警備員が自己破産をすると働けなくなる? 期間は何年?
警備員というお仕事は、バイトで募集することもあるくらいなので特に必要な資格はありません。
ただし、警備員が債務整理(自己破産)をすることで仕事に影響が出ることがあります。
ここでは、警備員が自己破産をすると働けなくなるのか?期間はどれくらいなのか?解雇もありうるのか?警備会社に内緒で自己破産することはできるのか?など警備員と債務整理(自己破産)についてわかりやすく解説していきます。
警備員が自己破産すると「職業制限」がかかる
自己破産には、破産手続きが開始されてから免責許可が確定するまでの間、「職業制限」がかかってしまう職種があります。
警備員というお仕事も、この自己破産による職業制限に該当します。
そのため、裁判所に申立を行なって破産手続きが開始されてからの一定期間は、警備の仕事に就くことができなくなってしまいます。
すでに警備員として働いている人が自己破産をする場合は、警備の仕事ができない間だけ別の部署に回してもらうなどの相談が必要になります。
自己破産によって制限される職業
自己破産によって職業制限がかかる職種は大きく分けて2つあります。
警備員
ひとつは「警備員」ですが、警備業法第3条1では、次のように記されています。
▼第3条
次の各号のいずれかに該当する者は、警備業を営んではならない。
1.破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者引用: e-Gov「警備業法」
制限が開始されるのは、裁判所に申し立てを行って破産手続開始決定がなされた時になり、復権するのは破産手続きが終了した時です。
この期間は警備員の仕事に就けなくなるということになります。
士業
破産手続きが開始されてから免責許可決定が出るまでの期間は、他人の財産に関わったり管理したりするような仕事に就くことはできません。
そのため、「士業」と呼ばれる以下の職種にも就けないことになります。
・弁護士
・司法書士
・公認会計士
・税理士
・行政書士
・宅地建物取引主任者
・社会保険労務士
・土地家屋調査士
・旅行業務取扱管理者
・公証人
・証券外務員
・取締役
・商品投資販売業
・労働派遣事業者・役員
・証券金融会社役員
・信託会社
・信用金庫などの役員
・貸金業者
・質屋
・遺言執行者
・後見人、後見監督人
・保佐人、補助人
など
警備員も財産や人命を守るお仕事となるため、一定期間離れなければならないのです。
ちなみに国家資格が必要な仕事でも、看護師、医師、介護士などは自己破産の職業制限を受けません。
これらのお仕事は、財産を守るというよりも人々の健康や人命、健やかな生活を守るお仕事になるため破産手続き中もこれまでどおり働くことができます。
任意整理・個人再生に職業制限はないの?
自己破産以外の債務整理の方法として任意整理と個人再生が挙げられますが、これらには職業制限はありません。
警備員として一定期間働けなくなるのは、あくまでも自己破産を選択したときのみとなります。
自己破産で職業制限される期間は何年?
自己破産によって職業制限を受けてしまう期間は、破産手続開始決定がなされた時から破産手続きが終了するまでとなります。
この期間は「破産者」となり、この破産者の間だけは警備員として働くことができません。
免責が決定するまでに必要な期間は債務の内容などによって異なるのですが、破産手続開始決定から早い場合で3~4ヶ月、長くて6ヶ月程度と思っておきましょう。
自己破産が「同時廃止」になる場合は短く、管財事件(少額管財)となる場合は長くなります。
「破産者」について
自己破産をしたことがある人のことを破産者と表現することもありますが、法律上の破産者は「破産手続開始決定がでた状態」を指します。
破産手続開始決定が出ると破産者となり、職業制限が行われます。破産手続きが終了すると「復権」して、職業制限も解除されるのです。
自己破産をしたからといってずーっと破産者になるということはありません。
自己破産をすると警備員の仕事はどうなるの?
警備員として働いている人が自己破産をする場合の一般的な流れは次のようになります。
2.自己破産を委任する
3.債権者に「受任通知」をして取引内容の開示請求をする
4.申立に必要な書類を作成する
5.裁判所に申立を行う
6.破産手続開始が決定される
7.「同時廃止」または「管財事件」で手続きが進む
8.免責許可が決定されて借金が全額免責となる
警備員が働けなくなる期間は、6の破産手続開始が決定してから8の免責許可が決定するまでの期間になります。
警備員が自己破産をするときの注意点
警備員の方が自己破産をする場合、破産者の間は必ず職業制限を受けることになります。
できるだけスムーズに手続きを開始して速やかに制限が解除されるためにはどのような注意点があるのでしょうか。
早めに弁護士・司法書士に相談すること
自己破産の手続きは、自分で裁判所に行って申立をするのではなく、まずは弁護士・司法書士に相談して手続きを委任するのが一般的な方法です。
どうしても、「仕事に影響が出るから・・・」と思うと相談を躊躇してしまうかもしれませんが、自己破産を検討しようと思うくらいの借金問題を抱えているなら、早めに相談することをおすすめします。
全国の弁護士・司法書士が無料で債務整理相談を行っていますし、自分ではどうにもできないと思っていることでも専門家に相談をすることで別の道が開けることは本当によくあります。
また、自己破産以外の債務整理で借金を大幅に減額できることもあります。
自分にとってより良い方法を教えてもらうためにも、できるだけ早めに専門家に相談することをおすすめします。
警備員として働いている勤務先に相談すること
弁護士・司法書士からも案内があるかと思いますが、警備員の場合は自己破産をすることを勤務先に伝える必要があります。
できれば自己破産を内緒にしておきたいものですが、相談をすることで自分にとってもメリットがあるかもしれません。
破産者の間は警備員としての仕事はできませんが、自ら警備会社を辞める必要はありません。
例えば、破産者となっている期間だけ警備以外の仕事に就けてもらえるとしたら、これまで通りの勤務先で働くことができます。
いずれにしても勤務先には報告しなければならないため、自分の希望も相談してみると良いでしょう。
警備員と債務整理(自己破産)のよくある質問
警備員が債務整理(自己破産)をする場合のよくある質問をQ&Aでまとめます。
警備員が債務整理をするとクビ(解雇)になるって本当?
ここまで解説してきたように、自己破産の場合は一定期間警備の仕事に就くことはできませんが、警備以外の職種であれば退職せずに働き続けることが可能です。
また、任意整理・個人再生であれば職業制限そのものがありませんので、クビ(解雇)になることもありません。
法律的にはどうなっているのかというと、労働契約法第16条では次にように定められています。
▼第16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。引用: e-Gov「労働契約法」
任意整理・個人再生には職業制限がなく客観的に合理的な理由があるとは言えないため、債務整理をすることが理由でクビ(解雇)にすることはできません。
ただ、自己破産に関しては職業制限がかかることが解雇自由に該当するとされてしまう可能性は否定できません。
法律によって破産者の間は警備員になれないとされているので、クビ(解雇)にできる合理的な理由と判断されてしまうこともあります。
どうしても職業制限がかかると困ってしまうという場合は、自己破産以外の債務整理方法も検討する必要があるでしょう。
警備会社に内緒で自己破産することはできる?
できれば勤務している警備会社に内緒で自己破産をしたいものですが、内緒にするのはやめておきましょう。
なぜかというと、自分で言わなくてもバレてしまう可能性があるから。
債務整理のうち、自己破産と個人再生を行うと、「官報」に氏名・住所などが記載されることになります。
官報は国が発行している機関紙で、紙面とインターネット版があります。
自己破産の場合は、同時廃止だと「破産手続開始決定時」と「免責許可決定時」の2回、この官報に掲載されることになります。管財事件の場合は破産手続き終了時にも掲載されるので合計3回になります。
官報の存在を知らない人も多いため、一般的には親戚や近所の人、職場の人などに官報から自己破産をすることがバレることはほぼ無いのですが、警備会社は別で、業務として官報をチェックすることがあるんです。
官報からバレるよりは、自分から伝える方が会社が受ける心象も良いはずです。
なお、会社に内緒で自己破産手続きを進めることはおすすめできませんが、逆に考えると会社にバレてしまう原因は官報以外にはほぼ考えられません。
ブラックリストでも警備員になることはできる?
例えば「半年前に自己破産をして今はブラックリスト状態だけど、警備員として働きたい」というときもあると思います。
この場合はすでに免責許可がおりているので復権しており、問題なく警備員として働くことができます。
希望する勤務先に自己破産をしたことを告げる必要もありません。
なお、警備員として働く場合、入社するときに誓約書と身分証明書の提出が必要になります。
誓約書には「破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない者」に該当しないことを誓約するという項目もあります。
これは簡単に言うと、破産者ではないということの誓約になります。
自己破産して免責許可がおりた後は破産者ではなくなるので、誓約書にサインをしても何の問題もありません。
「破産者名簿」ってなに?
破産者名簿は、本籍のある自治体が身分証明書の発行のために作成・管理している名簿です。
ここまで聞くと「自己破産をした人の一覧表」というような印象を受けるかもしれませんがそうではありませんのでご安心くださいね。
破産者名簿はその名称から非常に誤解を受けやすいのですが、「破産手続開始決定が出たけど、免責を受けられなかった時」に掲載される一覧となり、免責が決定した人の名前が載るものではありません。
簡単にいうと、自己破産したかったけどできなかった人(免責がおりなかった人)の一覧なのです。
免責がおりない原因として真っ先に考えられるのが「免責不許可事由」です。
免責不許可事由は、以下のような理由によって免責が認められなくなってしまうことです。
・借金の理由がギャンブルや投資によるものだった
・隠し財産があった
・自己破産の手続きに非協力的であった
・一部の債権者だけに優先して返済した
など
これらの免責不許可事由に該当してしまうと免責が認められなくなり、破産者名簿に記載されてしまいます。
破産者名簿は身分証明書の発行時に参照されます
警備員として入社する際には、誓約書と身分証明書の提出を求められることをお伝えしましたが、破産者名簿は身分証明書を発行する際に参照されます。
ここでいう身分証明書は、運転免許証のような本人確認書類ではなく役所で発行してもらう「身分証明書」という名称の書類になります。
<ご参考>:東京都練馬区「身分証明書」
身分証明書は破産者ではないことを示す書類になるので、破産者のうちは発行してもらうことができません。自分は破産者でないことを証明するために警備会社に提出するのです。
破産者名簿の心配は不要!
実際の自己破産の手続きにおいては、免責不許可事由にならないように専門家がアドバイスをしてくれますし、現在はほとんどのケースで免責許可がおりるため、この破産者名簿に不安を抱える心配はありません。
また、すでに警備員として働いている場合に、身分証明書の提出を求められることもありません。
警備員の仕事を続けながら債務整理をしたい!どうすればいい?
破産者となる3ヶ月~6ヶ月間は警備員として働くことができません。これをどうしても避けたいという場合は自己破産以外の方法で債務整理をすると良いでしょう。
警備員と任意整理
任意整理は債務者と債権者の任意の和解交渉になりますので、裁判所を介すこともありません。そのため、自己破産と比較すると必要書類も圧倒的に少なく期間も短くなります。
任意整理をすることを勤務先に報告する義務もなく自分から言う必要もないので、会社にも家族にもバレることなく債務整理を進めることができます。当然、会社を辞める必要もありません。
警備員と個人再生
個人再生にも職業制限はありません。会社へ報告する義務もありません。
ただし個人再生の手続き上、裁判所に申立を行うことになるので必要書類が多くなり、会社から発行してもらう書類もあります。
注意したいのが、「源泉徴収票」と「退職金見込み証明書」です。
源泉徴収票は直近のものが手元にあればそのまま使えます。持っていない場合も比較的簡単に再発行が可能です。
退職金見込み証明書は、現時点で退職した場合にもらえる退職金を試算してある書類で、原則として会社から発行してもらう必要があります。(自己破産でも必要になります)
頻繁に目にするものではないので、会社に「退職金見込み証明書をください」と言うとビックリされてしまい、「何に使うの?」と聞かれてしまうことになるでしょう。
この場合は、「住宅ローンの申請です」「子供の教育ローンに必要みたいで・・・」などと答えておけばそれ以上突っ込まれることもないでしょう。
ちなみに退職金見込み証明書は自己破産でも必要になるのですが、警備員や士業以外の職業であれば、自己破産をすることを会社に伝える必要はありませんので、「ローン申請に使います」と言っておけばあれこれ勘ぐられることもないでしょう。
任意整理・個人再生ができない場合もある
任意整理と個人再生は職業制限を避けることができる確実な方法になるのですが、注意点もあります。
自己破産はすべての借金を免責にできる手続きですが、任意整理・個人再生は手続き後も必ず返済が継続することになります。
自己破産は返済ができなくても生活を再建できますが、任意整理・個人再生は返済を継続することが大前提なので、返済能力がない場合は手続きそのものを認めてもらえないのです。
職業制限を避けるために任意整理をしたけど途中で返済が苦しくなってしまい、結局自己破産することになった・・・というケースも十分に考えられます。
自分の借金と経済状況に最適な債務整理方法は、専門家に相談をすることではっきりとわかりますので、なるべく早めに相談して、スムーズな解決を目指しましょう。
職業制限はあるけれど前向きに債務整理を検討してみよう(まとめ)
警備員という仕事柄、自己破産を行うなら職業制限は受けることになります。
ただ期間としては3ヶ月~半年程度で、警備員に就けない期間が何年も続くわけではありません。
また、必ずしも退社しなければならないわけでもなく、事務職などの警備以外の職種であれば現在の会社で働き続けることも可能です。
職業制限を恐れて債務整理が遅くなるよりも、できるだけ早めに専門家に相談して自分にとって最適な道を提案してもらうことを強くおすすめします。
場合によっては自己破産よりも個人再生の方が状況に合っているということもありますので、自分ひとりで悩みを抱えずに、弁護士・司法書士の手を借りて早期解決を目指しましょう。
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