不動産投資20年のプロフェッショナル仕事術~富士企画株式会社 新川義忠氏インタビュー
10時始業、終業は「今日の仕事が終わるまで」と営業時間を決めている企業がある。不動産投資専門の富士企画株式会社だ。
不動産営業にありがちな強引な手法は一切しない。
本気で投資用物件を探している顧客に誠実に仲介業を続け、今では全国の不動産物件情報が集まり、多数のプロの不動産投資家からもつながりを求められている代表取締役の新川義忠氏。
サーファーである新川氏の作るオフィスは、海辺をイメージしたリビングルームがコンセプト。早
朝にサーフィンをしてから仕事に向かい、「明日やろうは馬鹿野郎!」「仕事も遊びも一生懸命」を自ら実践し、さらにもうひとつの同分野企業である株式会社クリスティの代表も務める新川氏に話を聞いた。
新川義忠氏(富士企画本社オフィスにて)
あやしい会社にこそ入りたかった
学生時代は何を目指していましたか?
学生の時は、インテリアデザイナーがカッコいいなと思い、東京デザイナー学院という専門学校に入りました。
建築業界に行きたいと思っていたのですが、遊んでばかりで、卒業が同期より半年遅れてしまったんです。
出遅れた焦りもあり、住宅設備の会社に面接に行き、「明日からでも働きたい」と言ったら即採用になりました(笑)。
住宅設備のエアコンや流し台などの営業をメインに6年間勤務し、営業成績はトップでした。
何度か異動を経験しましたが、「元の部署の売上が落ちたから戻ってくれ」と言われたときに、「コマのように使われるなら辞めます」と。ただ、そのときやりかけていた案件は責任をもって最後までやりました。
50年ほどの歴史のある会社でしたから、業界内で名前が知られており、その会社の名前だけで売れている部分もありました。
しっかりした看板がない会社に行きたいと思っていました。自分の力を試したかったんです。
そして不動産業界に入ったのですね。
転職情報誌でたまたま見つけたのが不動産業の「クリスティ」です。不動産屋の方が羽振りがよく見えました(笑)。
平成10年頃、当時はもうバブルがはじけていました。元麻雀屋という事務所の立地も悪かった。ということは、そういう会社がやっていけているのは、間違いなく個人の力があるからだと思いました。
「あやしくて、出来たばかり」。そんな会社に行きたかったんです(笑)。
クリスティは設立2年目で、僕は初めての募集で入りました。
社長と専務と部長の3人。そこへ、僕より1カ月先に入った年下の先輩がいましたが、絶対この人には負けるものかとめちゃめちゃ頑張りました。
クリスティには何年間ほど勤務されたのですか。
専務や部長が辞めて、自然とナンバー2になってしまいました。結局14年間勤めましたね。「最終的に何かあっても会社は守ってくれないよ」と言って辞めた方もいて、自分もだんだんと辞める気持ちになっていきました。
当時、僕は経理以外の業務全部をやっていましたから、自分が辞めたら会社は立ちいかなくなってしまいます。
そこで、3年ほどかけて管理職を育ててから辞めました。最後の3カ月ほどは管理職から降りて、一営業社員として過ごそうと思いました。
どうせ辞めるなら伝説を作ろうと思い、バーン!と物件の売り上げを上げて無敵状態になったら(笑)、居心地よくなってしまいました。
「あんただったら売ってもいいよ」っていうお客様に出会えたこともあり、退職をズルズルと延期していましが、このままいたら自分はダメになると思って、「やはり辞めます」と。売上の記録を塗り替えてから辞めました。
会社の譲り受けは天命だった
その後、現在の富士企画を立ち上げたのですね。
平成24年3月に辞めて、同年の12月に富士企画をスタートしました。
僕は、クリスティ時代、辞めていく社員に対し、「クリスティで集めたお客様はクリスティのお客様だ。勘違いするな、自分のお客様ではないから、営業マンとしては連絡するな」と散々言っていましたから、ほとんどのお客様には退職のことは言わずに去りました。
ゼロからやろうと思っていました。ただ、部下2人だけを連れて行きました。クリスティの小林社長に、「この2人とどうしてもやりたい」と言ったら、「いいけど、その2人だけにしてくれ。
今まで全部やってきたお前が声をかけたら、みんなお前の方に行ってしまう。そうするとクリスティがつぶれてしまう」と。結局は円満に退職しました。
今では、退職したクリスティの代表も務めていますね。
クリスティより良い会社を作ってやる、という気持ちで作った会社は、明らかにクリスティより良い会社になったようで(笑)、クリスティの社員も、「僕も行きたい」と何人も来るようになりました。
その中にはクリスティでちょっとトラブルを起こした者もいて、社長と行き違いが生じてしまい、疎遠になってしまいました。
5年ほどして、クリスティの小林社長が亡くなったのです。亡くなって1週間後くらい、たまたま、普段行かない場所にランチに行き、その付近の銀行にたまたま立ち寄ったところ、偶然、小林社長の奥様にバッタリ会ったのです。
運命としか思えませんでした。亡くなった小林社長が引き合わせてくれたと思った。
じつは、すでにクリスティの引受先は大手企業との話が出ていたのですが、奥様は「この人にやってほしい」と、他の話を全部断られたそうです。
そして僕がクリスティの代表になりました。買収という形ですが、感覚としては、譲り受けた会社だと思っています。小林社長は亡くなる前に「あいつと飲みたい」とよく言われていたそうなんです、心残りですね。
クリスティにいた社員は驚いたことでしょうね。
誰にとっても良い結果だったと思います。元社員も、社長が亡くなり不安だったと思いますが、まったく知らない人物が社長になるよりはずいぶんと安心感があったようです。
戻った時に、「誰も解雇しないがやり方を変える。ついてきてほしい」と言いました。といっても、今も悩みながらやっています。
現在は2社を同時に経営しておられますね。
同じ業態ですし、2社を運営していると、広告費も1社分で済むのところが2倍になるなど、いろいろ経費や手間がかかることがあります。
ですが、クリスティの名前を残さなければとも思いますし、僕にとってクリスティには思い入れもあります。
一つにしたいという気持ちもずっとありますし、自分の中の整理がなかなかできていないこともあります。いつか、この2社を一つにまとめるタイミングが来るかもしれません。
働き方は「自由」、「やることをやるだけ」
今度はご自身が立ち上げた富士企画について教えてください。
僕はサーフィンをしていまして、定休日なんて決めたくない、波に合わせて仕事をしたいと思っています。
波が良い日というのはバラバラにやってきます。これは仕事も同じです。お客様も、定休日が分からなければ電話はガンガンかけてきます。
いつ休んでも分からない、いつ働いてるかもわからない、だからいつでも電話を掛けられる状態をつくっています。
これがベストだと思います。遠慮させていたら物件情報はすぐなくなるかもしれませんし。大人はみんな夜の12時には起きていますよね。夜かけたくなるときありますし、そのときに対応できた方が絶対いいです。
定時を設けないことで、仕事には自己裁量が求められることになりますね。
「時間で仕事をするな」ということです。たとえば、定時の6時になると「お疲れ様です」と帰る社員がいるということは、時計を見ているということです。
そんな働き方は不満ですね。6時までいる必要もありません。やることやって帰ればいいし、やりたいことやるなら早く帰れるような会社がいい。
といっても、それぞれ役割あります。営業だったら、売れてなかったら休む場合ではなく、夜でも働かなければならないと思う。やらなくてはいけないことをやるだけです。
オフィスは海辺のリビングがコンセプトとのことですが。
環境づくりは大事ですから。会社の雰囲気悪いからカフェで仕事したりするのは変ですよ。だったらオフィスを居心地よくした方がいい。海を嫌いな人はいませんから、このオフィスは万人に受けています(笑)。
私たちは重力を感じながら生活していますが、サーフィンで水の上をすべる感覚、大きな波に乗った時って、脳が気持ちいいんです。
下手すると波にもまれて死にそうになることもありますが、定期的に死を意識していますし、生きていることを有り難いと思っています。
真冬も海に入ります。寒いですけど(笑)、それ以上に気持ちいいし、仲間もいますから。自分にとって何が幸せなのかきっちり考えていかないと、周囲に流されてブレていきます。自分の内側をしっかりと見ていたらいい、と思います。
今後の不動産投資業界はどこへ向かうのか
不動産投資では、リーマンショックなどいろいろな波を乗り越えられてきましたが。
20年、不動産投資一筋ですが、今までで一番つらかったのは震災だけです。それ以外はリーマンショックも全部問題なかった。
むしろチャンスだと思う人に売れていました。当時は銀行融資はまだ全然大丈夫でした。僕らは投資物件をやっています。買う人の属性もバラバラです。
パズルのように、融資してくれるところと、買いたい方を探せばいい。戸建てでも区分マンションでも。物件も購入者も融資する銀行もあるところにはあるのです。
不動産投資の今後はいかがでしょうか。
相場は分からないと言っています。振り返ったら、過去は安かった、というだけです。オリンピックが終わったら下がるという方もいますが、分かりませんよ。
オリンピックで世界中から東京が注目されて、「東京はこんなに安全な都市で、しかも不動産が買えるのか」となったら、むしろ買われるかもしれません。
区分マンションはまだ価格は高騰しています。オリンピックの影響もあるかもしれないし、銀行が融資期間を延ばせば売れる、売れるから買う、とバランスが合っています。融資の姿勢の問題で価格が上がっているのです。
投資をしたい方にメッセージをお願いします。
「これから高くなるから買った方が」とか、「安くなるから売った方が」というのは未来の話で、分かりません。
不動産は安く買って高く売る方が儲かる、これは僕らの仕事です。同じことを一般の人がすると、ケガをしてしまう恐れがあります。
新築の区分マンションは儲からないからやめた方がいいですね。中古ならいいかもしれません。
目的をちゃんと考えることです。大きく儲からなくても、小さく儲かる方がいいという人もいるし、欲の世界です。人と比べたらキリがない。自分はどうしたらいいか、ということがいちばん大事ですね。
名称 | 富士企画株式会社/株式会社クリスティ |
所在地 | 東京都新宿区四谷1-19-16 第一上野ビル5階(富士企画) 埼玉県さいたま市大宮区下町1-51 木崎屋ビル2階(クリスティ) |
ホームページ | https://www.fuji-plan.net/ http://www.christy.co.jp/ |
代表者 | 代表取締役 新川 義忠 |
プロフィール | 昭和47年生。北九州市生まれ、春日部で育つ。趣味はサーフィン。 |
取材日:2019年11月7日