あきらめずに知ることで不安は解消でき、道がひらける~And Asset 前田菜緒氏インタビュー
子育て、家事、仕事に忙しい子育て世代のママたちは、お金のことは難しいと後回しにしてしまいがちで、中には「うちは教育費がかかるから、家計は良くならない」とあきらめてしまう人も。
「でも、家計ときっちり向き合えば、改善策は必ず見えます」とAnd Assetの前田菜緒氏は言う。
自らも子育てをしながら会社勤務の経験がある前田氏の親身なアドバイスや提案に、一歩前進できたという相談者の声も多い。
お金のことと向き合って、将来への不安やモヤモヤを解消する方法について伺った。
とても意識の高いお客様に恵まれています
前田さんはもともと保険会社にいらっしゃったのでしょうか?
保険代理店で、生保、法人もやっていましたが、職域部門が長かったので損保が多かったですね。グループ会社に対する自動車保険などの団体保険で、自動車保険や火災保険がメインでした。
FPの資格を取ったのは2005年で、その保険代理店の前の会社にいたときですので、保険代理店に入る時点ですでにFPとして独立したいという気持ちはありました。
資格をとって思ったことは、これは知っているのと知らないのとでは大違いだということです。
お金のことは絶対知っておいたほうがいいのに、知らない人がたくさんいるという衝撃を受け、これはたくさんの人に広めたいという気持ちが生まれました。
もともとお金のことに関心がある素地があったのですか
もともとは、税金って何なの、どうしてこんなに給料から社会保険料が引かれるの、と思うぐらいお金に関して知識もなく、全然分かりませんでした。
保険についても全然興味もないし、訳分からないという状態だったんです。
でも、社会人になって少しずつ貯蓄ができてくると、銀行にお金を置いていても仕方ないなと思いはじめて、増やしたいなという気持ちが生まれて、勉強を始めました。
保険代理店に入ったのも、ステップアップして10年後に独立しようという気持ちがあったからでした。
独立して、思い通りに進んでいますか
思い通りというわけではありませんが、こういった方に来てほしいと思っていたような意識の高いお客様に来ていただけています。
当たり前かもしれませんが、お金を払ってFPに相談しようという方ですから、意識は高く、どうにかしなければいけないと思っていらっしゃっている。
そういう方は実行力も高いので、必ず良い結果が出るんです。
私がアドバイスしたことを時間をおかずにすぐ実行してくださるので、目に見える効果がすぐに出てきますね。
そういう方は積極的に情報収集をしていて、それで知識のレベルがどんどん上がっていらっしゃいますね。
最初に聞くのは、相談者様がどうなりたいかということ
お客様は子育て世代の方が多いのでしょうか
そうですね、30代、40代。50代の方からも、資産形成の方法についてご相談されます。
私もそうですが、小さなお子様を持つママ世代はなかなか自分の時間を取りづらいので、子どもが寝てからでも相談していただけるように、オンラインや夜間の相談も受けています。
子育て世代のママ目線でお金の相談できるところはあまりないのでしょうか
私自身、子どもが小さいときは思うように行動がとれず、美容院にもなかなか行けなかったりしました。
でも、そういう理由でお金のことを考えるのが無理だとは皆さんには思ってほしくないと思っています。
ママ世代が悩んだり迷ったりしていることはどのようなことでしょう
やはりライフプランということで、子どもが生まれた後の家計管理、教育費、老後資金とをどのように考えていけばいいかという相談が多いですね。
今のままでいいのか、いくらくらいまでなら住宅を購入できるのだろう、ということですね。
ご相談を受けてアドバイスをするとき、まずやってもらうことは?
まず、相談者様がどうなりたいかということを最初に聞くようにしています。
どうなりたいかという内容は様々ですが、たとえば老後のためにお金を貯めたいとしたら、「ご自身の年金がどれくらいになるかご存じですか」という質問から入ります。
「ねんきん定期便」からご自身で年金額を計算していただき、その金額で生活していくことができるかどうかを見てもらいます。
もしその金額では生活していけないと思うなら、今から貯めていかないといけないよね、と納得していただき、そこから計画を立てていきます。
基本的にお勧めする資産形成の手段は、つみたてNISAやiDeCoなども中心になるのでしょうか
国の制度ですし、節税効果が高いので、まずその二つはお勧めします。とくに老後資金であればiDeCoは最強だと思いますので、それで足りなかったらつみたてNISAもお勧めすることになります。
個別の投資をお勧めすることはあまりない?
私自身、金融商品を売る資格は持っていないので、個別商品をおすすめすることはありません。また、今のお客様の中にはそこまでリスク許容度が高い方はいらっしゃらないので、iDeCoやNISA以外をお勧めすることもありません。
ただ、リスク許容度が高い方がご相談にくれば、選択肢の一つとしてそれ以外の方法もあることをお伝えさせていただくかもしれません。
情報収集して勉強されている方でも、前田さんに聞いて初めて知るようなこともありますよね
たくさんあると思います。
最近あったことだと、児童手当の要件となる所得制限について勘違いしているお客様がいらっしゃいました。
所得制限というのは収入ではなく、給与所得控除後の金額ですので、源泉徴収票を見なければならないんです。
これはiDeCoなどをすることで所得が少なくなるということにもつながりますね。
その方は、収入が丸ごと対象となると勘違いしていたので、働き方を変えて収入を下げようとしていました。それでは生活がきつくなってしまいますから、働き方を変える必要はないとアドバイスしました。
そういう勘違いをしている人はたくさんいそうですね
はい、たとえば産休、育休についても、制度を正確にご存じないお客様はたくさんいらっしゃいます。
たとえば、選択制確定拠出年金をはじめるタイミングで、もうすぐ産休、育休に入るかもしれないという方がいらっしゃいました。
確定拠出年金は将来のために続けたほうがいいわけですが、でも、それをすることで将来もらえる年金や産休、育休手当ての額が少なくなることもあるということをお伝えしました。
大体このくらい少なくなるから、だったら産休、育休をとる前から掛け金を引き下げておくという作戦もあるよね、ということですね。
どちらを選ぶかはもちろんご本人にお任せするのですが、知識としてご存じないと、判断を間違えることはあると思います。
女性の働き方、老後の問題について
昨今では働き方改革などによって働き方が変わる例が増えていますが
やはり女性は働き方について悩むことが多いのではないかと思います。
私のお客様は、年収130万以内に抑えて働こうという方はほとんどいらっしゃらず、正社員で働いている方ばかりなのですが、世の中には、会社員の配偶者に扶養される第3号被保険者の要件である「年収130万円の壁」を意識して働き方を抑えている人がとても多いと思います。
私はそれを逆にすごく損で、すごくもったいないことだと思っているんです。なぜなら、自分自身の老後の年金を減らしていることになりますし、キャリアアップにもつながらないからです。
そして、その壁もどんどん低くなってきていて、今後は「106万の壁」が中小企業にも適用されるようになってきます。
これからは、女性もそういうところも考えつつ、自分の収入を増やして自立することを考えていってほしいという気持ちがあります。
制度としては、産休や育休、あるいは職場復帰の問題もあります。企業の制度が追い付いていないと感じることはありますか
そういったところであれば、男性が育休を取りづらいという社会環境があるということは感じますが、同時に、男性が育休をとることを必ずしも女性が望んでいないケースも実際にはあります。
あなたは別に育休とらなくていいよ、あなたがいても何の役にも立たないのだから、ということですが、それはそれでよく分かります。
でも、そういうふうになってしまうそもそもの原因を考えると、やはり「男性は働いて女性は家庭を守る」という昔からの考えが根底にあるからだろうと思います。
男性が育休をとり、本当の意味で、夫婦で子どもを育てることができるようになれば、女性の社会進出も進み、少子化問題に対してもいい影響が出てくると思います。
「老後2千万円問題」の報道を受けて、知識がある人は驚きませんでしたが、何も考えていなかった人は「えっ?」となりました。あの報道はショック療法になったと思うのですが
まさにその通りですよね。
お金のことを知れば、どう考えても銀行に貯蓄するだけでは足りないので、やはり資産形成は必要だという思考回路になってくるんです。
まずは現実を知ることですね。
それはまずライフプランを立ててみる、いつどのくらいお金がかかるかを書き出してみる?
そんなにたいそうなものを作る必要はありませんが、何年後にはいくら貯めたいという目標を作ることは必要です。
たとえば老後資金が不足することが分かっているから毎月3万円を積み立てているという人と、ただ何となく3万円積み立てている人では、おそらく老後に対する不安の持ち方が全然違ってくると思います。
だからやはり、まずは知ることからなんですね。
目標を立てて、何のために貯めるかという意識を持ち、普段から情報を集めるということですね
新聞、雑誌、ネットなど情報はたくさんあり、溢れすぎていますよね。
ひと口にマネー情報といっても様々な分野がありますから、まず自分はどの分野のことを知りたいのかと絞り込むことから始めないといけないと思います。
自分は何のことに悩んでいるのかをクリアにして、「お金貯めないといけないな」とぼんやり思うのではなく、何のためにお金を貯めたいのか、何年後にいくらのお金を貯めないといけないのかということを明確にすると、情報は自ずと絞られて、探しやすくなると思います。
子どもの選択肢は狭めてはいけない
ご相談されたお客様のエピソードを紹介してください
心臓に障がいを持たれているお客様が、子どもが生まれる前にご相談に来られたことがありました。
自分は障害を持っているし、保険に入れないのではないかということでしたが、そのとき奥様が妊娠されていて、自分は子どもと奥さんのふたりを養っていけるだろうかというのです。
具体的にはマイホームの購入を考えていらっしゃったのですが、希望するマイホームは購入できるのか、団信に入らないと、自分に何かあったときにローンが残ってしまうということで、大きな不安を抱えていらっしゃったのです。
結局、ライフプランを一緒に考えることで、マイホーム購入の道がひらけ、団信に入ることもでき、今はお子さんと一緒にマイホームで過ごされており、ご本人はもちろん、私もそれはすごく嬉しかったです。
あとは老後の不安をもっている方ですね。
年金の加入期間が短いためにすごく年金が少ないのではないか、どれだけ暗い老後が待っているんだろう、今以上にもっと働かないといけないのかと不安を持っていらっしゃって、その時点ですでにかなり働いている方でした。
ただ、実際に年金を見積もってみたらそうでもないことがわかり、iDeCoの運用についてもアドバイスしたら、それだけですごく安心されて、その夜は祝杯をあげたとおっしゃっていました。
ライフプランの上で、一番怖いリスクは何でしょう
やはり万一のケース、稼ぎ手が亡くなってしまい、保険も十分ではないということですね。
保険に入っていない方もいらっしゃいますが、お子さんがいたら最低限は必要ですから、それに勝るリスクはないと思います。
あとは働けなくなった場合のリスク、それこそ軽度な障がいで中途半端にしか稼げなくなり、今まで通りの収入がなくなることもひとつのリスクですよね。
うつ病などでも障がい者手帳がもらえる場合もあります。
前田さんが心がけていることを教えてください
相談して人生が変わった、本当によかった、またお願いしたいとお客様に思っていただけるようにという気持ちでやっています。
私が意識していることは、人生の選択肢を広げるということです。
とくに子どもの進路などで、お金がないからあきらめることがないように、という強い気持ちを持っています。
子どもがこう進みたいということに対して、全額ではなくてもある程度の補助をしてあげられるくらいは用意しておきましょう、選択肢を狭めないように用意しておきましょう、ということですね。
あきらめずに知ることで道がひらけるということですね
私が解決できる問題ではありませんが、子どもの貧困問題で自分がお手伝いできることは何かないかという気持ちがあります。
いわゆる貧困家庭に育ってきた子は、進学したってお金使うだけだから働いたほうがいいじゃないかということで、そもそも進学する意味が分からない子もいます。
でも、やはり学歴と収入は100%ではないにしろ、結びついているものですから、結局進学しないことは貧困の連鎖になってしまうんです。
だから勉強する意味が分からないと子どもには思ってほしくないです。
塾に行くお金はないけれども、地域でボランティアさんが教えてくれるところもありますので、勉強は楽しくないと思って大学に行くつもりはなかったけど、そういったところを利用して一生懸命勉強をして、進学をした子もいます。
一方で、それまで親にも進学したいと伝えていたのに、三者面談のときに、「うちには進学させるお金がありません」と親にズバッと言われたお子さん、進学したいけどうちはお金がないからと親に言い出せないお子さんもいます。
そうした子どもたちの未来が閉ざされてしまうのはつらいという気持ちがあるので、とくに子どもの選択肢は狭めないようにしていきたいと思っています。
名称 | And Asset |
代表者 | 前田 菜緒 |
所在地 | 東京都中央区銀座一丁目15番7号 MAC銀座ビル3階 |
電話番号 | 050-5583-5284 |
取扱分野 | 企業型確定拠出年金導入コンサル・導入サポート・継続研修、セミナー、執筆、確定拠出年金・ライフプラン・保険・資産運用・教育費・住宅ローン・家計見直しなどのご相談 |
ホームページ | https://www.andasset.net/ https://fpsdn.net/fp/nmaeda/ |
取材日:2020年3月23日