住宅ローンの選び方を教えて?【大峰FP事務所・田中裕晃氏が回答】

執筆:FP 田中裕晃 氏

住宅購入を思い立った時、まず考えなければならないのは予算と資金計画です。手持ちの現預金だけで購入できる方は別として、一般的には住宅ローンを利用して資金調達するのではないでしょうか。

一口に住宅ローンと言っても、取扱う金融機関によって商品内容は様々ですし、借り入れ条件に関してもよく考えなければなりません。

金利は固定か変動かどちらがいい?返済期間は何年に設定しよう?団信の内容はどうなっている?など、事前に検討すべきことはたくさんあります。

そういう方のために、本稿では、住宅ローンを選ぶ際に押さえておくべきポイントについてご紹介します。

住宅ローンの基本的な仕組み

住宅ローンの基本的な仕組みはいたってシンプルです。まず最低限必要な要素として、次の用語を押さえて下さい。

・借り入れ金額
・返済期間
・利率
・金利の種別:固定金利、変動金利
・毎月返済額

理解しやすいように具体例を挙げましょう。

・借り入れ金額:1000万円
・返済期間:20年
・利率:1.00%
・金利の種別:固定金利

上記のうち、利率以外の部分は住宅ローンの利用者が任意に決める項目です。利率は審査内容によって金融機関が決めるものです。

簡単な原則だけご紹介しますと、「店頭利率(店頭、ホームページなどで公開されている利率)-優遇利率=適用利率」となります。

つまり、どれだけの優遇をもらえるかが重要となりますが、これは実際に審査結果を待たなければ確定しません。

金融機関や状況によっては、多少の交渉が可能な場合もあります。

それはさておき、このような借り入れ条件なら、毎月返済額は45,989円となります。

毎月返済額の計算は、金融機関などのホームページにあるローンシミュレーションを利用するのが便利です。

必要項目を入力すると、一瞬で返済額をはじき出すことが可能です。

この例では、1000万円借りて20年返済のプランにすると、20年間毎月約4万6千円返済しなければならない、ということになります。

これが住宅ローンの基本的な仕組みです。

応用として、ボーナス返済をするかどうかということがありますが、する場合は、年2回ボーナス月にボーナス払いで設定した金額に応じた返済額が上乗せされます。

例えば、先程の例のうち、200万円分をボーナス払いにすると、毎月返済額は36,791円、ボーナス月は92,082円の返済額になります。

通常の月の返済額が抑えられるというメリットはありますが、その分ボーナス時の負担は大きくなります。景気や業績によってボーナスの支給額が大きく変わるような方は、ボーナス払いの設定はオススメできません。

固定金利と変動金利

さて、住宅ローンの基本的な仕組みが分かったところで、次は金利の種別について考えましょう。

固定金利と変動金利はどっちがいい?これは住宅ローンを考えるうえで定番といってもいい問題です。

まず、それぞれについて簡単に特徴を見ていきましょう。

固定金利 指定の期間は金利が変わらない(10年固定なら10年間、など)。期間満了後は再度固定を選ぶか変動に切り替えるか選択することになる。全期間固定の商品もある。
変動金利 半年ごとに適用金利が見直される(返済額に反映されるのは5年ごと)。

 

同じタイミングで比較すると、変動金利よりも固定金利の方が高い利率が設定されます。ですので、利率だけを比較すると変動金利の方が有利なのです。

しかし、変動金利は文字通り変動しますので、数年のうちに当初の固定金利の利率を超えてしまうこともあります。

例えば、ローン契約時に固定金利が1.00%、変動金利が0.775%だったとしましょう。ここから金利が上昇し、3年後に変動金利が1.25%になっていることも考えられるのです。

それならそのとき固定金利に切り替えたらいいのではないか、と思う方もいるかもしれません。

しかし、その時には固定金利はきっと1.5%くらいになっているでしょう。もし当初から固定金利を選択していれば、1.00%の恩恵を受け続けることができます。

反対に金利が下降すれば、変動は0.675%になるかもしれません。この場合は変動の方が有利なままです。

整理すると、

固定金利:金利上昇局面では有利
変動金利:金利下降、あるいは停滞の局面では有利

となります。

しかし皆さん考えて下さい。これから先金利が上がるのか下がるのか、あるいは横ばいなのか、そんなことどうやって判断するのでしょうか。

20年、30年先はおろか、2、3年後のことだって確たるものはありません。経済の専門家であってもそんなことは予測不可能です。

ですので、固定か変動かを考える時に、丁半博打のような上ったらトク、下ったらトクなどという考え方はやめましょう。そうではなく、どちらが自身の家計管理・運営に合っているか、性格に合っているかで判断してください。

それぞれの金利タイプに合っているかどうかは、次の目安で考えられます。

<固定に向いている人>
 ・安全思考の人
 ・返済期間が長い人
 ・返済額が増えると生活設計に支障をきたす人

<変動に向いている人>
 ・返済期間が短い人
 ・返済額に余裕のある人

返済期間が短いと、それだけ金利変動のリスクが少なくなります。ですので、変動の方が有利になる可能性が高いと言えます。

また、返済額に余裕があると、多少の金利上昇リスクにも耐えられますので、変動金利でもいいかもしれません。

一方で、返済額が増えると経済的に困る、精神的にもよろしくない、という方は固定の方がいいかもしれません。

固定を選択して金利が下がったとしても、「ああ、変動にしとけばよかった」と嘆くことはあっても、家計が破綻することはありません。

重要なのは、どのような状況でも家計が破綻しないように考えることです。

なお、固定と変動を案分したミックス金利という商品を扱う金融機関もあります。それぞれのメリット、デメリットを薄めたような商品ですが、どちらかに割り切れない場合はこういった商品を選択肢に入れるのもいいでしょう。

返済期間はどうすべきか?

ローンの返済期間(借入期間)はローン利用者が任意で決めることです。

最長で35年、また完済時の年齢が75~80歳(金融機関による)という縛りがありますので、その範囲中で選択する必要があります。30歳の人なら35年フルで組むこともできますし、50歳なら25~30年が限度でしょう。

注意していただきたいのは、最後まできっちり返済できるかどうかということです。仮に完済を75歳に設定したとして、定年が65歳なら、ラスト10年間は年金収入か貯蓄から返済することになります。

貯蓄が十分ある、年金以外の収入源がある、返済額が少額で年金収入だけでも十分、などという方は心配ないかもしれません。

また、退職金で一括返済する、という場合も大丈夫でしょう。

いずれにしても、完済までのイメージが出来ているのならいいのですが、毎月の返済額を抑えるために、無計画に長期の返済期間を設定するのはやめた方がいいでしょう。

ここからは応用編ですが、きっちりと家計管理できる人ならあえて35年で組むことをオススメします。例えば、次の例をご覧ください。

契約者:45歳、定年は65歳の予定、退職金1000万円予定
ローンの内容:借り入れ金額3000万円、20年返済、利率1%固定

この場合、毎月返済額は137,968円となります。

一方で、35年返済にした場合、毎月返済額は84,685円になります。その差額は約5.3万円。この差額分を10年間貯蓄すると、約636万円。

もしこの方にお子さんがいて、ちょうど10年後に教育資金が不足した場合、この636万円を教育費にあてることができます。教育費に限らず、なんらかの不測の事態で経済的に困窮したときもそうです。

経済的な不安材料がない場合は、この636万円を繰り上げ返済することもできます。すると、このケースでは約8年の期間短縮が可能です。その後も同じように繰り上げ返済していけば、20年以内で返済することも十分可能です。

この方法のメリットとして、

・当初元本の減りが遅いので、住宅ローン減税の恩恵を多く受けられる
・余剰資金を貯蓄することで、家計に柔軟性が出てくる

という点が挙げられるでしょう。

反対に、家計管理が苦手な方にはオススメできません。ローン返済が減ったら減った分だけ浪費してしまうので、とても危険です。

この点は自身の性格も考えたうえで検討してください。

住宅ローンの諸費用と商品比較

さて、住宅ローンを考えるうえで基本的なことはお分かりいただけたのではないでしょうか。

ここまでのお話は、どこの金融機関から借りる場合でも共通したことについてでした。ここからは、金融機関によって違うポイントをご紹介します。

まずはその前に、住宅ローンを借りる際に必要な諸経費について考えましょう。ローン契約(正確には、「金銭消費貸借契約」といいます)には次のように費用が掛かります。

住宅ローンを借りる際に必要な諸経費

・抵当権設定費用
・契約書貼付用の印紙代
・ローン手数料など
・ローン保証料

それぞれの概要を以下でご説明しますが、手数料と保証料は金融機関によって大きく差が出る部分ですので注意してください。

抵当権設定費用

ローンの担保として購入物件に抵当権を設定しますので、抵当権設定にかかる登録免許税と司法書士手数料がかかります。

物件購入時に所有権移転の登記と合わせて行いますので、購入諸経費の中に含まれることが一般的です。

借り入れ金額が同じであれば費用も同じですので(司法書士手数料は司法書士によって異なりますが)、金融機関選びに影響する項目ではありません。

契約書貼付用の印紙代

借り入れ金額によってあらかじめ金額が決められています(1000万円を超え5000万円以下であれば2万円、など)。これも金融機関によって左右されることはありません。

ローン手数料など

ローン手数料、事務手数料、取扱手数料など名目は様々ですが、要するに金融機関に支払う手数料のことを指します。次項でご紹介します「保証料」が不要な住宅ローンの場合、一般的にはこの手数料が高額になります。

手数料は高いもので借り入れ額の2%(消費税別)ですので、3000万円借りるとすると税抜き60万円かかることになります。

一方で、事務手数料は3~5万円、その代わり保証料も掛かる、というケースもあります。

ローン保証料

保証会社に支払う保証料が必要な場合もあります。保証料は一括払いか分割払いか選択でき、前者であれば借入額の2%程度、後者であればローン金利に0.2~0.4%上乗せということになります。

大雑把に言うと、ネット系の銀行は保証料なし、手数料高め、店舗型の銀行は保証料あり、手数料は3~5万円という傾向があります。

さてこのように、手数料や保証料というのは金融機関によってまちまちです。ローン商品の説明書にはこういった諸費用についてもきっちり書かれていますので(小さくて読みにくいとしても)、商品の比較をするときは重要なポイントとしてよくご覧ください。

どうしても金利に目が行きがちですが、場合によっては金利以上にトータルコストに影響するかもしれません。

団体信用生命保険について

団体信用生命保険(団信)という言葉はご存知でしょうか。ローン契約者が返済中に万一死亡した場合、残りのローンを保険で支払うという仕組みです。

残された家族が安心して家に住み続けることができるように、というのが目的の保険です。

民間の金融機関のローン商品は団信への加入が必須となりますが、団信保険料は金利に含まれていますので、別途必要ということはありません。ただし、保障内容を追加、拡大する場合はその分の保険料が上乗せされます。

住宅金融支援機構のフラット35の場合、団信加入が任意となりますので、加入しない場合はその分金利が安くなる仕組みです。

基本的には団信には加入すべきですが、健康上の理由等で団信が利用できない場合は、フラット35の団信なしプランの利用をご検討ください。

さて、団信の保障内容に関して言うと、金融機関によって指定の保険会社や保険商品が違うことから、わずかながらの差異があります。

基本的な保障項目は、死亡、高度障害、余命6ヶ月と診断された場合(リビングニーズ)ですが、ガンと診断された場合(上皮内など対象外のガンもあります)も保障する商品もあれば、3大疾病(ガン、急性心筋梗塞、脳卒中)を保障するもの、8大疾病を保障するものなどもあります。

追加費用に関しても、ガンまでは追加保障なし、3大疾病は金利に0.15%上乗せ、など、これも金融機関によって異なります。

ローン商品を比較する際は団信の保障内容もよく検討し、あわせて生命保険の見直しも行うことで、家計全体のバランスを整えることができます。見落とされがちですが、これも非常に重要なポイントなのです。

住宅ローンを選ぶうえで大切なこと

以上、住宅ローンの特徴や注意点について見てきました。

具体的なローン商品を選択するにあたっては、利率などの表面的な部分だけでなく、諸費用なども含めたトータルコストで検討することが必要です。

また、商品選択以上に重要なのは、どういう条件でローンを組むかということです。目先の損得のみにとらわれず、長いスパンで考えなければなりません。

家計を逼迫、破綻させることなく、無事に完済することが一番重要なのです。その点を忘れることなく、自分に合ったローン商品を検討してみてください。

<執筆者>「田中 裕晃 氏」
ファイナンシャルプランナー田中 裕晃 氏
株式会社大峰 代表取締役
〒606-8007
京都市左京区山端壱町田町8番地49
075-706-0800

京都市出身
京都府立大学 文学部史学科卒業
京都府立大学大学院 文学研究科史学専攻 博士前期課程修了(文学修士(歴史学))

<保有資格>
CFP(日本FP協会会員)
1級ファイナンシャルプランニング技能士
公認不動産コンサルティングマスター
宅地建物取引士
マンション管理士
住宅ローンアドバイザー
賃貸不動産経営管理士
不動産キャリアパーソン
損害保険資格
証券外務員2種
学芸員資格
京都検定2級
なまはげ伝導士 他

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