ペアローンのメリットとデメリット 夫婦で住宅ローンに上手に向き合うには?【内山FP総合事務所 代表が回答】

執筆:内山 貴博 氏

ペアローンのメリットとデメリット 夫婦で住宅ローンに上手に向き合うには?【内山FP総合事務所 代表が回答】

ダイバーシティ(多様性)という言葉が頻繁に使われる昨今、生き方や働き方など固定概念に縛られず、数多くあるオプションの中から、1つ1つ後悔しない選択ができる地合いが整っているように感じています。

言い換えれば、様々な情報が飛び交う中で、しっかり最新のトレンドをキャッチし、自身の生活水準を保つ、または高めていく工夫も、求められそうです。

住環境についても同様で、それぞれのライフスタイル、価値観にマッチした意思決定をしていきたいですね。

その中で、賃貸ではなく住宅を購入するということになれば、その先には、多くの人にとって住宅ローンの上手な利用も重要なテーマとなってきます。

この住宅ローンもまた様々な選択肢がありますので最適なものを選んでほしいところです。

今回取り上げますペアローンも住宅ローンの一種で、共働き夫婦などには最適なローンの1つとなりそうです。

ペアローンとは

ペアローンとは1つの物件に対して、夫婦がそれぞれ住宅ローンの契約をし、そしてお互いにそれぞれのローンの連帯保証人になる借入方法です。ここでメリットとデメリットに分けて説明します。

ペアローンのメリット

・借入可能額が増える
・夫婦どちらも住宅ローン控除を使える
・夫婦どちらも団体信用生命保険に加入できる

夫婦それぞれが住宅ローンの契約者となるため、それぞれの収入を合算し借入可能額を算出することになるため、より多くの借入が可能となります。

借入金額を増やすことができるということは、つまり、購入できる物件も増えることになります。

仮に夫だけで住宅ローンを組む場合はあきらめなければならなかった都心の高級マンションも候補となるかもしれません。

まさに2人のライフスタイルに合った物件をより選びやすくなります。

そして、住宅ローン減税も夫婦どちらも適用されます。住宅ローン減税は2019年10月の消費増税後に適用年数が3年伸び、ローン借入開始から13年間住宅ローン残高に応じて減税を受けることができます。

減税対象の残高には上限があるため、1人であれば減税対象外になる借入部分も、2人でローンを組むことで減税対象になる場合もあり、効率的です。

また、団体信用生命保険(通称「団信」)もそれぞれのローンに適用できます。

団信は住宅ローンの契約者が死亡した場合、残高を清算するための生命保険で、通常、ローン契約時に加入しており、保険料は金利の中に含まれています。

ローン契約後は「残高分の生命保険に加入している」ことと同じこととなり、万が一の場合、遺族はローン残高を払う必要がないのです。ペアローンの場合、仮に夫が死亡すると、団信のおかげで夫のローン残高を妻が代わりに払い続ける必要はありません。

ただし、これは状況次第ではデメリットとなる場合も。以下で詳しく見ていきましょう。

ペアローンのデメリット

・事務手数料など費用が2本分に
・一方が失業、病気など働けなくなった場合のリスク
・どちらかが亡くなった場合、もう片方のローンは残る

ペアローンの場合、夫婦それぞれがローン契約を行うことになるため、1本のローン契約と比べると収入印紙代や登記手数料といった手数料が2本分生じるため、初期費用が高くなるのが大きなデメリットの1つです。

そして夫婦それぞれが一定の収入を得ながら長期的に返済していくことを前提としているため、病気・出産・失業・倒産などによって長期気に働けなくなった場合などはローン返済が難しくなることも考えられます。

契約者の収入が途切れると返済が難しくなるのはペアローンに限ったことではありませんが、ペアローンの場合はそういったリスクがより高くなるため、事前に入念なライフプラン、キャリアプラン(転職や独立開業の可能性など)を話し合っておくとよいでしょう。

また、団信についてはそれぞれに適用されるということでメリットとして紹介しましたが、仮に夫が亡くなった場合で、ペアローンではなく夫のみが住宅ローンの契約者であれば、一切ローン残高が残らないところ、ペアローンであれば妻の分は当然残ったままとなります。

大切なパートナーを失い、大変な状況の中、自分の分のローンを返済しなければならないのです。結果論であり、“たられば”となりますが、団信についてはメリット・デメリットどちらの側面も持ち合わせているといえるでしょう。

連帯債務・連帯保証との違い

連帯債務と連帯保証、どちらもよく似た表現です。

夫婦の収入を合算するという点ではペアローンと同様ですが、連帯債務と連帯保証はどちらも住宅ローンが1本となります。その点がペアローンとは大きく異なります。

連帯債務とは

簡単にいうと、1つの住宅ローンを2人で協力して一緒に返済していく形態です。住宅ローンは1本であるため、夫または妻がローン契約の主体者となりますが、実態は夫婦それぞれで返済するといった具体です。

ローンが1本であるため、例えば夫と妻、7:3というようにそれぞれの割合に応じて返済をしていくことになります。収入額などでその割合を決めることになります。

夫婦それぞれの残高を把握できることもあり、夫婦どちらも住宅ローン控除を利用することができます。

連帯債務対応の金融機関は限られるため、事前に確認しておきたいところです。

そして通常、団信は主たる契約者のみということになるため、夫が契約者の場合で妻が死亡すると、残高は全額残ることになります。この点はペアローンとの大きな違いとなります。

なお、フラット35で連帯債務を利用する場合、デュエット(夫婦連生団信)を利用することができるため、夫婦どちらも団信の対象にすることができます。

1人分の約1.56倍の特約料で夫婦2人分の保障が受けられます。仮に夫が死亡した場合、夫の返済割合にかかわらず、全額弁済となるため、フラット35で連帯債務を利用する人は積極的に検討してください。

連帯保証人とは

住宅ローンは通常、保証人は不要です。保証料を払い、保証会社を通して住宅ローン契約を行うためです。

そんな中、連帯保証にするケースは「夫のみの収入では希望借入額に達しない。」といったケースです。妻が連帯保証人になることで夫婦2人の収入合算で借入を行うことができるため、借入額を増やすことができます。

この場合、あくまで妻は「2番手として控えている」ような状況であるため、妻は住宅ローン控除や団信の対象にはなりません。

まとめると以下のようになります。

ペアローン 連帯債務 連帯保証
団体信用生命保険 夫と妻どちらも 夫のみ(注) 夫のみ
住宅ローン控除
(住宅ローン減税)
夫と妻どちらも 夫と妻どちらも 夫のみ
所有権
(名義)
夫と妻どちらも
(共有名義)
夫と妻どちらも
(共有名義)
夫のみ
事務手数料 2回分 1回分 1回分

※連帯債務・連帯保証の契約者は夫とします。
(注)フラット35の場合を除く

男女共同参画白書(内閣府)によると年々共働き夫婦の数は増えており、現在は「夫が働き妻は専業主婦」という夫婦の2倍近い割合を占めています。(以下図表参照)

このような状況を鑑みますと、今後もペアローンを検討する人が増えることが想定されます。

<共働き世帯数の推移>
共働き世帯数の推移<出所>:内閣府 男女共同参画白書(概要版) 平成30年版

筆者がFPとして相談に応じていますと、共働き夫婦の場合、家計自体を夫と妻、それぞれが別の財布で管理するというケースも最近は見受けられます。

従来は2人の収入を1つにまとめ、ご主人はお小遣い制といったケースが多い印象でしたが、お互いの価値観を大切にしながら、それぞれが得る収入の中で、自分で使いたい金額や貯蓄する金額を決め、そして支出は役割分担をしながら管理するというスタイルです。

このよう夫婦にとってはペアローンは最適な住宅ローンとなるでしょう。

どちらも正社員で働いているような、いわゆるWインカムという世帯は経済的に余裕がある世帯も多いです。ただし、余裕があるからといって油断しないでください。

つい、住宅も高額になりがちですし、日々の支出も多めという場合も。2人合わせた収入が多いがゆえに細かい管理までできていないと、のちのち大変なことにということも想定されます。

ペアローンをやや厳しい切り口でみると「夫婦それぞれが一定の借金を背負う」わけです。

ペアローンに限らず、住宅ローンを組む人に対して全般的にいえることですが、「理想の家を追求しながらもなるべく無理のない範囲」を目指してください。

理想を追求することと無理をしないことは相反するようですが、住宅以外の様々な支出、負担している税金や社会保険料、それから投資を含めた貯蓄方法など家計を取り巻くすべての要素を見直すことで、無理のない範囲で理想を追求できますよ。

住宅購入を検討する機会に、ぜひ一度家計全般の見直しも行うことをおすすめします。

<執筆者> 内山 貴博
内山FP総合事務所株式会社 内山 貴博

内山FP総合事務所株式会社 代表取締役
ファイナンシャル・プランナー(CFP®、1級FP技能士)
MBA(九州大学大学院経済学府 経営修士課程修了)
九州共立大学経済学部非常勤講師

証券会社の本社部門に勤務後、独立。FP相談業務を中心に、セミナー、金融機関研修、FPや証券外務員の資格対策講座などを担当。経営者向けの経営と家計を融合したFP業務や、日本での生活やお金のことに疑問を抱える外国人に向けFPコンサルティング(英語)を開始するなど、FPとして貢献できることを日々模索中。

サイトURL http://ufp.webin.jp/

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