「年齢は背番号 人生に定年なし®」という生涯現役文化を実現~株式会社マイスター60 小倉勝彦社長インタビュー

75歳でもお元気な小倉勝彦氏(株式会社マイスター60 取締役社長)

 

年金や貯金だけで老後生活を乗り切ることに不安視する声が上がっている今、シニア人材は、やりがいのためだけではなく、生活のために働くことを余儀なくされており、少子高齢化、人材不足対策として政府もシニアの生涯現役を唱える。

そんな中で「年齢は背番号 人生に定年なし®」をスローガンに、30年にわたってシニアの人材派遣や紹介業を行ってきた株式会社マイスター60は、先見の明があったと評価されている。

大成建設専務営業本部長等を歴任し、「生涯現役文化をひらく」という経営理念を掲げる同社取締役社長の小倉勝彦氏に話を伺った。

30年前から時代を見通して高齢者の雇用を創出しつづけてきた

スローガン「年齢は背番号 人生に定年なし®」に込めた思いを教えてください

株式会社マイスター60は90年に設立し、今年の2月に30周年を迎えました。

30周年を記念してBSテレ東でレギュラー放送中の音楽バラエティ番組「武田鉄矢の昭和は輝いていた」へのCM提供を2020年4月から開始します。

CMではマイスター60でいきいきと働く、50代から70代までの3名の方にインタビューをしています。当社では今後とも、1人でも多くのシニアの方々の再就職支援に邁進してまいります。

創業者は平野茂夫会長で、貴重なシニア人材の雇用機会を創出して「生涯現役文化」をひらこうと決意し、社会に貢献する志をもって30年前に株式会社マイスター60を創業しました。

創業当時、定年は55歳で、「サラリーマン 退職すれば ただの人」という川柳があったような社会環境でしたが、シニアを取り巻く環境は劇的に変化しました。

生産者労働人口(18~60歳)の急激な減少により、今やシニア人材は日本経済の維持発展にとって必要不可欠です。

シニア本人にとっても、人生100年時代の今、生きがいややりがいのためだけではなく、年金や貯金だけでは心配という金銭的な面からしても働かなければならない環境です。

当社の役割と責任はますます大きくなっていると自覚しています。

30年前にシニアが活躍する時代が来ることを見抜き、「利益の追求よりも、シニア人材の雇用を創出することが第一」という理想を掲げた平野会長は、慧眼だったと思います。

この30年間、当社は多くの会社にシニア人材の派遣・紹介を行い、約7,500人の雇用を実現してきました。

長年実績を積み上げてきた建設・ビル管理をはじめとする技術部門、事務部門の人材の雇用創出に注力し、高齢者の就労意識向上にも向き合っています。

ビルメンテナンス業務への技術者派遣が多く、これに建設技術者の派遣・紹介が続きます。売上的には派遣が9割、紹介が1割ですが、部門別に見ると、ビル管理は派遣、建設は紹介が多くなっています。

建設の中でも施工管理技術者は業務的にはハードですが、発注者や設計事務所の立場で監理する技術監理者でもシニアの需要は多く、うまくマッチングしています。

小倉社長のご経歴を教えてください

私は早稲田大学建築学科を卒業し、建築技術者として大成建設に入社しました。

大成建設でかかわったのは、本社がある超高層建築の新宿センタービル、山口県・宇部の全日空ホテル建設、アメリカ・カルフォルニアの再開発プロジェクト、羽田国際空港ターミナルビル(ビックバード)などです。

今でいう「地図に残る仕事」ですね。

途中から管理職になり、北信越支店長、都市開発本部長、専務取締役営業本部長を経て、有楽土地(現・大成有楽不動産)の社長を務めた後、68歳の時に一度リタイアしました。

サラリーマンとしても技術者としても充実した人生でした。

その後は千葉県の生涯大学校や絵画教室に通い、趣味のゴルフ、海外旅行、ボランティアを楽しんでいたのですが、サラリーマンを退職して3年間、自分としては物足りない思いもありました。

そんなとき、当社の先輩から「小倉さん、次はこういう仕事があるからどう?」という依頼がありました。

サラリーマンとしては終わったと考えていましたので、一度は固辞をしたのですが、その後、建設部門を強化したいという要望もあり、「週に1回、顧問という形ではどう?」と依頼され、顧問として平野会長と接する中で、今日まで引き継がれる平野会長の志に共感し、社長を引き受けて、2年になります。

マイスターグループの発展と盤石な体制を築き、当社社員全員でシニアの雇用機会を創出し、社会貢献を続けることが、今の私の原動力になっています。

シニア人材は若手へ技術継承にも力を発揮

シニア人材の需要はどうなっていますか

建設業の実態は依然人手不足で、とくに技術系にそれが顕著であり、ゼネコンもなかなか技術者を手放しません。

私の古巣の大成建設で、「定年になった技術者が欲しい」とお願いしますが、逆に人材派遣・紹介を頼まれるケースが多く、技術者確保は厳しい状況が続いています。

ゼネコンの本音は、働けるうちは技術者が自社に留まって欲しいということで、囲い込みを行っています。

当社の強みは建設に限らず、ビルメンテナンス等現場で培った技術・技能を持った人材が多いので重宝されており、当社のシニア人材と、派遣先・紹介先の若手人材がツインになって仕事をしていますので、現場に即した技術が伝承されることも期待されています。

ビル管理は作業服を着て現場に行く仕事ですから、体力を使う仕事ではなく、若い方がやりたがらないという面もあるのですが、ニーズは高く、良い人さえいればマッチングしています。

企業側としては、資格があり技術に心得がある方であれば大歓迎という姿勢で、逆に、難しいのは事務系業務です。

現在、AI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)が導入されることによって、若くても退職を余儀なくされ、思うような仕事が見つからない人が多いという現状があります。

再雇用で給料が半分になる事例も多数

マイスター60では、再雇用で働く会社員の意識調査を行っていますね

定年を迎えると、半分の給料で会社と再雇用契約を結んで働きつづける人もいれば、「この会社はもういい」と正式に退職される方もいます。

じつは給料が半分になっても仕事内容はたいして変わらないというケースもあります。

当社は、再雇用制度によって定年退職後に働いている60~65歳の全国の男性500名を対象に、アンケート調査を実施しました。

現在の雇用体系について質問したところ、最も多い回答は「嘱託/契約社員(64.2%)」で、次は「正社員/正職員(32.2%)」が続きました。

契約期間についての回答は「1年間以内(48.6%)」が最も多く、次いで「1年間を超える(38.6%)」、「期間の定めはない(12.8%)」と続きました。

定年後の賃金の変化については、最も多かった回答が「5割以上減った(39.8%)」という結果で、次いで「3~4割程減った(39.6%)」、「1~2割減った(12.6%)」、「同程度(7.4%)」、「増加した(0.6%)」という回答が続きました。

さらに、定年前に想定していた仕事内容と再雇用後の実際の仕事に違いについての質問に対しては、勤務日数・時間、仕事内容が「想定通りだった」もしくは「どちらかというと想定通りだった」という回答が9割以上でしたが、給与について「想定通りだった」という回答は75.2%にとどまり、「全く想定通りではなかった」という回答が24.8%でした。4人に1人の割合です。

4割近くの人が「再雇用後に給与が半額以下に下がった」と回答しているように、再雇用時の給与は、現役時代よりも大きく下がるのが一般的な傾向と言えるでしょう。

5割以上賃金が減ると生活できないシニアもいるのではと思った調査結果(マイスター60調べ)

 

かつての生活設計は、60歳でリタイアして年金をもらうという形が前提でしたが、今は時代が違うとはいえ、再雇用で給料が半分になってしまうと生活自体が大変になります。

今後、働き方改革によって同一労働同一賃金というルールが普及していきますので、企業側がシニア人材に労働力を頼る流れがありますが、それだけシニアに期待するのなら、給料も相応に上げてほしいという本音も生まれます。

具体的な事例で見ると、建設業では現場監督が不足していますので、技術者は引く手あまたであり、高額な給料を払っています。技術系人材はそういう強みがあるわけです。

事務系では、中小企業の創業者が高齢化して引退を迎える時期に来ていますので、2代目、3代目を補佐する番頭が欲しいというニーズがあります。

創業者がリタイアする時期には従来の番頭の人や側近の方々もリタイアする年齢になっているわけですので、番頭も若返りが求められています。

ただ、番頭というのは2代目に耳が痛いことも言わなければなりませんから、2代目とうまくやっていけるかというのはケースバイケースですね。

給与面では想定外の回答が多かった(マイスター60調べ)

 

技術系・事務系関係なく共通して求められるのは実務をこなせる人材で、若くして管理職になり、マネジメントばかりやってきたような人材の再就職はかなり厳しい状況です。

たとえば建設で言えば、現場管理をきっちりこなせるとか、積算・経理等がしっかりできる人材ということになります。

とくに今はパソコンの時代ですから、パソコンがまったくこなせないとお話にならないという企業は多いですね。

いずれにせよ、再雇用も65歳で終わってしまいますので、第2の人生を迎えるにあたっては、早い時期からその先の人生設計を立てることが肝要です。

退職になってから次の職場を探すのではなく、なるべくなら50代のうちに、次はどう生きるかについて考え、資格を取得するなどして備えるべきです。

人脈についても同様のことが言えます。

大成建設などを見ると、人脈を通じて次の職場を確保している人も多くみられます。
これからの時代は、社内人脈だけではなく、世界を広げるために社外人脈も重要になるでしょうね。

定年後も自己研鑽すれば道は開ける

人生100年時代においては、定年後も学び続けることが重要なのですね

先ほど紹介したアンケート調査は、給与面や仕事の満足度についてでしたが、第2弾として、定年後の学びや自己研鑽、将来の健康やお金に関する自信などについても調査を行い、結果をまとめました。

再雇用制度で働く方々が、自身の専門スキルや勉強などの自己研鑽に取り組んでいるかという質問に対して、「積極的に取り組んでいる(5.8%)」「どちらかというと取り組んでいる(25.4%)」という回答もありましたが、「全く取り組んでいない(28.4%)」「どちらかというと取り組んでいない(40.4%)」という合計68.8%、じつに7割近くの方が自己研鑽などに取り組んでいない実態が明らかになりました。

次に、これからの人生における健康やお金、人間関係などへの自信を聞いてみたところ、とくに「お金」に関して「自信がない」という回答が最も多く、「どちらかというと自信がない(32.6%)」と「全く自信がない(13.4%)」を合わせて46.0%の人が将来のお金に自信がないと感じているということがわかりました。

自己研鑽に取り組んでいない人が7割近い(マイスター60調べ)

 

私の考えでは、前職中から学びの気持ちを持っている方は、リタイアした後も「何かやってみよう」というモチベーションが自然に沸きあがってくるはずです。

それに対して、自己研鑽をやってこなかった人は、定年になっていざはじめようとしてもなかなか手がつきません。

平野会長はいつまでたっても勉強することが好きな人で、私も役員になってからも資格を取得しつづけて、社員の模範になるよう努めました。

リタイアした後はもちろんですが、40~50代のうちに、学び続けることの大切さを知ってほしいと思います。

お金はいくらあれば大丈夫かという点については、使い方にもよりますし、本人の寿命にもよりますから、自信があるかと質問されて、「私は大丈夫」と胸を張って答えられる方は少数派でしょう。

これからは年金がどうなるか未知数ですし、貯金をどんどん取り崩していけばさらに不安になります。

80~90歳になっても蓄財に励む高齢者がいる、とよく聞きますが、いつまで生きるかという不安感の裏返しだと思います。

社名 株式会社マイスター60
本社所在地 〒108-0014
東京都港区芝4丁目1番23号 三田NNビル3F
設立 1990年2月1日
資本金 1,000万円
代表者 取締役会長 平野 茂夫
取締役社長 小倉 勝彦
従業員数 362名(2019年3月31日)
ホームページ https://www.mystar60.co.jp/
主要株主 株式会社マイスターエンジニアリング
大阪中小企業投資育成株式会社
事業内容 人材派遣、職業紹介等の人材サービス
[労働者派遣事業許可番号]派13-304122
[有料職業紹介事業許可番号]13-ユ-303702

取材日:2020年3月18日

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