消費税増税で高まるシニア税理士・会計人材のニーズ~株式会社シニアジョブ インタビュー

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株式会社シニアジョブ 阿部博司氏(営業部シニアマネージャー)株式会社シニアジョブ 阿部博司氏(営業部シニアマネージャー)

今、多くのビジネスパーソンが、定年後にどのように働いたらいいかを悩んでいる。ひと昔前までは、60歳の時点で定年を迎えたら会社から花束をもらって楽隠居というパターンが多かった。

しかし超高齢社会に突入した日本では、さらにその後も働き続ける「1億総活躍社会」へ変貌しようとしており、時代は大きく変化した。税理士や会計人材においても事情は同じだ。
特に、2019年10月の消費増税を受けて税制業務が複雑化したこともあり、経験値の高いシニア税理士や会計人材のニーズが高まっているのだ。

シニア向け人材サービスを提供している株式会社シニアジョブの安彦守人氏(広報部部長)、阿部博司氏(営業部第1課シニアマネージャー)にお話を伺った。

高齢化時代で花開くシニア向け人材サービス

御社の事業を紹介してください。

安彦守人氏(以下、安彦)  「シニアジョブ」という社名の通りに、シニア向け人材サービスを提供しています。

設立は2014年8月、現在6期目です。代表の中島康恵は学生時代にIT事業を立ち上げるなどしましたが、日本が世界でも類を見ない超高齢化社会に突入するという社会課題に気づき、シニアに向けて事業をシフトしました。

5年後の2025年には、日本の50歳以上人口は総人口の50%に到達する見込みになっています。

その50歳以上のシニアの方々に、働く喜びや生きがいを提供し、高齢者総活躍社会を実現させる唯一の企業として成長することが、シニアジョブのミッションです。

具体的には人材派遣と人材紹介という2つの方法で人材を供給しています。

派遣社員を含めると社員数は56名です。
28歳の代表を含めて若い会社で、平均年齢は25歳です。

昨年の実績ベースでは、派遣登録や人材のマッチングは約320名。うち派遣が約40名、紹介が約280名です。営業エリアは全国です。

登録者の年齢層は?

安彦 40代が8%、50代が35%、60代が42%、70代が15%です。キャリアも20年以上が44%、30年以上が23%を占めています。

そういった方たちを建設、会計、医療、自動車整備等の業界に派遣、あるいは紹介しています。

その中でも、今日は税理士の話に特化してお話ししますが、シニアジョブは、創業当初、税理士事務所向けのシステムを提供していたこともあり、会計関連人材に強みと自信を持っています。

なぜシニア人材の人気が高まっているのか?

シニア人材は人気があるのでしょうか。

安彦 需要はどんどん高まっています。建設であれば施工管理の有資格者、会計事務所であれば税理士・会計士の有資格者、自動車整備士などいずれも伸びています。

10月1日に、シニア医療事務スタッフの人材紹介サービスを本格スタートさせたのですが、有資格者でなくともニーズがあり、登録も増えています。

シニア税理士・会計人材のニーズも高まっているとか。

阿部博司氏(以下、阿部) 会計系の人材ニーズが高まっていくのは、例年、個人事業主の確定申告の業務が増えてくる春先に向けた人員補充を行う秋口です。

その次は、確定申告が終了した後、上場企業や一般企業の決算時期(4月~6月)に向けた人員補充を行う1月〜4月で、マッチングも増えていきます。

今年は消費増税のあおりを受けて、税理士事務所は例年よりも忙しくなりますので、会計人材の獲得を急ぐ方向で動いており、シニア税理士や会計人材の募集や供給を強化することにしました。

11月から本格的に増税対応の業務が発生しますので、今まさに入所を急ぐ事務所も多いです。エリア的には、千葉、西東京など個人事業主をクライアントにしている税理士事務所にニーズが多いという印象があります。

シニア税理士や会計人材は、これまでの税制度変更を何度も経験して慣れている方が多いと思われます。今回の消費税増税では食料品などに軽減税率が導入され、仕入税額控除でも軽減税率と標準税率が混在しており、帳簿上ではかなり複雑な計算を要求されます。

さらにキャッシュレス決済のポイント還元に関しても企業会計業務は非常に煩雑なものとなります。

このため仕入れを行う小売業では多くの会計業務が発生し、税理士事務所にお願いする必要が高まっています。税理士事務所の側でも、”今のマンパワーでは明らかに足りない”と判断するところが増えています。

シニアジョブ 安彦守人氏(広報部部長)シニアジョブ 安彦守人氏(広報部部長)

具体的な人材のイメージはどのようなものでしょうか。

阿部 税制度変更に慣れたシニア税理士・会計人材の事例としては、このようなものがあります。

・国税局に長く勤め、その後民間に転身。税改正での変更項目を幅広く把握している人材
・一般企業での経理歴が長く、税理士補助として8%の変更時に中核として活躍した人材
・経理から税理士試験を受けて転身。税改正での対応内容を細かくまとめている人材

税理士事務所が欲しがっているのは、経験豊富なシニアの税理士・会計人材です。

消費税が前回5%から8%に上がった時に行った対応経験を見て、過去の税改正時の経験を活かして業務を進められる人材を求めています。

また今後、税理士事務所の働き方改革が本格化していく中で、経験豊富で実務をすぐにこなせるシニア人材を社内に投入することで、業務の分散化を図りたいという狙いもあります。

国税局出身の税理士とは頼もしいですね。

阿部 税理士事務所としては、今回の消費税増税で、国税局がどこを注意してチェックするかを知りたいという声があります。5%から8%にアップした時に、対応が後手に回る税理士事務所もあったので、国税局出身者の税理士は人気があります。

税理士業界にも押し寄せる働き方改革の波

シニア税理士の方が転職を考える理由は何でしょうか。

阿部 昔から税理士はハードワークなので転職意欲が高く、人材の流動性も高い傾向にあり、若い方が残りません。

とくにここ最近では、「ある税理士事務所で10年間働いてきたが、別のところで活躍したい」と意欲を抱く方も多く、弊社サービスへの登録相談が増加しました。

働き方改革の流れを受けて、時間に余裕を持ちつつ、長く働きたいと希望する50代の税理士もいます。ある税理士の方は、「30代の頃は泊りがけで確定申告業務をやったが、50代になった今は、働き方を見つめ直したい」と語っていました。

他業種と比べると、税理士の働き方は幅が広いです。いずれにせよ、今回の消費増税が税理士業界を大きく動かしている側面があります。

シニア税理士に寄せられる期待はどんなものですか。

阿部 やはり即戦力としての能力を発揮することです。事務所業務の分散化という目的で採用されることが多いので、30代や40代などの経験の浅い税理士では物足りないということになります。クライアントを紹介したらすぐ対応できるくらいの能力が必要です。

中には、1人事務所として独立はしたものの、限界が見えたため廃業し、再度、別の事務所に勤めたいという意向の方もいます。

税制が複雑化しているため、1人事務所では業務を賄いきれないという声も高いです。税理士を募集している事務所側からすると、こうしたシニア税理士は自身のクライアントも持っており、社内の業務も分散化できることから魅力的に映ります。

シニアのキャリアはお金を生む

増税以外には、どんな需要がありますか。

阿部 相続関係です。労働者の高齢化とともに会社の代表者も高齢化していますので、大きな相続が発生すると予測されます。

税理士でも相続業務を経験していない方は多いため、相続問題を抱えたクライアントを連れて相続に強い税理士事務所に入所する税理士もいます。相続業務を何回もこなした税理士に需要があります。

安彦 相続は法改正もあり、必要な知識が更新され、煩雑になった業務もあります。このため、単独の税理士だけでは相続業務に対応しきれなかったり、かえって対応時間がかかってしまったりするケースもあります。

シニアの税理士や会計人材には、相続法や消費増税について制度変更を経験している方が多くいますので、そこが最高の強みになります。変更事案に慣れていない若い方は、よりハードに感じてしまう可能性があります。

50代以降のシニアに向けてメッセージをお願いします。

安彦 話題になった『老後2000万円問題』は、年金だけでは老後生活にゆとりは生まれないことを示唆したレポートです。

シニアのキャリアはお金を生むかという問い合わせも増えています。弊社はご自身のキャリアの棚卸について早いうちから行うことを勧めています。若いうちからご自身キャリアを研鑽し、定年を迎える前から定年後の働き方を考えることが出発点です。

働き方の意識も変化しています。転職への不安を抱える50代の方も相談に見えますが、資格やキャリアは大きな武器になります。

ちなみに全国の税理士すべての平均年齢は66歳です。先ほど紹介したように、国税局を退職して、はじめて転職の相談に見えられる方もいます。

老後でもお金を稼いで、『老後2000万円問題』を乗り切る意識を持つことが肝要です。

社名 株式会社シニアジョブ
所在地 〒169-0072 東京都新宿区大久保1-14-15 三辰ビル 7F
電話 03-6908-9822
FAX 03-4540-6758
代表者 代表取締役 中島康恵
設立 2014年8月22日
事業内容 シニアの人材サービス提供
派遣事業所番号:派13-307083
職業紹介事業者番号:13-ユ-307556
ホームページ https://corp.senior-job.co.jp/

取材日:2019年10月18日

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