医療費控除とセルフメディケーション税制の上手な活用方法教えて?【FP京極氏が執筆】

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執筆:ファイナンシャルプランナー 京極 佐和野氏

医療費控除とセルフメディケーション税制の上手な活用方法教えて?【FP京極氏が執筆】

「所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について(国税庁)」によると、平成30 年分の医療費控除の適⽤を受けた方は760 万人(対前年⽐+1.4%)で、そのうちセルフメディケーション税制による特例の適⽤を受けた方は2万6千人(対前年⽐+2.1%)と活用する方が年々増えています。

そこで、さらに上手く活用するためのポイントをまとめてみました。

医療費控除とセルフメディケーション税制の概要

その年の1月1日から12月31日までの間に、本人または本人と生計を一にする親族に対してかかった医療費(医療費控除の対象)およびがスイッチOTC医薬品の購入額(セルフメディケーション税制の対象)が一定額を超えるとき、所得控除を受けることができる制度です。

なかでも、セルフメディケーション税制は、所得控除の特例で2017年(平成29年)1月1日~2021年(令和3年)12月31日の期間限定で「健康の保持増進及び疾病の予防への取組」として創設された制度です。医療費控除とセルフメディケーション税制のどちらかを選んで確定申告します。

ポイント1.かかった費用を合算できる対象者を確認しよう

合算できる対象は、本人または本人と生計を共にしている配偶者,6親等内の血族,3親等内の姻族です。

注意!税制や社会保険の扶養に入っているか否かは関係ない

▼同居して生計は共にしているが、給与や年金など収入があり、社会保険などの扶養ではない配偶者や子または親・その他親族。
▼別居しているが定期的に仕送りなどをして生活費を援助している単身赴任の配偶者や子または親・その他親族。

など、収入があっても別居でも医療費を分ける必要はありません。合算できる対象者が多ければ、控除額として請求できる額は増えませんか?領収書を確認してみましょう。

ポイント2.控除の申告は誰がする?

夫婦共働きで家計を支えている場合、夫・妻どちらでも医療費控除やセルフメディケーション税制の申告が可能です。

親の年収が少額で、子からの仕送りで生活しているという場合は、親が負担した医療費は、子の医療費控除として申告することができます。

ただし、セルフメディケーション税制の控除を受ける場合は、申告者が、その年中に健康の保持増進及び疾病の予防への取組として健康診断や予防接種などを行っていなければなりません。

ポイント3.控除の対象となるもの、ならないもの

その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費やスイッチOTC薬品等の購入費が対象です。未払いの医療費や購入費がある場合、実際に支払った年の控除の対象となり、その年に支払済のものを翌年の控除にまわすことはできません。

医療費控除の対象になるもの

医療費控除の対象となるものは、「治療」を目的としていることがポイントです。
▼医師又は歯科医師による診療又は治療費・入院費(健康保険の適用の有無は関係ない)
例えば、治療を目的とした自由診療や先進医療、大人の歯列矯正、子どもの歯列矯正や不妊治療、視力回復を目的とした治療であるレーシック手術なども控除の対象となります。
▼治療又は療養に必要な医薬品(スイッチOTC医薬品を含む)の購入費や医療用器具などの購入や貸借のための費用
例えば、風邪をひいて風邪薬を購入した、けがの治療のため薬局で絆創膏を購入したなども控除の対象となります。
▼治療を目的としたあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術費
▼介護保険等制度で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額
▼通院のために利用した電車、バスなどの公共交通機関の交通費
子どもの通院などで付き添いが必要な場合の付き添いの交通費も控除の対象になります。また、タクシー代は原則対象になりませんが、電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場合など症状等により控除の対象となります。

              

医療費控除の対象にならないもの

▼健康診断の費用や医師等に対する謝礼金などは原則として控除の対象には含まれません。
▼通院のためのタクシー代は原則として控除の対象には含まれません。また、自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金なども控除の対象には含まれません。
▼疲れを癒す、肩こりなどの体調を整えるための施術は、治療にあたらないので控除の対象には含まれません。
▼容姿を美化する為に行った美容整形などの費用は控除の対象には含まれません。
▼酔い止めの薬やサプリメント、ビタミン剤など病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は控除の対象には含まれません。
▼眼科で処方されるメガネやコンタクトレンズは視力を回復させる治療ではありませんので、控除の対象には含まれません。

医療費の対象となるもの・ならないものについて詳細を知りたい方は、国税庁のHPで調べるか、税務署に問い合わせて確認してください。

セルフメディケーション税制の対象になるもの

▼スイッチOTC医薬品の購入費
購入した際の領収書やレシートにセルフメディケーション税制の対象であることが表示されています。

※スイッチOTC医薬品とは、医師によって処方される医薬品(医療用医薬品)から、ドラッグストアで購入できるOTC医薬品に転用された医薬品のことです。

ポイント4 控除の計算方法と注意点

医療費控除額(最高200万円)
={(支払った医療費の額) -(保険金などで補てんされる金額)}-(10万円または総所得金額等の5%のいずれか少ない方の金額)

注意!必ずしも医療費が10万円を超えないといけないとは限りません。

医療費控除の額は、かかった医療費から10万円引くと思っている方が多いようですが、総所得金額が200万円未満の方は総所得金額の5%を超えた額となります。

例えば、支払った医療費が9万円の場合。
・総所得金額等が300万円の方は(300万円×5%=15万円>10万円)、支払った医療
費が10万円を下回るので、医療費控除額はなく申告できません。
・総所得金額等が150万円の方は(150万円×5%=7万5千円<10万円)、1万5千円の医療費控除が申告できます。

総所得金額等とは、会社員の場合、給与収入から給与所得控除を引いた金額になります。源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」にあたります。

個人事業主の場合、「売上-必要経費(専従者給与含む)-青色申告特別控除」の金額になります。

注意!保険金などの給付があったら医療費から給付額を引く

生命保険の給付金、高額療養費、高額介護合算療養費、出産育児一時金、家族出産育児一時金などを受けとった場合、医療費から差し引きます。

ただし、保険給付金を差し引くのは給付対象となる入院や治療費からのみで、引ききれなくても他の医療費から引く必要はありません。

例えば、入院にかかった医療費7万円、入院に対する保険給付金13万円、入院以外にかかった医療費の合計額15万円の場合、

7万円(給付対象の医療費)-13万円(給付金)=-6万円(0円とみなす)
医療費控除の対象になる医療費は15万円となります。

セルフメディケーション税制による医療費控除額(最高8万8千円)
=実際に支払ったスイッチOTC医薬品等購入費の総額-保険金などで補填される金額-1万2千円

医療費合計が10万円、スイッチOTC医薬品等購入額合計が1万2千円を超えている場合は、課税所得額の多い方で申告するほうがお得です。また、医療費合計が10万円満たない場合、課税所得の少ない方で申告できないか検討してみることをお勧めします。

ポイント5. 医療費控除とセルフメディケーション税制は選択適用

セルフメディケーション税制は医療費控除の特例ですので、医療費控除とセルフメディケーション税制いずれか一方を選択して適用を受けることになります。どちらで申告した方がお得なのか、 日本一般用医薬品連合会のHPで試算できます。

ポイント6. 住宅ローン控除と医療費控除の申告

医療費控除の申告は確定申告

医療費控除を受けるには、翌年の2月15日~3月15日までの間に確定申告を行う必要があります。給与所得者の方は、年末調整で申告できませんので、注意してください。

医療費控除は所得控除

医療費控除は、所得税控除の一つで所得税・住民税どちらも控除を受けることができます。総所得金額から所得控除の額を差し引いた額(課税所得金額)を基に適用される税率をかけて所得税や住民税を計算します。

課税所得金額は、会社員の場合、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を引いた金額で、個人事業主の場合、「総所得金額等」から「所得控除の額の合計額」を引いた金額です。

医療費控除の還付は、医療費控除の金額がそのまま所得税や住民税から差し引かれるのではなく、適用される税率によって還付される金額が変わります。

還付を受けることができるのは、所得税のみで、住民税は、医療費控除分を所得から差し引いて計算した税額を翌年に納付します。

ただし、自分が支払った(源泉徴収された)所得税を限度として還付を受けるもので、所得税が課税されていない場合には、所得税の還付は受けられません。

住民税についても非課税の方や均等割のみの方は医療費控除を受けても税額は変わりません。また、5年間は遡って還付申告をすることが可能です。

住宅ローン控除は、税額控除

税額控除は、所得税や住民税から控除額をそのまま差し引くことです。

住宅ローン控除は、はじめに所得税から税額控除し、残った住宅ローン控除額あれば、次に住民税から控除します。

ただし、住民税から控除できる額は、所得税の課税総所得金額等×7%もしくは13万6,500円いずれか少ない方の金額となります。

注意!年末調整で住宅ローン控除をして税額がゼロになった場合

還付する税額がありませんので、確定申告で医療費控除をすることはできません。お住まいの地域の市区町村役場で住民税の医療費控除の申告をすることになります。

医療費控除をしておくことで課税される所得が減額され、翌年の住民税が安くなります。

ポイント7.今後の対策

▼領収書を捨てずに保管しましょう
どちらの制度を利用する場合も、領収書が必要になります。確定申告に備えて、専用のファイルなどがあれば便利です。医療機関で治療した時の領収書やドラッグストアや薬局等にて市販薬を購入した際のレシートは必ず捨てずに保管しておきましょう。 申告した場合、税務署からの請求で領収書の提示や提出をしなければいけません。領収書は5年間の保存が必要になります。

▼健康管理のために、健康診断、がん検診、インフルエンザの予防接種など定期的に受けましょう。

▼かぜや花粉症など軽症の病気やけがはすぐに病院に行くのではなく、薬剤師に相談する、スイッチOTC医薬品などを利用して様子を見るというような、セルフメディケーションを心がけましょう。

※セルフメディケーションとは、WHO(世界保健機関)において「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当すること」と定義されています。
国の施策では、セルフメディケーションを推進し、個々の自発的な健康管理や疾病予防の取組を促進し、医療費の適正化を目指しています。

<最後に>
医療費控除を申告することで課税所得が少なくなり、所得税や住民税の節約ができるだけでなく、高額療養費や子どもの保育料、児童手当など社会保険や福祉関連にも家計にプラスの影響を及ぼします。

確定申告には、領収書を集めたり、一覧表に入力・記入するなど手間がかかりますが、家計支出の防衛に役立ちます。最近は、医療機関や薬局などキャッシュレス化が少しずつ進んでいます。

医療費の支払いや医薬品購入をキャッシュレスにすることでポイントの還元が期待できます。合わせて賢く活用しましょう。

<執筆者> 京極 佐和野氏(Sawano Kyougoku)
京極 佐和野氏
FPオフィス ミラボ 代表 セカンドライフ・コーチ
ファイナンシャルプランナー(CFP® ) / 1級FP技能士(国家資格)/ キャリアコンサルタント(CDA) / 住宅ローンアドバイザー / 二種証券外務員 / 金融教育支援員 /

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