老後が不安なシニアや働き方改革に悩む企業をサポート~FP/社労士 塚越一央氏インタビュー

老後が不安なシニアや働き方改革に悩む企業をサポート~FP/社労士 塚越一央氏インタビュー
41年にわたり都市銀行とシンクタンクで勤務した塚越一央氏は、相談業務の中で経営者に喜んでもらうことが自分の喜びとなると実感し、定年退職後に独立開業。

塚越FP社労士事務所は、働き方改革、労務問題など中小企業経営者を支援するとともに、個人の老後問題などについての相談にも対応している。

企業の働き方改革への対応やシニアの不安について、今、どう考えるべきなのか?塚越一央氏に伺った。

相談業務を通じて、「お客様に喜んでいただくこと」が自分の喜びに

塚越さんは、直近まで三菱UFJリサーチ&コンサルティングにいらっしゃったのですね

学卒後、三菱UFJ銀行に入行し、出向転籍していた三菱UFJリサーチ&コンサルティングを2019年5月に65歳で嘱託定年になりました。トータル41年間のサラリーマン経験でした。

リサーチ&コンサルティングはさまざまな情報を提供する会員サービスがあり、会員企業から経営や法務、労務などさまざまな相談をいただくのですが、その相談業務に携わっていました。

相談されたお客様に対応して喜んでいただけた経験が自分の喜びと感じるようになり、独立を考え、じつは60歳で始めようかとも思っていたのですが、結局定年延長になったので、65歳での独立になりました。

会員はどういう企業が多かったのですか?

基本的には銀行の取引先が中心で、規模は様々ですが、相談してくださるのはどちらかというと中小企業のお客様が多かったですね。

相談内容は法務、経理関係、労務の3つが柱で、具体的には多岐にわたるのですが、とくに中小企業の経営者の場合、相談する人が社内になかなかいないということでした。

もちろん自分の手に負えないような案件は社内の弁護士や税理士につなぐのですが、本当に感謝されることが多かったです。

それで、そういう困っている中小企業がたくさんあるということを実感したわけです。

お客様に喜んでいただくことが私の基本になり、お客様が困っていることを解決したり、こうしたいという夢を実現させるための提案をしたりしていくことが、私にとっての生きがいになりました。

今、具体的に行っていらっしゃる業務は?

最近は相続問題、リタイアメントプラニング、その他、社会保険労務士業務のご相談をお電話や対面でご相談を受けることが多いですね。

今後は社労士としてのコンサルに比重をかけたいと思っており、将来的には中小企業の法人並びに経営者個人の資産のコンサルもやりたいと思っております。

漠然とした老後の不安をもつ人が多い

塚越FP社労士事務所 塚越一央氏

相続や老後を心配されている方は増えていますか

2019年11月にFPフォーラムという無料セミナー・相談会が神保町であって、私もセミナー講師と相続相談を担当したのですが、そこへ来られる方は本当に困ったり、不安を持っていたりする方ばかりでした。

年齢的には50代を中心に40代、60代でしたが、ちょうど50代というのは親の相続問題を抱えている方が多いんですね。

どういうご相談が多いのでしょうか

2015年に基礎控除が下がり、相続税を払うことになるかもしれないという不安ですね。都内に土地やマンションを持っているような方は大体該当してしまいますから。

ちゃんと相続税が払えるのだろうかとか、そもそも親の財産がどのくらいあるのかわからない、といったお悩みがありました。

もっと親御さんとコミュニケーションすればいいとも思うのですが、昔の人はなかなか財産のことなど話してくれない人が多いので、聞き方とか調べ方についてお話させていただきました。

漠然と不安があって、何から始めればいいのかと

そうですね、分からない。
親御さんもそうですが、ついでにご自分の財産もどのくらいあって将来的にはどうなるのかということも、ちゃんと絵を描いておいたほうがいいですよとアドバイスします。

そういう局面は必ず来る話ですから、早くご準備したほうがいいというのが基本ですね。

相続対策としては、生命保険を活用する方法などもあるそうですが

保険会社にはすぐ請求できるので、遺産分割より先にキャッシュは入ってくる利点がありますね。

ただ、従来は完全に遺産分割して、協議書を作って銀行に持って行かないと下ろすことができませんでしたが、2019年に大きな法改正があり、相続人は相続税の支払いや葬儀費用は銀行口座から下ろせるようになったので、従来ほど困ることはなくなったと思います。

老後不安に備えるにはライフプランが必須

お客様の相談事例を紹介してください

早期退職され、それなりに退職金は出たのですが、年金だけで大丈夫なのか不安だというお客様がいらっしゃいました。

こういう方はライフプランニング表を書いてみれば、大丈夫かどうか明確に分かるのですが、ぼんやりした不安をもっているんですよね。

「老後2千万円問題」の騒ぎもあって

お金の入りと出がどうなっているのかをちゃんと出して、将来的にこのくらいの年金がもらえるのかが分かれば、安心できる話なんですよ。

だからこういったご相談を受けた場合は、ひと通りお話を伺ってフロー表に落とせば、足りないのか、あるいは少しずつプラスになるのか分かるんですよね。

もしマイナスになるのなら、今の出費を少し減らす方向でいろいろ考えればいいわけです。

それがわかると、とりあえず安心できるわけですから、そんなに最初から悲観的になる必要はないんです。

ぼんやりとしか考えないから悲観的になったり、不安になったりするわけなんです。

不安ということでいうと、親の介護などもいつくるかわからない不安ですね

たしかに介護はちょっと覚悟しておく必要があって、私の親も今、特別養護老人ホームに入っているのですが、民間の老人ホームに入ると月30万くらいはかかりますから、それが5年、10年かかるとかなりの出費になります。

その分の蓄えはちゃんとライフプランに入れておく必要はあるとアドバイスしています。

介護保険は今後だんだん財政的に枯渇してきますから、非常に心配ですね。そのときのためにもより多く貯蓄しておかないと心配の種は尽きませんね。

――自分でライフプランを考えようとしても、老後資金だけではなく、介護や相続も含めて、全体で考えなければならないので、どこから手をつければいいのかわからず、不安になる方が多いんじゃないでしょうか

そういうことですよね、今後介護については、国はおそらく在宅介護を推進していくと思いますが、そうすると家族の負担が増えますから、どの程度できるかわかりませんものね。

私の親の場合も、父親が母親を老老介護していたのですが、父も90歳を過ぎて動けなくなってきたので、長男の私が乗り出していろいろ手続をしました。

町内会などにご挨拶したり、地域でどのくらい少しカバーしていただけるかも切実ですよね。

結局、父が先に亡くなって母親ひとりになったので、特養に入ることができました。

特養は月に10万円ほどですが、民間だと30万円かかり、かなり大きな差がありますので、民間の介護保険も視野に入れていかないと困る人が増えるでしょうね。

介護に関しては、介護離職が社会問題化しています

収入が途絶えますから、可哀想な話なんですよね。

年金は65歳にならないと出ませんので、簡単に離職していいのかと思うのですが、そうせざるを得ない事情があるのでしょうね。

辞める前に、ご両親が住んでいる地域の役所なりの状況を確認して動いたほうがいいと思います。

ご自分が会社を辞めてまで面倒見るのは、私はあまり勧めません。

――企業も人材不足ですから、できれば辞めてほしくないという思いから、少しでも両立しやすいようにしてあげる企業もありますすね。

出勤せずにテレワークでできる仕事であれば、会社側にも導入するメリットはあると思います。

新型コロナウィルスの感染予防でテレワークに理解を示す会社が増えましたから、今後うまく広まるといいと思います。

――40~50代だと、老後の資金繰りが目前に迫り、子どもの教育費の問題を抱えている人も多いと思います。親は亡くなるわ、自分の老後も心配だわ、まだローンは残っているわ、子どもは大学行くわ、という年代ですよね。

最近は晩婚化していますから、そういった問題が一度に来ることもあるでしょうね。

私は子どもの教育費が終わったと思ったら、今度は親の介護問題が来たので、まだよかったんですが、同時に来たらつらかったでしょうね。

そういうときのためにも覚悟してライフプランを立てて、少しずつ積み立てるなど対策をしていかないと、漠然と不安がっていても精神衛生的によくないし、どうしようもありません。

漠然とした不安をひとつずつ解きほぐしてあげると、ほっとできる?

ちゃんと見えてくれば安心されますし、「じゃあもっと頑張らなくちゃいけない」というふうにモチベーションも上がってきます。

いついつまでにこのくらい貯めようという目標ができれば、人間、頑張れますから。

不安を抱えていると仕事のモチベーションも上がりませんから、目標を明確にすることは非常に重要だと思います。

シニアの再雇用など、これからは生き方も変わっていきますね

私も定年延長して、おかげさまで健康なものですから、苦もなく65まで働くことができましたが、元気なシニアは増えていますし、生きがいにもなってきますから、働けるうちは働いたほうがいいと思います。

社会と関わることも大事ですよね

大事だと思います、シニアも自分の経験を若い人に伝えるという意味で、お互いに意味があると思います。

企業にとっては、労働力不足をどう乗り越えるかということが近々の問題だと思いますので、そこにシニアの力を借りることはひとつの手だと思います。

仕事の仕方を変えることが時間外労働を減らすことにつながる

今後、社労士としてはどんな支援をしていきたいですか

昨今の働き方改革で私が注目しているのは、時間外労働の縮小と有給休暇の取得推進です。各企業や従業員の皆さんがどの程度それを意識していけるかということですね。

私もサラリーマンでしたから分かりますが、従業員からすると、時間外を減らせと言われても、こんなにたくさんの仕事を抱えているのだから無理という話になると思います。

でも、自分の仕事を箇条書きしてみれば、「これは今やらなくてもいい」「これは誰かに頼んでもいい」という優先順位をつけられるようになりますから、自分の時間をつくる余裕もできるはずです。

この仕事はこういうふうにやったらもっとうまくいくんじゃないかと考えることもできるようになり、どんどん時間が圧縮できると思います。

1日8時間の労働の中に無駄な時間が結構あるはずですから、従業員もそういうことを意識して、時間外労働を減らす努力をできるのではないでしょうか。

時間に追われているようで、じつはダラダラしているという。急がば回れですね

自分自身、サラリーマンやっているときにそういうことを感じていました。典型的なのはダラダラ会議で、何の意味があるのか、非常に無駄ですよね。

時間を決めて、その時間内に結論を出すという意識で皆が会議に臨めば、ちゃんと濃度の濃い会議ができると思うんです。

だから働き方改革は、もちろん会社側も意識する必要がありますが、従業員一人ひとりがそういう意識を持ってやることが必要だと思います。

会社側がすべきことはどういうことでしょうか

厚労省が時間外労働の上限を決めましたから、上司もただやれと言うだけではなく、実態がどうなっているのか自分で確認して、どこが大変なのかを見てあげないといけないと思います。その辺がおろそかになっていることがよくあるような気がしますね。

自分の仕事を箇条書きにするというのは、上司がそれを部下に命じて、そのリストを見て、「これは〇〇にやらせよう」と判断すればいいんです。

その結果、従業員を増やさないといけないかということも分かるかもしれませんよね。そういうコミュニケーションももっと取らないといけないと思います。

残業ができないからカフェで仕事をしている人が増えたという統計がありますね

ちょっと危険だし、改革の趣旨からも外れていると思います。そんなことを考えるより、もっと密度の濃い仕事をすることを考えるべきなんです。

やむにやまれずということもあるんでしょうけれども、それに甘えてダラダラやっている可能性もあるんですよね。

業務によっては、お客さんの都合に合わせなければならない仕事もありますから、自分だけでは決められない場合もあると思いますが、それでもやはりやり方はあると思います。

同一労働同一賃金が進まない現状がある

働き方改革では労働時間の問題をはじめ、様々な制度変更が伴っていますが

同一労働同一賃金も待ったなしで、会社にとっては要するに給料を上げなければいけなくなるので、なかなか頭の痛い話だと思います。

いくらの給料でこういう仕事をやってくれ、というのが本来の同一労働同一賃金ですから、仕事とお給料がちゃんと見合っているかどかを見きわめなければいけないわけです。

派遣会社のお客様で、派遣労働者も同一労働同一賃金の対象ですから、給料を上げなければならず、派遣先からその分をいただかなければならない。

だから派遣先にとっても使用料が増えるという話ですから、派遣先も派遣元も納得した上で人を派遣しなければなりません。

国もよく実態を確認しながら進めないと、掛け声だけでは分かりにくくて、ちゃんと企業の側に浸透しているのかはなはだ疑問で、実態はかなり遅れているという印象です。

それなりに大きな会社で、社員食堂の定食の値段が社員と派遣で違うという例もあるそうです

それはいけない、もうそれは認められないですね、待遇は一緒にしなくちゃいけない。

大企業はこの4月から同一労働同一賃金に移行しますので、中小の派遣会社も大手企業に派遣している場合はやらなくてはならなくなります。

だから皆さん慌てて準備している状況で、経営者の方も意識改革が必要です。

報道はされているし、本もたくさん出ていますが、それでもなかなか進んでいないのですね

まだ手を付けてない会社もたくさんあります。派遣会社の場合、派遣先の企業に増額分を要求できないということがあるようで、さらに就業規則も変えたり、労使協定を結んだりということがあります。

仕事の内容が社員と異なる場合は同一賃金でなくてもいいわけですよね

正社員と派遣社員の違いは、正社員は転勤を拒否できなかったり、役職者なら部下の労務管理が業務になっているということですから、その辺を明確にした上で賃金を変えるならいいわけですが、そのへんが曖昧なわけです。

きちんと明文化したり、派遣社員自身にも説明しておき、なぜ給料が違うのかと質問されたら説明できるようにしておかなければならないわけですが、その辺が非常に曖昧という実態があります。

それをちゃんと明文化しましょうということが働き方改革の眼目だと思うんですけどね。

今までも年功序列なり、能力給なり、いろいろなことがやられてきましたが、必ずしもうまくいっていません。

これだけの仕事をしたらこれだけの給料を払うということがちゃんとリンクしておらず、高い給料もらって指示しかしないような「働かない上司」すらいたりするわけですから、まずいわけです。それは会社にとってもマイナスですからね。

最後に、今後の展開について伺います

セミナーや相談会の場を利用してアピールする機会を増やそうと思っています。

私の持っている知識をお客様にどんどんお伝えしたいですね。

FPとしては銀行員時代からやってきたことなので自信もありますが、社労士の仕事は始めてまだ1年ほどなので経験が浅いので、そちらの比重を重くしようと思います。

名称 塚越FP社労士事務所
代表者 塚越 一央
住所 〒103-0014 東京都中央区日本橋蛎殻町2-14-5 KDX浜町中ノ橋ビル5階 トムズコンサルタント内
電話番号 03-6909-2166
営業時間 9:00~17:00
定休日 土曜・日曜・祝日・その他
主なサービス 働き方改革コンサルティング、労務問題コンサルティング、助成金申請支援、就業規則作成、FP相談、相続対策、リタイアメントプランニング
ホームページ http://www.tsukafpsr.jp/

取材日:2020年3月16日

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