妊活にはどのくらいお金がかかるの?助成金をもらうのに所得制限はあるの?【宮野FPが解説】

執筆:ファイナンシャルプランナー 宮野真弓氏

妊活にはどのくらいお金がかかるの?助成金をもらうのに所得制限はあるの?【宮野FPが解説】

そろそろ子どもが欲しいけど、妊活って何をするの?不妊治療はお金がかかりそう。

妊活を始めるにあたって内容や費用が気になっている人も多いのではないでしょうか。確かに治療費が高額になる場合もありますが、費用は治療内容によって、そしてカップルによって大きく異なります。

妊活・不妊治療にかかるお金について、妊活を始める前に知っておきたいことをお伝えします。

妊活にかかるお金はどのくらいなのか?助成金をもらうことができるのか?所得の計算方法、その他の支援制度など、妊活を始める前に知っておきたいお金のことをお伝えします。

そもそも妊活って何?

「妊活」というと「不妊治療」を連想する人もいると思いますが、そうではありません。妊活というのは文字どおり「妊娠するための活動」のことで、妊娠についての正しい知識を身に付けたり、体調管理を心がけたり、妊娠・出産を考慮した人生設計を考えたりすることをいいます。

具体的には、基礎体温を測る、生活習慣を改善する、ストレスを減らす、妊娠・出産後の働き方について考えるなど、お金をかけずにすぐに始められることがたくさんあります。

また、医療の力を借りて妊娠を目指す「不妊治療」も広い意味で「妊活」に含まれます。

では「不妊」とはどういう状態のことでしょうか。不妊とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をせずに性交をしているにもかかわらず1年間妊娠に至らない状態をいいます。

国立社会保障・人口問題研究所が実施した「第15回出生動向調査(2015年)」によれば、妻の年齢が50歳未満の夫婦のうち、過去に不妊の心配をしたことがある割合は35%、検査や治療を受けたことのある割合は18.2%にのぼります。

不妊治療って何をするの?どれくらいお金がかかるの?

不妊治療はどんな風に進むのでしょうか。不妊治療を始めるにあたって、まずは各種検査を受けます。

検査では、ホルモンがきちんと分泌されているか、きちんと排卵しているか、卵管が詰まっていないか、子宮筋腫がないか、精子の数や運動量に問題がないか、奇形はないかなどを確認します。

そして、不妊の原因にもよりますが、タイミング法→人工授精→体外受精・顕微授精、と治療が進んでいくのが一般的です。

各種検査やタイミング法は保険適用なのでそれほど高額にはなりません。一般的に、治療がステップアップするほど経済的負担は大きくなり、特に金額が大きいのが体外受精と顕微授精です。

治療費の目安は次の通りですが、自由診療の治療は医療機関ごとの金額の差が大きいので、治療を始める際にはホームページなどで確認しておきましょう。

【不妊治療にかかる1周期あたりの費用の目安】

一般不妊治療
各種検査
(血液検査、子宮卵管造影検査、精液検査など)
数百円~2万円程度
(多くの検査は保険適用)
タイミング法(保険適用) 1周期あたり3千円~2万円程度
人工授精(自由診療) 1万円~3万円程度
高度生殖医療(高度不妊治療・特定不妊治療)
体外受精(自由診療) 20万円~60万円程度
顕微受精(自由診療) 25万円~70万円程度
凍結胚移植(自由診療) 10万円~25万円程度

 
治療費以外にもお金はかかります。通院にかかる交通費はばかになりませんし、葉酸入りのサプリメントは多くの人が使用されると思います。

また整体や鍼灸院、ヨガに通ったり、温活グッズを購入される方もいるでしょう。

妊活ボイス』が10年以内に妊活経験のある20~49歳までの女性を対象に2017年に行った「妊活・不妊治療」に関するインターネット調査では、妊活全般にかかった費用の平均は約35万円です。

これは、不妊治療をした人も、不妊治療はせずにいわゆる「妊活」をした人も含めた平均額です。

しかし、そのうち人工授精・体外受精・顕微授精のいずれかを経験した人に限ると平均費用は約134万円、さらに高度不妊治療経験者の平均費用は193万円にもなります。

つまり、どこまで治療を受けるか、いつまで続けるのかという自分たちの選択によって金額が変わるということです。

特定不妊治療費助成制度を知ろう

不妊治療を受けている人、受けようと思っている人にとって大きな壁となるのが費用です。そんな不妊治療の経済的な負担を少しでも軽くするために助成制度があります。

特定不妊治療費助成制度の概要

特定不妊治療費助成制度とは、特定不妊治療(体外受精と顕微授精)を行う場合に助成金を受け取れる国の制度です。

特定不妊治療にかかった費用に対して、1回の治療につき15万円(初回の治療に限り30万円)まで、採卵を伴わない凍結胚移植等については1回の治療につき7.5万円までが助成されます。

助成を受けられる通算回数は、初めて助成を受けた際の治療期間の初日の妻の年齢が40歳未満の場合は6回まで、40歳以上の場合は3回まで、43歳以上で開始した治療は助成の対象外となっています。

また、特定不妊治療のうち精子を精巣又は精巣上体から採取するための手術を行った場合は、1回の治療につき別途15万円(初回の治療に限り30万円)まで助成されます。

例えば、精子採取を行って体外受精をした場合、初回だと最大60万円の助成が受けられます。

ただし、助成を受けられるのは夫婦合算の所得が730万円未満の場合に限られます。

これは、国が定める制度で、自治体によってはさらに手厚い助成を行っているところもあります。2019年4月に東京都は所得制限を905万円に緩和し、助成金額を引き上げました。

ほかにも助成回数を増やしたり、事実婚カップルも助成の対象とする自治体などもありますので、お住まいの自治体の制度を確認してみてください。

所得制限に関する誤解

特定不妊治療費助成制度を利用したいと考える方の多くが誤解しているのが所得制限についてです。みなさんは「収入」と「所得」の違いがわかりますか?

収入というのは会社員でいうところの給与の額面金額(年収)のこと。所得とは、収入から給与所得控除を引いた金額のことをいいます。

給与所得控除というのは会社員にとっての必要経費とみなされるもので、差し引く金額は収入に応じて決まっています。

自分の所得がいくらかは、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」で確認することができます。自営業の方は、確定申告書の所得金額の合計を確認しましょう。
自分の所得がいくらか
所得の判定は、この所得金額から社会保険料相当額として一律8万円を差し引き、さらに医療費控除や雑損控除、小規模企業共済等控除などの諸控除があればそれらも差し引いた金額で行います。

わが家は助成を受けられる?~所得額判定の事例~

自分で計算するのは少し難しいかも知れないので、2019年12月現在の制度に基づいて事例を用意しました。

参考にしてみてください。(なお、2020年分からは給与所得控除額が10万円減額されることが決まっているため、夫婦合算の年収が2019年と同じだった場合、夫婦合算の所得は20万円増えることになります。)

例1.夫の年収600万円、妻の年収450万円、諸控除0円

合計
年収 600万円 450万円 1050万円
給与所得控除 ▲174万円 ▲144万円 ▲318万円
所得金額 426万円 306万円 732万円
社会保険料等相当額 ▲8万円 ▲8万円 ▲16万円
判定される所得額 418万円 298万円 716万円

 
 

例2.夫の年収600万円、妻の年収550万円、年間医療費100万円

合計
年収 600万円 580万円 1180万円
給与所得控除 ▲174万円 ▲170万円 ▲344万円
所得金額 426万円 410万円 836万円
社会保険料等相当額 ▲8万円 ▲8万円 ▲16万円
医療費控除 ▲90万円 0円 ▲90万円
判定される所得額 328万円 402万円 730万円

 
事例を見たけれど自分が助成の対象になるかわからないという人は、自治体の窓口に相談してみましょう。課税証明書などが必要な場合には少し費用がかかりますが、相談自体は無料です。

仮に所得制限を超えていた場合、助成を受けることはできませんが、特にペナルティがあるわけではありません。

自分で無理だと決めつけてしまって、もらえるはずのものがもらえないのはとてももったいないですよ。

助成金の注意点

特定不妊治療費助成金には次のような注意点があります。

①申請には期限がある

お住まいの自治体によって、助成対象となる特定不妊治療が終了してから3か月以内や年度末までというように期限が設けられていますので、速やかに申請しましょう。

②指定の医療機関で行った治療のみが対象

助成の対象となるには都道府県や政令指定都市などが指定した医療機関で行った特定不妊治療のみです。

③助成金は後払い

助成金を受け取れるのは病院に支払いを済ませた後、期限内に申請をしてからさらに数か月後です。助成金はとても助かりますが、まずは手元に資金がないと治療を受けることができない点には注意が必要です。

その他の不妊治療の支援制度

特定不妊治療費助成制度のほかに不妊治療に対する独自の助成を行っている自治体もあります。

東京都では、医療機関で行った不妊検査及び一般不妊治療の費用について5万円を上限に助成しています。

京都市では、一般不妊治療に対する助成に加え、不育症治療に対しても治療費の自己負担分の2分の1(上限10万円)を助成しています。

不妊治療は高額になることも多く、治療を続けるためにも仕事は続けておきたいところです。ところが、通院のための時間的な制約や精神的な負担から、治療と仕事の両立の難しさを感じる女性は多いです。

そういった状況を改善するため、不妊治療のための休職制度を作ったり、治療費の一部を負担するなど、従業員が不妊治療中でも働きやすいように制度を整える企業が増えています。

厚生労働省は不妊治療と仕事の両立の支援を企業に求めており、今後さらに支援は広がっていくと思われます。

自由診療の不妊治療でも医療費控除を受けられる

医療費控除とは、自分や家族のために1年間に支払った医療費が10万円※を超えた場合に、確定申告により税金が減額される制度です(※その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額)。

詳しい計算方法は省略しますが、例えば、課税所得金額が350万円の人が1年間の不妊治療に100万円支払い、特定不妊治療費助成制度により30万円の給付金を受け取った場合、所得税と住民税合わせて18万円が減額されます。

医療費控除は、自分の医療費だけでなく、家族の医療費も合算することができます。また、医療費控除は家族のうち誰が行っても構わないので、収入の多い人がした方がおトクになる場合があります。

医療費控除の対象になるのは、診察代や入院費、医師の処方で購入した薬代のほか、病院への交通費(公共交通機関)、治療のための市販薬代などです。

保険診療の治療・診察に限られていないため、体外受精や顕微授精、さらに妊娠後の妊婦検診費用や分娩費も対象です。

一方、サプリメントや自分で買った排卵検査薬や妊娠検査薬の費用などは対象外です。

医療費控除を受けるには、「医療費控除の明細書」を作成する必要がありますので、領収書やレシート、健康保険組合などから送られてくる「医療費のお知らせ」を保管しておきましょう。

妊活・不妊治療のお金のやりくり

妊活をする上で一番重要なのは、どこまで治療を望むのかを夫婦でしっかりと話し合うことです。

夫婦の気持ちや考えがそろわないまま治療を続けてしまうと、時間とお金だけがかかってしまいかねません。

妊活のことを具体的に考えるのが難しい場合は、将来は子どもと一緒に旅行に行きたいとか、子どもが何人ならこれくらいの家が必要になるなとか、今子どもができたら、子どもが20歳になるころには自分は何歳だな、というように、少し遠くのことからたぐり寄せていくのがオススメ。

そうすることで、あまりのんびりしていられないな、教育費と住宅ローンが重なるな、働き方はどうしよう、と今すべきことが見えてきます。

治療をすると決めたら夫婦そろって早く検査に行くことが費用を抑える一番のポイント。妻が必死に通院していても、原因が夫側にあったのでは時間もお金もムダになってしまいます。

不妊治療は治療内容や治療期間によって金額が大きく変わるため、これから妊活を始める方は「何に使ってもいいお金」が200万円あると治療の選択肢が広がります。

高度不妊治療は金額も大きくなるため、クレジットカードでの支払いが可能な病院を探してポイントを貯めるのも手。自治体や勤務先の制度もフル活用して、できるだけ経済的な負担を抑えて妊活に取り組みましょう。

<執筆者>宮野真弓
お金の専門家 宮野真弓
妊活・不妊治療のお金の専門家
FPオフィスみのりあ 代表
CFPⓇ/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
https://fpoffice-minoria.jimdo.com/

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