奨学金を延滞すると?債務整理できる?

PR

奨学金で進学して、卒業後に返済を開始したものの、思ったように返済が進まずに困っているという人が増えています。

万が一、奨学金の返済を延滞したらどうなるのか?奨学金を返済できなくなってしまった場合には、債務整理で解決することができるのでしょうか?詳しく解説します。

債務整理以外でも、奨学金の返済負担を軽くする方法はありますので、ぜひ最後までご覧ください。


もくじ

奨学金の返済に苦しんでいる人は大勢います

奨学金の返済に困っているのは決してあなただけではありません。恥ずかしい悩みではないですし救済の方法はありますのでご安心ください。

奨学金を取り扱っている独立行政法人日本学生支援機構の調査(令和元年度)によると、奨学金の返済を3ヶ月以上延滞したことがある人は約152,000人で、延滞の理由を聞いたところ、

1位:本人の低所得
2位:奨学金の延滞額の増加
3位:本人の借入金の返済

という結果になったそうです。

所得が低いために奨学金の返済が滞ってしまい、ますます返済が苦しくなるという悪循環に陥っている人もいそうです。

また、延滞者のうち、奨学金には返済義務があることを申し込み手続き前に知っていた人は50.3%と半数程度でした。

<参考>:独立行政法人日本学生支援機構「奨学金の返還者に関する属性調査」

本来は借入前に理解しておかなければいけないことですが、奨学金を借りるのは10代という人も多いため理解できないまま借り入れが行われてしまうのも無理もないことかもしれません。

しかし、奨学金の返済義務を知らないまま学校を卒業して社会に出てしまうと、いきなり重い返済負担がのしかかることになってしまいます。

奨学金の返済を延滞するとどうなるの?

奨学金は進学、勉学のための資金ですが、お金を借りていることには変わりないので、どうしても返済ができない場合、最終的には強制執行となってしまいます。

奨学金の延滞3ヶ月目までの流れ

電話、書面による督促が行われますが、この期間に返済を行えば特に大きな問題にはなりません。

ただし、1日でも延滞してしまうと延滞金が日割りで発生してしまいますので、なるべく早く返済するようにしましょう。

奨学金の延滞3ヶ月以上~9ヶ月までの流れ

債権回収会社(サービサー)に回収業務が委託されます。信用情報機関に事故情報が登録され、ブラックリストとなりますが、この間も督促は続くことになります。

奨学金の延滞10ヶ月以上の流れ

奨学金の延滞が10ヶ月目になってしまうと、いよいよ強制執行の流れが見えてきてしまいます。ここからは利用している保証制度によって手続きが異なります。

奨学金を人的保証で借りている場合

支払督促予告状が届きますが、これは、「返済をしないと支払督促申立を行いますよ」という予告状になります。

支払督促は債権者が裁判所に申立を行なって、強制執行するための権利を認めてもらうための手続きになります。

支払督促予告状を受け取っても入金・応答が行われなければ、実際に支払督促申立が行われますので、最終的には強制執行となってしまい給料や財産が差し押さえられることになります。

支払督促予告状は単純に返済を求めるだけの書類ではないと思っておきましょう。

奨学金を機関保証で借りている場合

奨学金の延滞10ヶ月目に「催告書」が送られてきます。

催告書は、「○月○日までに○○円を入金して下さい」などと書かれている請求書です。

催告書が送られてきてもすぐに強制執行となることはありませんが、すでに長期延滞となっているので1日でも早く返済を行うべきです。

延滞11ヶ月目に訪問調査が行われます。

延滞12ヶ月目に達してしまうと「期限の利益の喪失」となり、日本国際教育支援協会が日本学生支援機構に代位弁済を行います。

代位弁済は、債務者の代わりに保証会社が返済を行うことです。

債権は日本学生支援機構から日本国際教育支援協会に移り、債務者は一括返済を求められることになります。

返済できない場合は強制執行になりますので、法的手続きが取られることになります。
やはり、最終的には差し押さえが行われることになります。

奨学金は債務整理できる?できない?

債務整理は、借金を減額(または全額免責)したり、返済負担の軽減を行って生活を再建するための法的手続きです。

奨学金も借金のひとつなので債務整理を行うことは可能です。

債務整理の方法は、任意整理・個人再生・自己破産があり、債務の内容によって適した方法が異なります。

※債務整理には特定調停もあるのですが、主に選ばれているのは任意整理・個人再生・自己破産となっていて、特定調停はほぼ行われていません。ここでは省略しています。

奨学金を任意整理する

任意整理は弁護士・司法書士などの専門家を代理人として債権者と交渉してもらう債務整理で、主な交渉内容は、毎月の返済額を下げる、返済期間を延長する(通常3年、最長5年)、将来利息をカットするなどで和解を目指します。

裁判所を介さない任意の和解交渉なので必要書類も少なく、専門家に依頼するための金額も最も安い方法になります。

奨学金も任意整理することは可能なのですが、実はあまり効果的な方法ではありません。

なぜかというと、奨学金の返済はもともと超長期返済になるため毎月の返済額もそう多くなく、利息も少なく設定されています。

そのため、返済期間の延長も望めず、利息のカットもあまり期待できず、任意整理では元金が減ることはないので、任意整理をしても返済負担の軽減は望めないのです。

また、任意整理はその名の通り任意の交渉になるので、和解できるかどうかは債権者次第です。奨学金の債権者である日本学生支援機構は基本的に任意整理には応じないと言われているので、もし和解できたとしても大幅な利息のカットなどは期待できません。

任意整理では奨学金以外の債務整理を検討してみましょう

もし奨学金以外にも借り入れがある場合は、その他の借金を任意整理して、奨学金は通常通り返済を行った方が良いでしょう。

この「債権者を選択して債務整理ができる」というところは任意整理の大きなメリットになります。

奨学金を個人再生・自己破産する

個人再生は、借金の返済を大幅に減額できるように裁判所に認めてもらう方法です。個人再生では借入額によって最低限返済が必要な「最低弁済額」が決まっています。

借入額 最低弁済額
100万円未満 全額返済が必要
100万円以上500万円未満 100万円まで
500万円以上1,500万円未満 5分の1まで
1,500万円以上3,000万円以下 300万円まで
3,000万円超5,000万円以下 10分の1まで

 

例えば借入額が800万円の場合は、5分の1となる160万円が最低弁済額になり、今後は160万円を3年(最長5年)で返済していくことになります。

自己破産は、奨学金を含む借金全額が免責となる手続きです。

全額返済不要になるため非常に効果は大きいですが、その分のペナルティもあります。返済義務が一切なくなるので、生活を立て直しやすい手続きと言えるでしょう。

奨学金も個人再生・自己破産することは可能です。

ただし、奨学金を個人再生・自己破産すると、必ず連帯保証人が支払いを求められることになります。

保証制度を人的保証とした場合は、両親をはじめとした親族が連帯保証人・保証人になっているかと思います。

個人再生を行うと奨学生の返済負担は大きく軽減されますが(自己破産なら全額免責)、連帯保証人の債務は残ってしまうので、保証した金額の返済を求められることになるのです。

債務整理することを内緒にしておくこともできませんし、非常に大きな迷惑をかけてしまうことになるでしょう。

ちなみに、個人再生・自己破産では奨学金を除いて他の借金だけを債務整理するという選択ができませんので、奨学金も含めて借入金全てを公平に債務整理することになります。

奨学金を債務整理するメリット・デメリット

奨学金を債務整理することのメリットは、やはり返済負担を軽くできることでしょう。

奨学金を債務整理するメリット

奨学金の返済負担を軽くできます

奨学金の特性上、任意整理ではあまり債務整理の効果を期待できませんが、奨学金以外の借金を債務整理することで、借り入れ全体が返済しやすくなるでしょう。

個人再生では大幅に返済負担を減らすことができますし、自己破産では返済義務そのものがなくなります。

個人再生・自己破産は借金を大きく減額できる方法になりますので、奨学金以外にも借り入れがあるときにも有効です。

また、自己破産をする場合、持ち家は処分の対象となるのですが、個人再生であれば持ち家を残して債務整理することも可能です。(住宅ローンの返済はそのまま残ります)

奨学金を債務整理するデメリット

奨学金を債務整理すると、どのようなデメリットがあるのでしょうか。

債務整理には費用がかかります

債務整理(任意整理・個人再生・自己破産)は、弁護士や司法書士に依頼して手続きを進めてもらうことになりますので、着手金や報酬といった費用が発生します。

債務整理を行なってもらうための正当な費用ではありますが、経済的に苦しい奨学生にとってはデメリットと感じるでしょう。

保証人に請求がいきます

奨学金の連帯保証人・保証人は、両親をはじめとした家族、親戚が担っているかと思いますが、個人再生・自己破産を行うと保証人に請求が移ることになります。

保証人は突然返済請求を受けることになります。

家族だからこそ言いにくいこともありますが、事前に相談する必要があります。

債務整理をするということが必ずバレてしまいますので、内緒で手続きを進めることはできません。

ブラックリストに載ります

奨学金を債務整理をすると、信用情報機関に事故情報が掲載されブラックリストに載ってしまいます。

ただし延滞が始まって3ヶ月以上経過すると、債務整理をする・しないに関係なくブラックリストになってしまいますので、これは債務整理だけのデメリットというわけではありません。

債務整理以外に奨学金の返済負担を軽くする方法はないの?

一般的に、債務整理の方法として最初に検討されるのは任意整理になります。

任意整理は裁判所を介さないため、他の方法と比較すると費用負担が少なく短期間でできる手続きなので、最も多く選ばれているのです。

しかし、奨学金は任意整理が向いていない借り入れで、手続きを行なっても思ったように返済負担が軽減されないかもしれません。

奨学金の返済が苦しい場合は、債務整理の前に日本学生支援機構が用意している救済措置を検討してみることをおすすめします。

1.減額返還制度

毎月の返済額を減額すれば返済を継続できるという場合に、一定の要件を満たすことで(例えば年収が325万円以下など)返済額を3分の1~2分の1に下げて、返済期間を延長できる制度です。

延長期間は最長で15年になります。

例えば、毎月15,000円を返済することになっていた場合、毎月の返済額を2分の1となる7,500円に下げることで完済を目指しやすくするという感じです。

ただし、奨学金の元金が減るわけではないので、毎月の返済額が減った分だけ返済期間が延びることになります。

例えば本来ならあと7年で完済できるというタイミングで返済額を毎月2分の1にした場合は、あと14年かかってしまうことになります。

どうしても返済が苦しいときに、一時的に利用することをおすすめします。

2.返還期限猶予制度

奨学金の返済そのものを一時的にストップできる制度です。

ストップできる期間は通算10年間となりますが、災害や病気、生活保護などが理由の場合は、さらに猶予期間をもらうことが可能です。

なお、経済的な理由で返還期限猶予制度を利用する場合は所得に条件があり、給与所得なら年収300万円以下、給与以外の所得(事業所得など)なら年間200万円以下でなければ利用できません。

減額返還よりも条件は緩くなっています。

やはり元金の返済が免除となるわけではありませんが、申請には費用もかからないので、延滞する前に手続きを行なっておくと良いでしょう。

奨学金と債務整理まとめ

奨学金は経済的な理由で進学が難しい場合にとてもありがたい仕組みです。

しかし、奨学金はある意味特殊な借り入れで、返済の見込みが立たない10代のうちに借金を背負う判断をしなければならないケースも多いです。

例えば大学進学のために216万円借りて毎月12,857円ずつ返済する場合、返済期間は14年かかりますので、23歳から返済を始めたなら完済できるのは37歳です。

借入前に返済シミュレーションを行なったとしても、本当に無理なく返済できるかどうかを高校生のうちに判断するのは非常に難しいでしょう。

借金を返済する大変さは自分が社会に出て収入を得るようになって初めてわかることなので、あとから返済が苦しくなってしまうことは珍しいことではないのです。

奨学金の返済が難しいと感じたら、延滞してしまう前に減額返還や返還猶予の手続きを行いましょう。

この手続きには費用もかかりませんし、ブラックリストとなることもありません。

奨学金以外にも借り入れがあって借金全体の返済が苦しい場合は、債務整理を検討した方が良いでしょう。

この場合は自分ひとりでは手続きが行えないので、まずは弁護士・司法書士に相談しましょう。全国の弁護士・司法書士事務所が、債務整理の相談に無料で応じてくれます。

自分の経済状況には、どの債務整理が良いのかアドバイスをもらうことができますので、早めに専門家に相談してみることをおすすめします。


 

「債務整理」と「闇金対応」が得意なおすすめの専門家をご案内していますで、以下のボタンからランキングをご覧ください(※すべて全国対応)。

 

この記事の監修者

この記事の監修者 この記事の監修者は、株式会社タンタカの代表取締役「丹野貴浩(⇒プロフィールはこちら)」で、簿記1級の資格を持ち、10年以上、クレジットカードやローンなど金融系のWEBメディアを運営・管理している実績があります。
   

PAGETOP