定年退職後が不安!40代から準備できることはある?

執筆:田中 嘉理 氏


定年退職後が不安!40代から準備できることはある?

この記事はタイトルの通り主に定年退職後が不安な40代のサラリーマン向けではありますが、全世代のサラリーマン、及びサラリーマン以外の方々にも参考になる内容です。

どなた様もご一読ください。

退職金と年金で悠々自適の隠居生活?幻想です

終身雇用の中で定年退職し、退職後は退職金と年金で悠々自適の隠居生活を過ごすというサラリーマンの老後は遠い昔の夢物語になってしまいました。

定年退職まで働き続けさえすれば何とかなるという幻想をいまだに持ち続けている人は頭の中を切り替えるべきです。

正社員ばかり働いていた職場は契約社員、派遣社員、パート等の様々な待遇の人々が混在しています。

一番身分が保障されている正社員でさえ収入のピークは40代であとは下がり続け、役職定年や再雇用でさらに下がります。

リストラや早期退職などで定年まで働き続けられるのかも分かりません。

定年まで働き続け続けられたとしても退職金は減る一方、老後に一番当てにしている年金も減るばかりで、「年金老後2000万円不足問題」等で知った年金だけでは生活できないという不安もあります。

人生100年時代と言って、65歳の定年を迎え、喜べるどころか、残り30年以上もお金が足りるのかという生活不安ばかり募るというのが現実だ、という気持ちはありませんか?

日本でもベストセラーになった「ライフシフト」

日本でもベストセラーになった「ライフシフト」では人生100年時代には既存の「教育⇒仕事⇒引退という3ステージから新しいマルチステージに移る(シフトする)」としています。

同世代が一斉行進する時代は終わり、多くの人が転身を重ね、それぞれが自分の選んだ複数のキャリアを経験するマルチステージの人生に移るということです。

人生の選択の幅が広がったということですが、選択しなければならない、選択するためのスキルを磨き、新たな人生を切り開く努力をしなければならないということでもあるのです。

サラリーマンはいい会社にさえ入ればあとは頑張って仕事すれば他のことはあまり考えなくてもよかった時代は終わったことを覚悟しなければなりません。

ライフシフトによればマルチステージの新しいステージは3つあり、1つ目は「エクスプローラー」で、日常生活から離れ、旅や新たな出会いによって既存の価値観を壊し、自分を再発見するステージです。

2つ目は組織から独立して生産的な活動を行う「インディペンデント・プロデユ―サー」のステージです。

永続的、本格的な企業をつくることではなく、一時的なビジネスを行うステージで、ビジネスの活動自体を目的にしています。やりがいや人とのつながりを重視しています。

最後の3つ目のステージは異なる種類の活動を同時に行う「ポートフォリオ・ワーカー」のステージです。

さまざまな可能性を探索すること、やりがいや人とのつながりなどの複数の目的で活動します。

スキルと人的ネットワークの土台が確立できている人にとって有効なステージと書かれています。

以上の様なステージに移行するための重要な要素も同書では紹介しています。

前述しました様に人生100年時代は主体的に自分が選択していかなければなりません。

そのために「自分が何者か」ということを問い続け、アイデンティティを見つめなければなりません。

また、ライフシフトでは人的ネットワークである変身資産、肉体的・精神的資産である活力資産、スキルや知識といった仕事に必要な生産性資産の3つの無形資産が転身(シフト)するには不可欠であると言っています。

ライフシフトの反響は日本でも大きく、安倍政権が目玉政策に掲げる「人づくり革命」の一環で「人生100年時代構想会議」が設置されましたが、ライフシフトの著者の一人である英ロンドンビジネススクール教授のリンダ・グラッドン氏が有識者議員に起用されました。

最長寿国であるがゆえに悩ましい問題を多く抱える日本政府がライフシフトに興味を持ち、救いを求めるのは当然の流れのように思えます。

その流れの延長上に2018年に政府は働き方改革の掛け声の下で副業促進に大きくかじを切りました。

2018年1月に副業・兼業の促進に関するガイドラインを発表しました。また、モデル就業規則を改定し、労働者の遵守事項の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」という規定を削除し、副業・兼業について規定を新設しました。

個人のアンケートなどでは副業をやってみたいという人は多く、増えているということですが、企業で副業を容認しているのは2割程度で約8割が禁止しています。

前述のガイドラインでは多くの企業が副業を認めていない現状とその理由を述べながらも副業・兼業の個人だけでなく企業のメリットを箇条書きにしています。

企業の対応という項目では「原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である。」と書かれています。

政府は副業・兼業を認めることの義務化まではできませんでしたが、働き方改革関連法により労働時間が制限された結果収入が減少する労働者にとっては副業・兼業のニーズは高まり、企業は人材確保のためにも副業・兼業を認める企業が増えてくると見られています。

もっと根本的なことを言えば人生100年時代を迎え、老後の生活費用を年金や医療保険、介護保険等の社会保障だけで賄うことはできません。政府は国民に自助努力を求めているのです。

各々がライフシフトできる環境を実現するために副業・兼業を容認する潮流が今後は早まるでしょう。

まだまだ始まったばかりというのが現状ですが、実際に副業という条件で自治体や企業が採用している事例も出てきています。

また、副業まではしなくてもライフシフトするためにリカレント(学び直し)をしている人は今でも多くいます。その学びの場は専門スクール、大学院、オンライン講座と多岐にわたっています。

40代サラリーマンのあなたは定年後どうする?

以上、人生100年時代を迎える社会や個人の生き方、特に働き方の大きな流れの変化を見てきましたが、定年退職後が不安な40代のサラリーマンのあなたはどうされますか?

ライフシフトしますか?ライフシフトしなくても定年まで働き続ければ長い老後を安心して過ごせる経済力はありますか?

人生は100年あるので65歳退職後にライフシフトの準備を始めればいいと考えていませんか?

その考えは間違っています。ライフシフトするには前述したように肉体的・精神的資産である活力資産が必要だからです。

65歳過ぎてからいつまで活力資産を持ち続けられますか?ライフシフトを成し遂げる時間がありますか?

ここでそのライフシフトを成し遂げる時間を考えるに際して参考になるデータを紹介しましょう。

それは書籍「東大がつくった高齢社会の教科書」(東京大学出版会)の中のデータです。

「年をとると健康状態がどのように変化していくのか」、その実態をとらえた研究成果です。

これは、日本の高齢者約6000人を1987年から約30年にわたって追跡して、「加齢に伴う生活の自立度の変化」を明らかにしたものです。

それを明らかにした図表は、完全な「自立」の状態を3点、「手段的日常生活動作」に援助が必要な状態を2点、「基本的&手段的日常生活動作」に援助が必要な状態を1点と点数付けすると、点数下がるに従い自立度が下がり、生活において他人の援助が必要な割合が増えていきます。0点は「死亡」を表します。
図表は点数を縦軸、年齢を横軸で表しています。

その図表によると男性では3つのパターンが見られます。約2割(19.0%)の男性は70歳になる前に健康を損ねて死亡するか、重度の介助が必要になってしまいます。その原因の多くは生活習慣病です。他方、約1割(10.9%)の人は80歳、90歳以上も元気なまま自立を維持できています。そして大多数の約7割(70.1%)は75歳から徐々に自立度を下げていきます。

一方、女性については、2つのパターンが見られます。早期に自立度を下げてしまうのは約1割(12.1%)で、約9割(約87.9%)の女性は男性の7割の方と同様に70代半ばから緩やかに自立度を下げていくことが確認されます。

男性は心臓病や脳卒中などの生活習慣病によって介助が必要になってしまう人が比較的多いですが、女性はもっぱら骨や筋力の衰えによる運動機能の低下により、自立度を下げてしまう人が多い傾向があります。

なお、男性に見られる11%の自立度維持パターンが女性には解析結果として表出していませんが、これは「移動」能力の低下が男性に比べて大きいことが影響しています。女性は男性に比べて総じて骨や筋力が弱いことが原因です。

以上が研究結果です。

参考に研究が始まった1987年当時の65歳における平均余命は男性16.12歳、女性19.67歳です。

以上の研究結果を見て、どのように思われましたか?

60代前半の男性である私としては今後の人生によりリアリティー感を持って覚悟することができました。

私の周りでは親をはじめとして高齢者が実際に介護や死に直面している姿を見ています。

また、FPとして男性の健康寿命は平均して約70歳等のデータや介護実体などの知識はあります。

しかし、周りやマスコミに出る方々の中には90歳を迎えてもかくしゃくとした方がおられるので自分もなんとなく、まだ、大丈夫ではないかと楽観視しているところがありました。

しかし、そのような方々は男性ではほんの1割程度だという実態を突きつけられると自分は恐らく多数派の7割に入るだろうと自覚することができました。そして、その認識で今後のライフプランを再構築しなければならないという覚悟が高まりました。

40代のあなたはこの研究結果を見て65歳を過ぎてからライフシフトの準備を始めても手遅れではないと思われましたか?

定年退職後にどのような生き方をするのか?

ライフシフトするには前述しました様に、まず、自分自身を見つめ今後どのような生き方をするかを選択、決断しなければなりません。

決断するためにはエクスプローラーになって日常生活から離れて自分探しの旅に出なければならないかもしれません。

それだけのために数年を費やすかもしれません。

ライフシフトによればエクスプローラーに適した時期は3つあり、それは18歳から30歳くらい、40代半ば、そして70歳から80歳くらいと書かれてあります。

しかし、 70歳から80歳のエクスプローラーの目的は長寿のリスクにおびえる現在のライフスタイルを見直して活力を回復することです。新たな仕事を見つけて収入を得ることではありません。

経済的に何の心配もなければそれは可能でしょうが、やりがいを感じ、かつ、収入を得られるインディペンデント・プロデュ―サーになるには65歳からでは遅いと私は考えています。

少なくとも65歳の定年までにはインディペンデント・プロデュ―サーになるためのスキルをリカレントやポートフォリオ・ワーカーとして副業をして習得し、人脈も築き、準備が完了した段階までは進んでいなければならないのではないでしょうか。

そのためには40代から準備を始めた方がいいのではないでしょうか。

20代、30代の内は勤務している会社でわき目も振らず働いて、スキルを高め、誰にも負けない専門性を獲得する時期ではないでしょうか。

また、ライフシフトするには副業、リカレント、人脈獲得のために活動しなければなりません。

活動する時間は勤務後や休日に限られ、家族と過ごす時間もありますので限られた時間になります。その上、ライフシフトするのに必要な準備時間も個人差があり、分かりません。

それで、できれば40代からライフシフトの準備を始めるのが最適ではないかと思われるのです。また、体力、気力面からもそう思えるのです。

まず、何を目指してライフシフトするかを選択、決断しなければなりません。これに要する時間は個人差があります。

目指すものがはっきりしていて強い意志でそれを目指そうとしている人だったら時間はかかりません。一方、ライフシフトはしたいが、自分のやりたいことが分からない人は自分探しから始めなければならないので時間がかかります。

そんな人はライフシフトによるとエクスプローラーになって自分探しの旅に出るということでしょうが、現実問題は毎日出社して仕事しなければなりません。そんな方には自分の棚卸し作業をお勧めします。

自分の棚卸しとは自分の幼いころからの経歴や経験、習得してきた知識やスキル・資格、そして、やりたい、やりたかったこと等を思いつくままに書き出していくことで自分はどんなタイプの人間なのか、どんな事に向いているのか、どんなことをやりたいのか、等を探っていく作業です。

疑似的にエクスプローラーの旅をするとも言えるのかもしれません。この作業は転職などの際にも行う作業で、やり方についてはネットなどにも紹介されています。

目的が決まったらそれを達成するために何をいつまでに行うかというタイムスケジュールを作成します。

目標を達成するためには資格が必要なら資格をいつ取る、そのためにはどれくらいの期間学校に通う、そのための費用はどうする、等を具体的に計画表にします。顧客を獲得するために団体に所属して活動すること等も必要かもしれません。

目標を達成するためにマンダラチャート

私は目標を達成するためにマンダラチャートの活用をお勧めします。

メジャーリーガ―の大谷翔平が使ったことで話題となったツールです。9×9のマスの真ん中に目標を書きます。

大谷選手が花巻東高校1年時に作成したマンダラチャートにはここに「ドラ1、8球団」と書かれていました。「8球団からドラフト1位指名」ということです。

そして、回りの8マスに達成するために必要な要素を書きます。大谷選手の場合「体づくり」「スピード160km/h」などがありました。

次にそれら8つの要素を外側の3×3マス8つの真ん中に書き、同様にその要素を達成するための努力目標を記入します。

大谷選手の場合「スピード160km/h」の要素の努力目標の8つの内の1つは「下肢の強化」でした。

マンダラチャートについてはネットに多くの情報が掲載され、本も発行されていますので調べてみてください。

次は目標を達成するための経済的な裏付けの検証です。

この目標を達成することで家計は破綻しないか、達成する過程での費用は賄えるか、等を確認しなければなりません。

目標を達成するためのリカレント費用等のお金が無ければ目標は達成できないし、いったんは目標を達成したとしても生活できなければ目標を遂行続けられません。

お金もないのに定年後は好きなことをやりたいということは通用しません。

それを検証するツールがキャッシュフロー表です。

キャッシュフロー表の活用

インターネットで「キャッシュフロー表」と検索すれば無料ソフトがたくさん出てきます。その中で自分に合ったものを選んでください。

家族の年齢やイベント(大学入学等)、収入項目、支出項目等をこの先30年後や40年後までの毎年分入力すると毎年の年間収支や貯蓄残高が出て、毎年の収支の変化が見えます。

将来の教育費等の具体的な数字が分からない場合は統計の平均値等を暫定的に入力します。そんな作業をすると将来数十年にわたる家計の収支を「見える化」することができます。

毎年見直しをしてより具体的な数字を入力していけば将来像がより鮮明になってきます。
ポイントはいつの時点で貯蓄残高がマイナスになるか、を確認することです。

貯蓄残高が一時的にマイナスになる、または、途中で尽きてしまうとなれば対策が必要です。

自分の、または家族の何歳までのキャッシュフロー表を作成するかですが、通常は平均余命を足した年齢です。しかし、人生100年時代ということで100歳までのものを作成してみるのもいいでしょう。

このキャッシュフロー表に目標を達成するための費用、目標達成後に得られる収入を加えて、そして検証します。

それで問題があるようなら支出を減らすか収入を増やす家計改善のための対策を講じる必要があります。この対策についてはネットや書籍に氾濫しています。

そこまで実行したらそれ以降は目標に向けて行動しながら自分の棚卸資料、マンダラチャート、キャッシュフロー表を随時見直して、問題はないか、自分の気持ちは変わっていないか、等を確認、検証します。

そして、問題や変化があったら修正するという作業を繰り返し、目標に向けて邁進します。

定年退職後のために40代から準備できること【まとめ】

以上は65歳定年退職予定の40代からライフシフトの準備を始める方を標準パターンとして書いてきました。

自分はこの標準パターンに当てはまらないという方は自分を基準に調整してください。

定年退職が65歳でなく60歳や現在50代というサラリーマンの方々はライフシフトの準備の速度を上げるか準備に充てる時間を増やしてください。

フリーランスだがサラリーマンになりたいという方はリカレントして中途採用されることを目指してください。

転職市場で最も需要があるのは、ITを使いこなせる人材とのことです。データ分析だと初心者や文科系出身の方でも習得は可能とのことです。

ライフシフトはそれぞれの個性を活かすための手段です。柔軟に考えましょう。

繰り返し言いますが、選択、決断するのは皆さんご自身です。私はこの記事で単に情報を提供しただけです。それが皆様の「生きるヒント」になれば本望です。

皆様の今後の人生がよりよくなることに少しでもお役に立つことができましたら幸いです。

<執筆者> 田中 嘉理(よしみち) 氏
ビジネス&ライフサポート代表 田中 嘉理 氏
FP事務所 ビジネス&ライフサポート代表
URL:http://yosimiti.jp/

<経歴>
早稲田大学卒業後大手損害保険会社に30年間勤務し、その後地元福岡にU ターンして大手来店型保険ショップ本社に3年間勤務する。独立後も生損保事業者の団体に所属しながら保険事業者に対してコンサルタント等を行っている。FPとしてはセミナーや相談業務等を行いながら消費者のニーズを吸い取り、保険を販売しない中立的な立場で保険事業者と消費者の最良の関係を築くことを目標に活動している。

<保有資格>
ファイナンシャルプランナー(CFP)、1級FP技能士、宅地建物取引士、証券外務員一種。

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