お店を出したい人と貸したい人をつなぐ「軒先ビジネス」誕生秘話~軒先株式会社 代表取締役 西浦明子氏インタビュー

「軒先ビジネス」誕生秘話 軒先株式会社 代表取締役 西浦明子氏インタビュー

西浦明子氏(軒先株式会社 代表取締役)

 

「シェアリング」の概念も生まれていない2008年に「軒先ビジネス」をスタート

ビジネスを始めた背景、それまでのご経歴をお聞かせください

大学卒業後、ソニー株式会社に入社して南米のチリへ約6年間駐在しました。

帰国後にはインターネット事業会社や外務省の外郭団体などに勤務しましたが、出産を機に退職し、育児をしながらできることはないかと考えていました。

最初はスペイン語を活かして翻訳などのお仕事ができたらいいな、というぐらいの気持ちで、駐在していた南米の雑貨を輸入してネットショップを開こうと思っていました。

たいそうな事業を考えていたのではなく、家で育児をしながら趣味と実益を兼ねてお小遣い稼ぎくらいの気持ちで、日本であまり売られていない商品を売ろうかなという気持ちでした。

チリって鉱山が有名で、鉱物がたくさんとれるので、錫でできた食器があるので、その輸入をしたかったんです。

当時は小売の経験もなく、本当に素人でしたが、ネットショップの前にテスト販売をしようと思って、本格的に輸入する前にサンプルを取り寄せ、お客様の反応をみるために、短期間でいいから借りられる店舗を探したのですが、適当な場所がなかなか見つからないんです。

短期間で小規模スペースという条件で借りられる店舗が、いくら調べてもいっこうに見つかりませんでした。

これは……ということから「軒先ビジネス」を思いつき、起業するきっかけになりました。

需要があるのではないかと思われたのですね

長期で借りるか、フリーマーケットでやるか、という選択しかないことがわかったときに、同じように短期でお店を開きたい人というのは他にもいるのではないかと考えました。

商店街や商業施設に行くと、物産展をやっていたかと思えば、翌週には1980円のスカーフを売っていたり、100円でCDを売っているような謎のウィークリーショップってありますよね。

調べてみると、そういう短期販売で出店するような週貸し店舗事業をする業者が2社ほどあったんです。

月極め店舗を借り上げて、週単位でサブリースするような会社ですが、そういう事業者を介して借りると、立地は良いのですが、3坪弱で1週間21万円と高いんです。

しかも、聞いてみたら半年先まで予約一杯でした。

そこで、立地が良ければ賃料が高くても借りたい方はたくさんいるし、月貸しのテナントも、ウィークリーという細かい単位にすることで、貸す側では利幅が膨らむ、ということに気づきました。

借りる側からすれば、高い保証金や敷金を払わず、1週間の賃料のみでリスクを抑えて一等地に出店できます。

坪単位では高くても初期投資が要らないから出店側のリスクも少ないし、これはなんていい商売だろうか、とそのとき思ったんですね。

店先の空いたスペースを貸したい人、借りたい人をつなぐビジネス

軒先株式会社 代表取締役 西浦明子氏

ビジネス的なひらめきですね

ただ、私がその一等地の場所を抑えるのも難しいですし、そこをサブリースで回そうとすると、借り上げには必ずリスクが伴いますから、とても私には無理だと思いました。

商売する以上は立地が良くないと売れないですから、ちゃんとした店構えがなくても、ある程度人通りがある場所さえ押さえることができれば、店舗になります。

そもそも使ってなかったような、それこそ「軒先」のような場所でも、1週間21万円は無理でも1週間2万1千円なら、ちょっと試してみようと思うはずです。

1日当たり3000円の手軽さでお店を出店できる場所が確保できたら、どなたでも気軽に「ちょっとお店を出してみようか」と思えるのではないでしょうか。

もしかしたら私と同じように短期のお店を開きたいという潜在的なニーズがあるんじゃないかと考え、元々は自分が使いたいと思っていたのですが、そこで、そういった場所の提供をするというふうに考え方が変わりました。

見合う場所やサービスがないだけで皆さん出店を我慢しているけど、もしかしたら意外に需要はあるのではないか、だったらその需要に応えるビジネスをやってみようと考えました。

今までにない、新しいスタイルのビジネスの誕生ですね

雑貨輸入販売は、事業としては珍しくもなんともないサービスですから、今すぐやらなくてもいいけど、このサービスは新しいし、誰もやっていない、誰かが気づいて始める前に形にしたいと強く思いました。

その時点ではニーズがあるという確証まではもっていませんし、この事業がすごく伸びると思っていたわけでも、事業計画を作っていたわけでもなく、まずトライアルでやって、うまくいったら本格的にやればいいと考えていたんです。

だから最初の1年間は法人化せず、個人事業として「軒先ドットコム」というサイトを2008年4月に立ち上げました。

不動産ビジネスの中でもニッチな分野に目を付けた

不動産ビジネスの中でもニッチな分野に目を付けた西浦明子氏

西浦明子氏(軒先株式会社 代表取締役)

  

貸し出すスペースは、西浦さんが足で見つけたのですか

当時はまだシェアリングという概念がありませんから、オーナーさんにご理解いただくのはとても大変でした。

ドアノックで近所の商店街のお店を回って、定休日のシャッター前のスペースを貸して下さいと頼みました。

そのうちにに「営業中でも貸してあげるよ」と言ってくださる方がポツポツと出てきましたね。

自宅の近辺でしたが、出産直後で体力もなかったので(笑)、サイトを始めた当初の登録物件は数件でした。

この「物件を貸してください」のお店周り営業は、夫に手伝ってもらいましたね。
夫はまったく違う仕事をしているんですが(笑)。

うまく回りはじめたのはいつ頃でしょうか

そうですね、やはり類似サービスの業者が出てこられた頃からでしょうか。
周りの見る目が変わったというか。

それまでは、取引先もそうですが、投資家もシェアリングは伸びない、流行らないと言いきる方がいたんです。

スペースシェアリングの市場のプレイヤーは我々1社しかいなくて、その領域には誰も入ろうとしてこなかった状況でした。

でも、アメリカや欧米ではAirBnBやウーバーなどのシェアリングビジネスがものすごい勢いで伸びてきていました。

「日本では流行らない」という方も中にはいましたが、全世界的なトレンドになり、若い方の意識も変わり、不動産に限らず自分の持っているモノを資産化したいと考える方も増えて、SNSの盛り上がりやスマホの登場など、様々なタイミングがちょうど合わさったんです。

参入する方も増えて、「シェアリングビジネス」を見る目も変わり、「日本もシェアリングの時代だね」などと皆さんが言うようになってきました。

不動産ビジネスの中では、どのような位置づけになりますか

スペースシェアリングは、不動産ビジネスのマッピングで言うと、「不動産活用」の一番ライトな形です。

大きな事業用地を仕入れ、開発してどなたかが占有する、というのが「不動産活用」の王道ですが、我々のビジネスでは開発しませんので、軽薄短小モデルです。

通常の不動産のタームになる1年単位ではなく、現状有姿で1日単位で、通常の不動産流通に乗らないような土地建物物件ばかり扱いますから、不動産業者にとっては競合とすら思われません(笑)。

通常の不動産の売買では取り扱わないような場所をインターネットで扱ってる人という立場で、ニッチで面倒そうなところ、儲からなさそうなところを頑張ってやっているね、という感じで見られてきました。

ここ数年のことですね、日経新聞が「シェアリングエコノミー」という言葉を使いはじめた2013、4年頃からカーシェアリングなどが一般的になり、モノのシェア、不動産のシェアがどんどん一般的になっていきました。

創業当時はなかなか理解されなかったものですが。

競合サービスも多々あるようですが、妨害はありませんでしたか

まったくなかったです。
スペースシェアの業者は、小売だったり、イベントやパーティー、会議室、駐車場、民泊、コリビングや畑のシェアリングまで、たくさんいます。

皆さん得意とする領域が決まっていて、専門化してきていますので、すっかり同じ領域でかぶっているということはないですね。

でも、スペースシェアという大きなくくりでは、プレイヤーはかなり増えました。

業界全体で不動産をいろいろな形でシェアするプレイヤーが増えているので、オーナーさんの立場からみると、格段に選択肢が増えたと思います。

スペースシェアリングは参入しやすいビジネスなのですね

民泊は別ですけど、現在、スペースシェアビジネスには許認可が特に必要とされていませんし、既存の不動産業者とバッティングするかというと、そんなこともないんです。

既存の不動産賃貸ビジネスで、その中で契約が決まらない物件をシェアで埋めましょう、というのが我々の元々のスタンスです。

24時間365日キャッシュを生んでいるわけではなく、運用できてないところを埋めるということですから、民泊やホテル業界を侵食するようなところには行ってませんし、新しい市場ができていると思います。

最初にスペースシェアのサイトをオープンされたそうですが、初期投資額はどのくらいでしたか

50万円ほどでしたが、最終的にはもう少し費用は増えました。

今ではいろいろなWebサービスがあるので、簡単に安価でいろいろなサイトを作ることができますが、当時はSNSもなく、そのようなサービスはほとんどなかったので、Webサイトを作る費用はとてもかかる時代でした。

我々がやろうとしていることはなかなか理解されませんでしたし。

不動産オーナーにはどのようにお話をしましたか

貸会議室みたいな事業です、と最初は説明し、会議室ではなく街なかの空いているスペースを貸し借りできて、予約できるサービスというふうに説明しました。

最初は5、6件くらいから始めましたが、初期の頃は利益など全然出ませんでしたので、事業化せずに私個人でやっていました。

2008年4月にサイトオープンして、6月に1件目、最初の予約が入りました。

忘れもしませんが、その方は日頃キッチンカ―でランチ販売をされていたのですが、私のサイトに掲載していた横浜駅西口の近くの空きスペースでランチ販売したいと予約してくださったんです。

今年で12年目になりますね。スペースを借りる層は今はどのような方が多いのでしょうか

キッチンカーなどプロの業者の方が圧倒的に多いですが、週末だけカフェをやってみたいという主婦の方、夏休みの間だけ飲食店チャレンジしたいという学生の方も増えてきました。

最近は、企業でも副業解禁の流れが一般的になりつつあるので、夜だけバーをやってみたいとか、週末だけ子ども向けの英会話教室やりたいとか、いろいろな使い方がされていて楽しいですね。

「週末カフェ」や「週末教室」ですか。働き方改革の影響もあるようですね。

今までは副業といえばWeb上の仕事などが多かったと思いますが、リアルの場での副業にはなかなか踏み出せなかったと思います。

もし始めようと思っても、ふさわしいスペースを見つけることはなかなかできなかったのではないでしょうか。

我々の提供する場所を使ってくださって、「週末起業家」ではないですが、期間限定でお店を開く方が増えてきました。

副業では、さすがにキッチンカ―など初期投資が必要なことをやる方はあまりいませんが、ユニークな例としては、週末だけタロット占いをする占い師さんが弊社のスペースを使ってくださっています。

趣味で個人で作ったアクセサリーを売りたい方は、今まではメルカリなどWeb上で売るしかなかったのが、お友達同士でお店を開いてみたいというふうに様々に使っていただいています。

上場に向けて新たなステージへ

上場を目指す軒先株式会社 代表取締役 西浦明子氏

大手企業との資本提携もされていますが、今後の展開についてお聞かせください

今後、資本提携のお話があったらケースバイケースで検討していきます。また、ご登録頂けるスペースをお持ちのオーナー様は、いつでもウェルカムです。

上場はいつ頃か、よく聞かれるのではありませんか

今はまだ明言できませんが、目指してはいます。

いろいろな方にご支援いただき、株主にもいろいろな方がいらっしゃるので、その方々のご期待に応えることはしていきたいですね。

社名 軒先株式会社
設立 2009年4月23日
所在地 東京都千代田区大手町2-6-1 朝日生命大手町ビル3F
ホームページ https://www.nokisaki.com/
主な事業 ・1日からお店が開けるスペースの検索・予約サイト『軒先ビジネス』の運営
・社会問題を解決するシェア型パーキングサービス『軒先パーキング』の運営
・飲食店のシェアサービス『magari』
・保険代理事業

取材日:2020年3月16日

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