人生100年時代の老後資金の考え方~Endeavour FP Office 代表 高山 和仁氏インタビュー
高齢化という軸で広がる活動の環
高山さんのご経歴を教えてください。
もともとは証券会社に就職したのですが、バブルが崩壊し、医療器械メーカーに転職して12年ほどマーケティングの仕事をしました。
海外の学会に参加して非常に勉強になりましたし、億単位のビジネスもまとめましたが、2002年頃に現場を離れ、39歳で退職しました。
その後、輸入雑貨やアイディア商品などを飛び込み営業で売る会社に、フルコミッションの給料でスカウトされて、3年ほどやりました。
8か月連続で全国1位の成績をおさめ、六本木ヒルズでオーナープロモーションされましたが、会社設立後、後輩にオーナーの権利も会社も全部譲渡し、お客様だった外資系保険会社に転職。
さらにファイナンシャル・プランナーの資格を取得して、2010年に独立しました。輸入雑貨や保険の営業で広げたお客様を対象に、自分のビジネスをはじめました。
独立してかれこれ9年目ですが、その間にエンディングノートを活用する上級終活インストラクターや、認知症介助士などの資格も取りました。
今は超高齢社会ですから、多くの人が抱えている問題は、老後資金の不安と相続の不安ばかり。そういった内容の問題に応えるイベントや、セミナー、無料相談会等を開催しています。
また、最近では、渋谷の社会福祉協議会の成年後見人職員として、特養や老人ホームの利用者様の法人後見事業に携わっています。
ファイナンシャル・プランナーであるだけでなく、上級終活インストラクター、法人後見事業と活動の幅が広いですね。
最近、「人生100年時代」ということがよく言われますが、高齢化を背景として、ファイナンシャル・プランナー、終活、法人後見という仕事はそれぞれリンクしているんです。その環を広げる活動をしている形ですね。
仲間にはテレビに出るなど派手に活動している方もいますが、僕らの立場はあくまでフェアでなければなりませんから、Facebookなどでも気をつかって情報発信しています。
3年ほど前に「日本アクティブライフ推進協会」という一般社団法人も作りました。弁護士や、司法書士、様々な士業の方と連携し、一緒にお金や土地、相続などの困りごとをワンストップで解決する協会です。専門家でも人を騙すようなことをする人が多くなっている中、私たちは真心で対応するというコンセプト(理念)でやっています。
どのような相談を受けることが多いですか。
最近すごく多いのは、相続のもめごとですね。
実は今日も中央区の主催で、相続に関する定期セミナー&相談会で話してきたんです。
法律の本を紹介したりするよりも、自分の身内まわりのリアルな実体験を話すと、皆さん、食い入るように聞いてくれます。当分は老後資金の不安と、相続をめぐるトラブル回避の話題が多いと思います。
まさに高齢化の波、人生100年時代の悩みですね。
未婚や少子高齢化の問題が言われますが、結婚できていない人は、概して親が長生きしている人が多いです。そして女性は同居することを嫌がります。
僕は、日本の社会はもう手遅れだと思っているんです。
団塊の世代が定年退職して労働人口が減ることは自然の流れで、避けようがない。今さら無理して子どもを産みやすくしても、産まれた子どもが成人して働けるようになるまで20年かかります。そんなに待てるほど悠長な状況ではないでしょう。
僕の考えでは、自分で稼いだお金は全部遣ってしまったほうがいい。
お金に関する相続もしなくてすみ、世界でもほとんど類を見ない「相続税」を払わずにすみますから、悩みごとも減ります。
人生100年時代、そうした老後資金の不安や、親の介護の問題、相続の問題に集中して起こって、皆さん悩まれています。
老後破産を回避できる方法とは
老後資金の準備はどのように始めればいいのでしょうか。
30~40代の人は、老後と言われても「私たちはまだ関係ない」と思ってしまうでしょうけれども、僕はその年代から考えはじめることをお勧めしています。
若くても死ぬ人はいるわけですから、まずエンディングノートを書いてみてはいかがでしょうか。
超高齢社会で、親と一緒に子どもも歳をとっていきます。
僕の父親も80歳を超えていますし、僕自身も今年55歳になります。
5年もすれば僕は還暦だし、父親は90歳近くなる。相続するといっても、僕のほうが先に死ぬかもしれません。
僕がバトンタッチしても、またすぐ誰かに相続しなければならないかもしれない。だから二次相続の心配をしなければいけないわけです。今、そういう人たちがとても多いんです。
親をどうするかを悩んでいる人も多いですね。
親が生きていてくれることは非常にありがたいことですが、僕の母親も最近認知症になってしまったので、昨年、車や家財を全部処分させて、父親と一緒に、地方からこちらに呼びました。
マンションの部屋に入れるぐらいまで身軽になってもらったんです。
今では父親も「身軽になってよかった」と言ってくれています。
親の世代は年金の支給額が適切ですから、それで暮らしていくことができるんです。
でも、僕は何もしないのももったいないと思っています。
長生きリスクということでいえば、次はわれわれが歳をとっていくわけです。
20年たてば僕も75歳。
老老の関係になり、どんどんしんどくなっていきます。
それに向けてお金も何かと必要になるわけですから、やはり働けなくなるまで働いていくしかありません。
もっとも、贅沢をせず、普通に分相応に生活するのには、莫大な蓄えは必要ありません。
シニアが働きつづけることは珍しくなくなっています。
今、老後破産という問題も起こっています。
公的年金を65歳より前でもらうか、後でもらうか、後期高齢者以降の損得が決まりますが、僕らがもらう頃には、公的年金のみでは生活するには足りない額になっています。
そこで、年金にプラスして、ちょっとしたパートの仕事などで8万円(/世帯)稼げば、老後破産は回避でき、老後の心配は要らなくなります。
「8万円」というのは、光熱費や諸費用の見直しなどをした上で必要という裏づけの計算をして出した金額です。
今でも働いているシニアはたくさんいますが、その頃には、80歳でも働くことはごく普通になっているでしょう。
シニアの働き方を考えるジェロントロジーも、いろんなところで盛んに研究されてきています。そういう社会の変化に応じて僕らも勉強したり、変わっていかなければならないと思います。
お金を借りることについて
▼ファイナンシャル・プランナーとして、お金を借りる必要に迫られている人へのメッセージをお願いします。
どうしてもにっちもさっちもいかなくなってしまったら、まずは身内に借りるのがいいでしょうね。
身内であれば場合によっては借用書も要りませんし、家族だったら非課税の枠内で贈与の扱いにすることもできます。
たとえば子どもの学費に必要なお金だとしたら、教育資金として贈与してもらうなどの方法もあります。
銀行はそう簡単に個人には貸してくれませんし、消費者金融や、ましてや闇金などのような反社会的なところには手を出さないほうがいいと思います。
完全にはまって、追いかけられたり、連帯保証などで家族も犠牲になるなど、不幸なことになると思うからです。
また、「生活保護」というのもひとつの選択肢です。
社会保障についての知識をもっていない人が多いのですが、生活保護も社会保障のひとつです。
生活保護をもらうのは恥だと思われがちですが、僕のお客様でも、交通事故で複雑骨折をして仕事ができなくなったので、いったん生活保護を受けて体が回復してから普通の生活に戻った人がいます。
そういう一時的な使い方も選択肢のひとつとして考えていいと思います。
見栄やプライドが邪魔して損をしている人も多いんじゃないでしょうか。一人で思い悩んで自殺してしまうようなケースもあります。
僕らのサロンなども、そういうときに悩みを相談して、すっきりする場として活用してほしいと思います。
今の世の中、殺伐としていますから、そういうときにお金がかかったり、お金で人を計ったりすることがとても多いですよね。
「あの人も同じ悩みをもっているんだな」というように悩みを共有できる場を作ることが僕らの仕事なんじゃないかと思っています。
所在地:東京都中央区銀座1-15-7 マック銀座ビル3階
代表者:高山 和仁
創立:2010年8月25日
従業員数:3名
業務内容:ファイナンシャル・プランナー/上級終活インストラクター/成年後見人/認知症介助士、他
会社HP:http://ja-jp.facebook.com/kazuhito.takayama
取材日:2019年4月1日