払いより有利と考えられる方法です。

しかも、上のシミュレーションは2年目に1回きりの繰上げ返済を行う仮定に過ぎません。ボーナス払いに変わる位置づけとして定期的に繰り返し繰上げすると、さらにメリットは大きくなります。

繰上げ返済の手数料がネック

ボーナス返済代わりに繰上げ返済を行う場合、手数料に気をつけましょう。1回あたり数万円かかる金融機関との契約では、手数料負担が重くなるリスクがあります。

繰上げ返済を積極的に行っていくつもりなら、手数料無料の住宅ローンがおすすめです。インターネット銀行を中心に繰上げ返済手数料とする金融機関が増えていて、簡単に手続きできるようになっています。

たとえば、イオン銀行の住宅ローン繰上げ返済は、インターネットバンキングから手続き可能。

繰上げ返済の前日までに口座へお金を入れておくだけで、指定した日付になったら処理されます。支払い単位も1万円以上1円単位と細かい単位で指定でき、まめに手続きしたい人には便利です。

イオン銀行 住宅ローン 繰上返済のお手続き(インターネット)参考

ボーナス払いをおすすめしたい人もいる

2つの返済方法をあらためて比較すると、繰上げ返済の方が圧倒的に有利なように感じた人も多いはずです。

それでもあえてボーナス払いをおすすめしたい人をあげるとしたら「あると使ってしまう」タイプでしょうか。

繰上げ返済にまわす前にボーナスを使ってしまうと、毎月の返済分しか確保できないことになります。

ボーナス払いとして自分にプレッシャーをかけることで、決めた通りの返済が可能です。

住宅ローンの返済比率(返済負担率)の目安

住宅ローンを無理なく返済していくためには、返済比率(返済負担率)の考え方が大切です。

適切な返済比率を超えて住宅ローンを組んでしまうと、ローン破綻になりかねません。

無理なく返せる金額の計算方法と推奨される返済比率の目安、家計のシミュレーション方法について見ていきましょう。


住宅ローンの返済比率(返済負担率)とは

まず、返済比率の計算式を見ていきます。返済比率(返済負担率)とは、年収のうちの何割を借りたお金の返済にまわすかを示す数値のことです。返済比率を計算するには、以下の公式を使います。

返済比率(%) = 年間返済額 ÷ 年収 × 100

年収400万円の人が毎月10万円返済・ボーナス返済なしの住宅ローンを組んだとしましょう。

「10万円×12ヶ月 ÷ 400万円×100」となり、返済比率30%と計算できます。

この時の年収ですが、お給料をもらっている会社員なら各種控除前の額面金額、自営業だったら経費を差し引きした所得で考えるのが通常です。

実際には、額面から税金や保険が差し引きされて支給されるため、手取りのうちの住宅ローン返済が占める割合はもう少し高くなります。

さて、返済比率の計算方法が分かったら、目安に関するお話です。どのくらいで住宅ローンを組めば、審査に通る見込みが高いのでしょうか。

返済比率30~35%が住宅ローン審査通過の目安

フラット35の場合、年収400万円未満で返済比率30%・400万円以上で35%を上限としています。

年収400万円の人だったら、400万円×0.35÷12ヶ月=約116,000円に毎月の返済額を抑えれば、審査通過見込みがあるということです。

2007年までは、300万円未満で25%、300万円以上400万円未満で30%ともっと細かい基準があったのですが、簡略化されました。

民間金融機関は返済比率上限を公表していないことも多いのですが、おおむねは同じくらいと考えておけば良いでしょう。

返済比率30%の家計はどうなる?

ここで考えてほしいのが、年収400万円で返済比率30%・毎月10万円を支払うとした時の家計です。

額面の8割が月収と考えた場合、400万円×0.8÷12ヶ月 = 約26万円で生活していくことになります。26万円から10万円を引いた残りは16万円。これで生活できるでしょうか?

総務省の2016年家計調査年報を参考にすると、世帯主が40歳未満・2人以上の勤労者世帯の平均的な月あたりの支出は、食料だけで約6.4万円・水道光熱費には約1.8万円かかっています。

交通・通信で約4.5万円、家具・家事用品に約1万円です。被服及び履物に約1.2万円、教育には約1.1万円とされています。

ここまでを合計するだけで約16万円になってしまい、交際費や教養娯楽、保険医療にかけるお金は残りません。

つまり、年収400万円・返済比率30%では厳しく支出を管理して、食費やファッション、通信費や交通費を節約していかないと家計がまわらないということです。

家計を何とか維持していくため、妻がパートで働くなど収入を増やす対策も検討されます。

年収400万円を例に出しましたが、もっと所得が高い人でも、返済比率30%はかなりの負担となるはずです。

借りられる金額いっぱいで住宅ローンを組んでしまうと家計を圧迫する可能性が高く、あまりおすすめできません。

住宅ローンで借りられる金額と返せる金額には乖離がある

住宅ローンの返済比率は審査でチェックされる項目の1つです。ただ、上限目いっぱいまでお金を借りた場合の家計がかなり厳しいものになるのは、上で見てきた通り。

「住宅ローンの審査に通ればOK」とは考えず、無理なく返せる金額を考えましょう。

金融機関としては、できる限りたくさんお金を借りて利息を払ってくれたほうが良いので、甘い見通しになりがちです。

生活費や教育費、住宅取得以外の将来設計など抱えている事情は人それぞれ異なるもの。今後のライフイベントまで考慮して、無理がない計画を建てましょう。

無理なく返すため住宅ローンの返済比率は20%以内を目安に

一般論にはなりますが、余裕を持った家計を維持するためには、返済比率20%が目安です。

年収400万円の人だったら400万円×0.2÷12 = 約6.7万円。

この範囲に支払いを納めると、無理なく生活できるということになります。同じように年収500万~1,000万円の人の毎月返済額を求めてみました。

毎月の支払いが以下の水準に納まっていたら理論上は無理がない返済となり、ローン破綻リスクを軽減できます。

 

年収 返済比率20%
500万円 約8.3万円
600万円 約10万円
700万円 約11.7万円
800万円 約13.3万円
900万円 約15万円
1,000万円 約16.7万円

 

返済比率20%だといくらまで借入できる?

毎月の返済額の目安が分かると、金融機関の提供しているシミュレーションツールより、借りられる金額を計算できます。

参考までにフラット35のシミュレーションツールを使って、年収400万円・返済比率20%ではいくらの借入ができるのかを調べてみました。

毎月返済額6.7万円・融資金利 1.37%・返済期間30年・元利均等返済
↓↓↓
借入可能額(概算)1,976万円

住宅金融支援機構 毎月の返済額から借入可能金額を計算 内ツールを使用

年収400万円だと、約1,980万円の住宅ローンが組めることが分かりました。

予算2,000万円での物件探しでは、対象地域や築年数にかなり制限がかかってきます。一定の自己資金を用意する・夫婦の両親から贈与を受けるなど上乗せ予算を確保できると、選択肢が広がるはずです。

直系尊属からの贈与は政府としても前向きな活用を促している分野で、一定額までは非課税扱いにできる特例があります。

2018年6月現在では最高1,200万円が対象となり、相続対策としても有効な選択肢の1つです。

「両親が元気な間は、相続の話題を出すのは気が引ける」という人も多いことから難しい問題ですが、マイホーム取得に際する特例制度があることは知っておくと良いでしょう。

返済比率20%超の住宅ローンを組む人は3割未満

実際に、先輩住宅ローン契約者がどのくらいの返済比率にしているかも見ておきます。

住宅金融支援機構が公表している民間住宅ローン利用者の実態調査によると、2017年度の契約者のうち、返済負担率20%超にした人の割合は28.5%。11~15%にする人が26.5%、16~20%にする人が24.7%と目立ちました。

10%以下とかなり余裕を持った利用に留める人も20.3%とかなり高めの比率になっています。

2017年度 第2回 住宅金融支援機構 民間住宅ローン利用者の実態調査p23 より作成

この結果からも、現実的な返済比率の目安として、住宅ローンの返済比率20%を意識している人が多い様子が読み取れます。

ある程度の余力を残しておくことで、将来的な金利上昇リスクにも対処しやすくなるもの。

とくに昨今は未曾有の低金利時代にあって、先高懸念がぬぐえない部分があります。10年、20年と長いスパンで考えなくてはいけない問題だからこそ、現実的な見通しとリスクヘッジが大切です。

返済比率から住宅ローンを考える時に気をつけたい3つのこと

ここまでの情報をまとめると、返済比率30~35%以内だったら審査通過できる可能性が高く、20%以内だったら余裕を持って住宅ローンを返済できることになります。

ただし、これはあくまで一般論です。住宅ローンの金額を考える時の注意点を意識しないで契約すると、後悔する結果となりかねません。

住宅購入予算を決める前に知っておきたい注意点を見ておきましょう。

1.住宅のランニングコストも考慮すること

マイホームを購入することで生じるコストは、住宅ローンの支払いだけではありません。マンションだったら、管理費・修繕積立金が必要です。

共有設備が整っている物件ほど費用が高くなりやすく、毎月の負担も重くなります。

一戸建てでも、将来的に発生するメンテナンスに備えて、同様の積み立てをするのが理想。屋根や外壁、内装など数年ごとに点検を受けたい箇所はたくさんあって、考えるよりずっと負担は重くなります。

マンション、一戸建てを問わず発生するコストとしては、固定資産税や都市計画税があげられます。

資産価値が高いマイホームを購入するほど毎年かかる税金も高くなり、家計を圧迫する要因の1つ。返済比率が高すぎるとこれらの出費に耐えきれず、返済が滞る事態になりかねません。

2.住宅ローン以外の借入も計算に含めること

住宅ローン以外にマイカーローンやカードローン、教育ローンなど借入をしている場合、合算で返済比率を計算します。

結婚資金や旅行資金をフリーローンでまかなった、奨学金の返済を行っているなど、ライフイベントに対する出費も対象です。

今の段階では借入がなくても、近いうちにお金を借りる予定があるようなら、あらかじめ計算に含めてください。

また、住宅ローンを組んだ後に予定外の借入を行うと、返済比率が想定より高くなり、家計がまわらなくなってしまうリスクもあります。

クレジットカードの買い物やキャッシング利用を比較的頻繁に行う人は、毎月どのくらいなら家計に影響が出にくいかを把握したうえ、計画的に活用しましょう。

3.平均値は参考程度にすること

同じ年収、年齢、職業、貯金額の2人がいたとしても、適切な住宅ローン金額は変わってきます。

その人の価値観によって、お金の使い方が変わるためです。「食費や旅行にまわすお金が少なくなったとしてもマイホームにこだわりたい」という人、「マイホームは欲しいが、すばらしい住まいでなくても良い。浮いた分は、子供のために使いたい」という人では、予想される収入をどこにまわすかが異なるのは当然ですよね。

都市部に住むか田舎に住むか、庭がある広い家に住みたいかコンパクトなマンションでも良いのかなど、家族の数だけ価値観があります。

返済比率の統計数値を目安として理解しておくことは大切ですが、平均値を意識するあまり、自分の価値観とは異なる住宅ローンを組む必要がありません。

夫婦でも価値観の食い違いが生じる可能性があるため、話し合って決めましょう。

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