自己破産すると年金はもらえる?差し押さえ?どうなる?

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年金を受給していて借金の返済が厳しく、自己破産をしたいけど、「借金もあるのに年金も差し押さえられたら困る・・・」と躊躇してしまったり、生活にどんな影響が出てしまうか見当もつかないことから一歩を踏み出せない方もいると思います。

ここでは、
・自己破産をすることで年金が差し押さえられてしまうのか?
・自己破産をしても、今後も年金を受け取ることができるのか?
・預貯金はどうなるのか?
・未払い年金の支払い義務はどうなるのか?
・年金受給者が自己破産をする上で気をつけることは?
など、自己破産と年金について解説していきます。


もくじ

自己破産をすると不動産、財産は差し押さえになる

まず、年金の受給に関係なく、自己破産をすると持ち家や土地などの不動産と、一定額以上の財産は差し押さえになります。

▼自己破産で差し押さえられるもの
・家、土地などの本人名義の不動産
・99万円を超える現金
・20万円を超える預貯金
・20万円を超える価値がある財産

よく「自己破産をすると家を失う」と言われていますが、これは持ち家であれば本当の話です。

自己破産をする本人が所有する家・土地などの不動産は差し押さえの対象になりますので、住宅ローンを払い終わっていたとしても強制的に売却されて、そのお金は借金の返済に充てるために債権者に配分されることになります。

ただし、無一文になって放り出されるというような仕組みではなく、生活再建に必要なお金などは法律に基づいてきちんと残せるようになっていますので、そのあたりはご安心ください。

自己破産をすると年金は差し押さえられるの?

年金の差し押さえについて調べてみると、「公的年金は差し押さえられない」と書かれていることがとても多いので、すでにご存知の方も多いことと思います。

これは実際にその通りなので、公的年金が差し押さえられることはありません。

しかし「公的年金としてすでに受け取っているお金」となると話が変わってきます。

まずは、以下のことを知っておきましょう。

・受け取り前の公的年金 … 差し押さえられることはありません。予定通り受け取り可能です。
・すでに受け取っている公的年金 … 預貯金、現金になるので差し押さえられることがあります。
・破産開始手続後に振り込まれる公的年金 … 新得財産となり、受け取ることができます。

受け取り前の公的年金(厚生年金・国民年金)などは差し押さえられません

公的年金は、国が運営する年金システムで、「国民年金」と「厚生年金」が該当します。

通常「年金」と呼んでいるものは、この公的年金になります。

20歳以上の方ならいずれかに加入しているかと思いますが、これらの公的年金は生活をする上で必要不可欠なお金なので「自由財産」に該当します。

※自由財産は破産者の財産のうち、手元に残しておける財産のこと。

受け取り前の公的年金は自由財産となるので、債権者が「今月の15日に受け取る予定の年金を差し押さえます」とは言えないのです。

受け取り後の公的年金は差し押さえの対象になります

受け取り前の年金は差し押さえることはできないのですが、すでに年金として振り込まれたお金はどうなってしまうのでしょうか。

年金として受け取ったお金でも、受け取った後は現金としてお財布に入れていたり、預貯金として銀行口座に入金していることと思います。

これらの「すでに受け取り済みの年金」は、差し押さえられてしまいます。

年金に関して差し押さえられないのは、「年金を受け取れる権利」です。

たとえ公的年金として受け取ったお金でも、「99万円を超える現金」と「20万円を超える預貯金」は差し押さえの対象になりますので、たとえ公的年金でもらったお金だとしても没収されることがあるのです。

個人年金は差し押さえられる可能性が高い!

公的年金だけでは不安で、個人年金に加入している人もいると思います。

個人年金は任意で加入する年金ですが、自己破産を行う時点で解約返戻金が20万円を超える場合は強制解約となり換価されるため、受け取りもできなくなってしまいます。

なぜ公的年金なら今後も受け取りができて、個人年金が解約になるのでしょうか。

それは、個人年金は民間の保険会社などと契約をして、毎月積み立てを行って将来に備えていくもので、いわばその人の財産であり自己破産後の生活再建に必要な最低限の資産にはあたらないからです。

20万円を超える財産は処分の対象になることから、個人年金も解約返戻金が20万円を超える場合は強制解約となり、解約返戻金は差し押さえとなってしまうのです。

なお、生命保険も解約返戻金が20万円を超える場合は解約となってしまうのでご注意ください。

企業年金は差し押さえの対象にならない

企業年金は、退職金制度の代わりとして会社が導入している制度です。

この企業年金は法律が定めている「差押禁止財産」に該当します。そのため、自己破産を行っても差し押さえられることはありませんので、問題なく受給することができます。

ただしこの場合も、すでに年金を受け取っていて銀行口座に入金されている場合は預貯金扱いとなり処分の対象になります。

ちなみに企業年金ではなく退職金を積み立てている場合は要注意。

退職金は、まだ受け取っていない場合でも受け取り見込み額の8分の1から4分の1は差し押さえの対象になってしまいます。

▼退職時期と差し押さえとなる退職金の割合

退職時期 裁判所に収める割合
退職する予定はまだない 今もらえる予定の退職金の8分の1となる場合が多い
もうすぐ退職する・退職したけどまだ退職金を受け取っていない 退職金の4分の1
すでに退職して、退職金も受け取り済み 全額を預金や現金として計上します

 

自己破産をしても残すことができる財産の種類

自己破産をしても差し押さえにならない財産には、「差押禁止財産」「99万円以下の現金」「新得財産」があります。

差押禁止財産

差押禁止財産は、その名称どおり差押をすることが法律によって禁止されている財産のことです。

差押禁止財産には「差押禁止動産」と「差押禁止債権」があり、公的年金と企業年金はこの差押禁止債権に該当するため、受給資格がなくなることはありません。

差押禁止債権の規定はこちら。

▼民事執行法 第152条
次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
1.債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
2.給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権
2-1.退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。
2-2.債権者が前条第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前2項の規定の適用については、前2項中「四分の三」とあるのは、「二分の一」とする。

引用:e-Gov法令検索「民事執行法」

また、差押禁止動産には次のようなものが定められています。

▼民事執行法 第131条
1.債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
2.債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料
3.標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭
4.主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物
5.主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
6.技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)
7.実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
8.仏像、位牌はいその他礼拝又は祭祀しに直接供するため欠くことができない物
9.債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類
10.債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物
11.債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
12.発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの
13.債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
14.建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品

引用:e-Gov法令検索「民事執行法」

99万円以下の現金

お財布に入れているお金や、ご自宅においているタンス預金は99万円を超えないものに関しては処分されることはありません。

なお、「現金」と銀行口座に預けている「預貯金」は別になり、現金は99万円まで、預貯金は合計20万円までを手元に残すことができます。

預貯金は、「合計20万円」となり、それぞれの口座ごとで20万円ずつではないところに注意が必要です。

新得財産

新得財産は、自己破産の手続き開始決定後に得た財産になります。

自己破産の申し立てを行った後に振り込まれた年金は、この新得財産に該当するため差し押さえられることはありません。

新得財産として認められるものには、以下のようなものがあります。

・破産開始決定後に支給された年金
・破産開始決定後に支給された給料、賞与、退職金
・破産開始決定後に贈与を受けた財産
など

新得財産にできるタイミングはいつ?

自己破産の流れを大まかに分けると、
1.弁護士・司法書士に依頼する
2.裁判所に申立をするための必要書類を揃える準備期間
3.裁判所に申立を行う
4.破産手続開始が決定される
5.財産の調査、債権者集会などの手続きが進む
6.免責確定となり返済義務がなくなる
となるのですが、「4.破産手続開始の決定」の後に得た財産は新得財産になります。
自己破産の全ての手続きが完了していなくても、破産手続開始が決定した後に受け取った年金であれば差し押さえられることはありません。

自己破産をしたら未納となっている年金はどうなるの?

自己破産を検討している人の中には、年金の未払いが気になっている人もいると思います。

残念ながら、年金の未払いは自己破産をしても免責とすることはできず納付義務が残ります。

年金の他にも税金、国民健康保険料なども、自己破産をしても支払い義務がなくなることはありません。

年金は支払いが遅れていても厳しく督促がかかることがないので、つい支払いを後回しにしてしまうという状況もあると思います。

しかし、年金はコツコツと支払った金額によって将来の支給額が変わってくるものなので、未納期間が長いと自分の将来に大きく影響してしまいます。

支払いが難しい場合は、猶予期間を設けてもらったり免除してもらうことも可能ですので、そのままにしておかないで年金事務所に相談してみることをおすすめします。

年金受給者が自己破産する際に気をつけたいこと

年金を受給している人が自己破産をする場合に特に気をつけておきたいことをご紹介します。

すでに振り込まれている年金は「預金」「現金」になる

ここまでに解説してきたとおり、公的年金であってもすでに受け取り済みのものに関しては現金・預貯金扱いになり差し押さえの可能性が出てきます。

99万円を超える現金と、20万円を超える預貯金は差し押さえ対象になってしまいますので、「年金として受け取ったお金であればいくらでも口座に残しておける」とはならないところに十分ご注意ください。

銀行からの借り入れはありませんか?

銀行カードローンや住宅ローンなど、銀行からの借り入れがあって自己破産を行う場合、その銀行で開設している銀行口座は預金残高に関わらず凍結されて差し押さえとなります。

お金を貸している銀行は、借金を返してもらう立場にありながら、預金者にお金を返すべき立場でもあります。

自己破産をすると預金者が銀行に対して「お金は返せないので自己破産をします」と伝えることになるのですが、これを受けた銀行は「返してもらえないなら、こちらも返しませんよ」という姿勢に出て、預かっているお金と借金を相殺します。

たとえばA銀行から100万円借りていて、A銀行口座に10万円の預金があるとします。

自己破産をすると銀行は預金の10万円と貸している100万円を相殺します。

借金は90万円になりますが、預金は0円になってしまいます。

銀行からの借り入れを自己破産する場合は預金を全て引き出しておいて、口座が一定期間使えなくなっても困ることがないように事前準備をしておく必要があります。

債務整理に強い弁護士・司法書士に相談をすると、やるべきことを詳しく教えてもらえますので、早めの相談を強くおすすめします。

年金が振り込まれる口座が凍結されないようにすること

銀行からの借り入れも含めて自己破産する場合は、年金が振り込まれる口座が凍結されることが考えられます。

年金をA銀行で受け取っていて、同じくA銀行の銀行カードローンを自己破産する場合、A銀行口座は凍結されてしまいます。

自己破産の手続開始決定後の新得財産は没収されることはありませんが、タイミングが悪く口座凍結中に年金の振込が行われてしまった場合は、しばらくの間お金を引き出すことができなくなってしまいます。

このようなことがあると生活がとても困ってしまいます。

年金(預貯金)は事前に引き出しておいて、年金の振込先を別の銀行に変えておくようにしましょう。

年金以外の財産をチェックしておくこと

自己破産では、ありとあらゆる財産から処分するものと手元に残しておけるものを判別されることになります。

たとえば、生命保険に加入している場合、解約返戻金が20万円を超える場合は解約しなければならないのですが、加入していることを忘れて申告が漏れてしまった場合、本人はついうっかり忘れていたというケースでも「故意に隠した」と財産隠しを疑われる可能性もあるのです。

虚偽の申告は免責不許可事由となってしまい免責が認められず、借金が免除されないこともあります。

少しでも気になることがあったら、債務整理を依頼する弁護士・司法書士に必ず確認するようにしましょう。

なお、財産は日本国内のものだけではありません。外貨預金や海外の不動産なども含まれますのでご注意ください。

税金の滞納はありませんか?

年金、税金、国民健康保険料などの滞納は、自己破産をしても免責にはなりません。

支払い義務がなくならない「非免責債権」に該当しているので、他の借金はチャラになっても住民税、所得税、固定資産税、国民健康保険料、国民年金保険料、罰金、慰謝料、養育費などの支払い義務はそのまま残ってしまいます。

自己破産をしても税金関係は支払っていかなければなりませんが、督促を無視して延滞を続けていると、年金も差し押さえとなる可能性も出てきます。

年金が差し押さえられた上に免責にならない支払い義務が残ってしまうと、非常に困ったことになってしまいます。

税金を滞納していたり、支払いが難しい場合は、まず最寄りの役所に問い合わせをして、支払いの相談に乗ってもらってください。

自己破産以外の債務整理の方法もあります

債務整理の方法として広く知られているのは自己破産かと思いますが、自己破産をすると持ち家や一定額以上の資産・財産を失うことになります。

お住いが賃貸物件であれば今まで通り生活を続けることができますし、預貯金も少なく大きな財産もない場合は、自己破産をしてもダメージは少ないと判断することができます。

しかし、家族と住んでいる大切な持ち家があり、住まいは残しつつ借金をなんとかしたいと希望している人もいるでしょう。

債務整理には自己破産の他に任意整理個人再生があり、個人再生であれば持ち家は残しつつ、借金を5分の1から最大10分の1まで圧縮することが可能です。

また、個人再生では財産の処分がありませんで、預金も残すことができます。

任意整理は借金のうち元金を減らすことはできませんが、財産の売却はありませんので、住宅ローンの返済がすでに終わっている場合は全く問題なくマイホームに住み続けることができます。

住宅ローンが残っている場合も、任意整理であれば債権者を選んで債務整理をすることができるので、住宅ローンの借り入れ先を債務整理の対象から外せば持ち家に住み続けながら借金問題を解決することができます。

早めに専門家に相談すること

借金問題の解決には難しい法律も絡んでくるため、自分にとって最適な方法が知りたくても一般人が考えてもわからないことは多いです。

自分の中では「もう、自己破産しか方法がない」と思っていても、返済を継続できる経済力がある場合は、自己破産以外の選択が向いていることもありますので、やはり早めに専門家に相談すべきです。

借金問題を相談できる専門家は弁護士・司法書士で、非常に多くの事務所が無料で相談に乗ってくれます。

債務整理費用について不安がある場合や、すでに生活保護を受給しているようであれば、法テラスに相談することで費用を立て替えてもらったり債務整理費用を免除してもらえることもありますよ。

自己破産と年金のまとめ

▼自己破産で受け取れる年金・受け取れない年金

公的年金 厚生年金 自己破産をしても受け取り可能
国民年金 自己破産をしても受け取り可能
私的年金 個人年金 解約返戻金が20万円を超える場合は解約となり、解約返戻金は差し押さえられる
企業年金 自己破産をしても受け取り可能

 

・自己破産をしても年金受給資格は失われません。
・破産手続開始決定後の年金は受け取ることができます。
・年金として受け取ったお金でも、預金、現金は一定額を超えると没収になります。
・銀行からの借り入れを自己破産すると、口座凍結が行われて借金と預金が相殺となります。
・年金以外にも処分される財産があるので注意が必要です。(生命保険の解約返戻金など)
・年金の未払い、税金などは、自己破産をしても免責とならず支払い義務が残ります。
・自己破産以外の債務整理方法もあるので、早めに弁護士・司法書士に相談しましょう。

 

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この記事の監修者

この記事の監修者 この記事の監修者は、株式会社タンタカの代表取締役「丹野貴浩(⇒プロフィールはこちら)」で、簿記1級の資格を持ち、10年以上、クレジットカードやローンなど金融系のWEBメディアを運営・管理している実績があります。
   

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